多摩川の生き物とヒト その178 水系 相模川カワラノギクなどの視察23/11/11
相模川に生えているカワラノギクとカワラハハコを見るために、明治大学のk氏、O氏、N氏と一緒に出かけた。
JR八王子駅に集合し、相模原市湘南小学校へ。小学校付近に車を止め、カワラノギクの造成地へ。9月に行った多摩川の観察会の時期よりも、花が良く咲いている。きれいだが、背丈が小さい。ノウサギにかじられ、横に伸びているせいだろうか。よく見ると、茎の先が食べられている個体が多かった。おまけに、近くには2本の蹄が特徴的な二ホンジカの足跡が下流へと続いていた。足跡を追う形で、少し下流へ行き、中洲の中へ入っていくと、なんと、カワラノギクの畑があった。おまけに、シカ除けの電気柵に囲まれ、もう、野生種ではなく、園芸種。この畑は中洲にあった樹々を伐採し、その跡に砂利を引いたものとの事。土が腐葉土になっていて、肥えている。だから、ノギクは背丈が延び、花をたくさん着けているわけである。
園芸種化にがっかりしながら、来た道を戻り、途中からそれて最初の造成地に帰った。この付近でも、多くの株で、かじった跡があるが、近くにはノウサギの糞があった。ノウサギがかじった犯人かと思ったが、かじり跡からノウサギか、二ホンジカを区別できないかと考えた。もう一人の方はノギクとかじられたそれぞれの個体数を数えていた。ウサギかどうかはNHKの「ダ―ウイーンが来た」でよく使っている定点カメラを設置してはどうかの提案があった。k氏は乗り気だった。
湘南小学校近くの造成地を後にし、高田橋下流へ。松林のそばから川原に入る。途中でカワラノギクがあった。湘南小学校前と違い、ここでは河原に点在している。川原が広がっているので、将来、もっと広がる可能性があるだろう。ここも播種した後に増えてきた所だった。
高田橋を渡り、相模川ふれあい科学館近くを上り、ヤツボへ向かう。スイッチバック状の坂を下ると、神澤不動尊のそばを通る。途中では崖沿いにヤツボの名の通り、水が湧いていた。崖下を通るが、今回は水が少なく、水たまりにはなっていなかった。川原の入り口付近まで車が多く、停まっていた。試合を行っている少年野球の関係者の車だった。崖下では相変わらず、立ち入り禁止と書いてある中、モトクロスを行っていた。けがをしても、自己責任だろう。
川へ向かう道を進んでいくと、川に近い所でカワラノギクがあった。ここも播種した残りだと聞いた。ノギクが咲いている河原に車が停めてあり、キャンプをしていた。ここまで、車が乗り入れること自体、多摩川と違い、驚きだった。
水をかぶる氾濫域にはノギクは無かった。河川敷をめぐる道を行く。途中にはサイカチがあり、半月状の実がぶら下がっていて、面白い。近づくと、ヒトを寄せつけぬかのように大きなトゲがある。
さらに進むと、砂利が消えた先に、カワラハハコがあった。茶色の雌花を少し、もむと、種が出て来た。オオキンケイギクが傍らに生え、シナダレスズメガヤが繁茂している中でたくましく生きている。
ハハコを見た後、先では道が冠水していると思い、元に戻った。
神澤不動尊を後にし、対岸にあった自然の村公園へ。日曜日という事もあり、キャンプ場入り口から、多くの車が停まっていた。川の端にある駐車場でも、多くの車が停まっていて、この駐車場から川原に入る。
川原で、カワラノギクを見ながら、遅い昼食を取る至福の時を過ごす。近くにはノギク以外にも、カワラケツメイがあり、ノギクも点在している。ここでも、少し、かじられた跡がある。ここはウサギだけか。近くにはバーベキューをした跡があり、ノギクが焼かれている可能性がある。車の乗り入れ禁止が妥当だろう。帰り際、シナダレスズメガヤの中にカワラヨモギがあり、背丈を高くしたケツメイもあり、皆、必死に生きている。
ノギクの生えている経過を知っているk氏から、それぞれの群落のいきさつを伺う。どのような経緯か、どのような団体が関わっているのか、良く、ご存じで、相模川はヒトが大きく関わっているとの言葉に打たれた。実際、相模川では野生と思われていても、ヒトが播種した個体が、残ったり、繁殖しているのがすべてと言うことが分かった。
もう少し、ヒトが関わる前ならば、個体の一部を採取し、保存し、DNAを調べる事が出来た。DNAの解析を行っておけば、地域差や集団のグループ差などが把握できたと思われる。
多摩川でも、相模川でも野生の個体や自生地は存在しない。芽生えてきた個体をもともとあった野生種と区別する術は失われた。カワラノギクは播種したものが生き残っているのが現状である。
また、相模川と多摩川では利用の仕方が全然違うと実感した一日でもあった。