【書評】『自壊する官邸』を読み解く - 石破政権への教訓
「政治主導」の名の下に、官邸への権力集中が進んだ結果、官僚機構は疲弊し、政策決定プロセスは歪められている。
『自壊する官邸 「一強」の落とし穴 (朝日新書)』は、長期政権がもたらしたこの深刻な状況を、具体的な事例を交えながら告発する一冊だ。
人事権を武器に官僚を支配する官邸、忖度と保身に走る官僚たち。その結果、政策の質は低下し、国民生活は置き去りにされている。
石破茂氏は、かつて自民党総裁選で「官邸主導体制の見直し」を訴えた。官僚の専門性と自主性を尊重し、多様な意見を取り入れることで、より良い政策を生み出そうという主張だ。
しかし、現実は「一強」体制の弊害がますます深刻化しているように見える。
本書で描かれる「自壊する官邸」の姿は、石破氏が危惧した未来そのものではないだろうか。
奇跡の石破政権が実現したからには、今後は、本書を教訓として、真の政治主導とは何かを問い直す必要がある。それは、官邸の権限を縮小することではなく、官僚との健全な関係を築き、国民のための政策を立案できる体制を構築することなのだ。