【政治・選挙】『自民党政治の変容』中北 浩爾 (著)
第二次安倍政権下の2014年に出版された本書は、結党から安倍政権に至るまでの自民党の変遷を、理念と組織という観点から分析し「変わり続ける自民党の実像」を描いたものであり、戦後日本政治に新たなイメージを与える力作です。
目次
はじめに
第一章 党近代化と小選挙区制導入の試み
一 岸信介と小選挙区法案の挫折
二 三木武夫と党近代化の失敗
三 田中角栄と小選挙区制の再挫折
第二章 総裁予備選挙の実現と日本型多元主義
一 三木・福田と総裁予備選挙の導入
二 香山健一と日本型多元主義の台頭
三 大平・中曽根と日本型多元主義の隆盛
第三章 政治改革と自社さ政権
一 小選挙区制の再浮上と小沢一郎
二 政治改革の実現と日本型多元主義の敗北
三 自社さ政権とリベラル派の優位
第四章 二大政党化と自民党の右傾化
一 リベラル派の凋落と「加藤の乱」
二 小泉純一郎と新自由主義的改革
三 安倍晋三と右傾化の進展
おわりに
かつて自民党は、派閥抗争や利益誘導など、 多元的な 性格を持つ政党でした。しかし、近年では 右傾化 と 一枚岩化 が進み、かつての自民党とは大きく様変わりしています。
本書では、この変化を 自主憲法制定 、 小選挙区制導入 、 総裁選挙改革 などの 重要政策 を軸に分析し、 リベラル派の衰退 や 右派の台頭 がどのようにして起こったのかを明らかにしています。
第一章 では、岸信介、三木武夫、田中角栄といった歴代首相による 党近代化 と 小選挙区制導入 の試みと挫折を分析しています。
第二章 では、三木武夫と福田赳夫による 総裁予備選挙導入 を契機に台頭した 「日本型多元主義」 と、その後の 衰退 について論じています。
第三章 では、 政治改革 と 自社さ政権 を通じて、 小選挙区制 が導入され、 日本型多元主義 が終焉を迎える過程を解説しています。
第四章 では、 小泉純一郎 政権以降の 新自由主義的改革 や 安倍晋三 政権による 右傾化 が、自民党の 一枚岩化 を加速させたことを論じています。
本書は、 緻密な資料分析 に基づき、 戦後日本政治 における自民党の役割を 新たな視点 から描き出した力作です。 自民党政治 や 日本政治史 に関心のある方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
著者の将来展望としては、「右派的な理念」は自民党を結束させる紐帯としての機能を低下させ、「草の根保守」の動員には成功せず、「有権者の間に安定した支持基盤を再構築するには至っていない」としながらも、「勝者総取りの小選挙区制のもと、自民党による長期政権が継続していく可能性が高い」としています。
著者は、安倍派が自滅し、官邸ともっとも遠かった石破茂が総理大臣になることは流石に予想していなかったと思われますが、野党の分裂状況が解消されない限り、ぬえのような自民党が、議席は減らしながらも、政権は維持していくという見立ては間違ってはいなかったと思われます。