Q3決算と大統領選を見越した立ち回り
今週は$ASMLの技術的なエラーにて
決算発表前日にQ3決算結果が公表されると言う珍事が起き
さらに、Q3受注が予想の半分程度で
しかも来年通期見通しも下方修正されるという事実で
半導体セクター下落のきっかけとなった。
一方、$TSMは非の打ち所がない素晴らしい決算であった。
こちらは、後述したいと思う。
経済指標で言えば、強い小売売上高や
トランプ前大統領が大統領選挙で優勢となり
長期金利の大幅な上昇となった。
先週、衝撃を与えた失業保険申請件数に関しては
改善は見られるものの楽観せず
継続監視が必要に感じる。
前置きはこれくらいにし本稿では
$TSMの決算内容を掘り下げ
10/24 SK Hynix決算にも触れつつ
今後の生成AIトレンドに関して自身の考えを述べたいと思う。
$TSM神決算を読み解く
ここでは決算の細かい数値の説明は省き
$TSMの決算内容から読み取れる
生成AIの今後の動向の考察を中心に述べたいと思う。
まず、考察に当たり
プロセス別売上高の導出に関してだが
正式リリースされているものは決算資料中に記載されている
7nm and Below Revenueの棒グラフの数値を読み取るしか方法がない。
そのため、多少の誤差を承知の上で読み取る必要がある。
(著者はWebPlotDigitizerを用いて数値を抽出した)
また、3D円グラフという姑息な作図が
このプロセス別売上高の抽出をややこしくしているのだが
著者はそこまで正確な数値を導出したい訳ではないため
3nm〜7nmのプロセス別売上のみをWebPlotDigitizerを活用し
10nm以上は公式リリースされているプロセス別の%にて算出している。
(3D円グラフのアスペクト比を調整すれば精度良く出せるが割愛)
そして、ここまでの計算から
プロセス別売上高小計とnet revenueの差分が
non-wafer revenue所謂、CoWoSなどの
wafer以外の売上高として見積もる事ができる。
以下グラフが
プロセス別売上高と
non-wafer revenue(CoWoS売上高含む)となる。
既に、CoWoSが7nmプロセスの売上高を超える水準にある事が分かる。
今期の決算Callでは
顧客の旺盛な需要により
CoWoSの生産能力は昨年から2倍にしており
さらに、来年も2倍にすると説明された。
しかし、この拡張にも関わらず
旺盛な需要に応えられないとの見解は狂気の沙汰と言える。
そして上記結果から
Q4ガイダンス売上高$26.1B〜$26.9Bの上限は台湾ドル換算で
NT$860,800Mとなり内訳を予想したものが下図となる。
(Q4ガイダンス為替レートは、1米ドル=32.0台湾ドル)
Callでも触れられていたが
現在、N5プロセスの一部を顧客の旺盛な需要に応えるため
N3プロセスへと切り替えを行なっている。
そのため、
Q4でも過去のN3プロセスの売上高の伸びを踏襲した試算となっている。
(設備切り替えスピードには限界がある)
ここから分かるのは
急増するQ4売上高はN3だけでは支えられず
年末にかけ$NVDA Blackwellが大量に製造されることを踏まえると
CoWoS-Lの売上が押し上げる可能性が高いと言うことだ。
また、年末にかけ
$TSMのN3プロセスの売上高を支えるものは以下製品群である。
・$AAPL M4シリーズ
・$INTC Lunar Lake およびArrow Lake
・$QCOM Snapdragon 8 Elite(旧8 Gen 4)採用スマホ
・MediaTek Dimensity 9400採用スマホ
(vivo X200シリーズ 10/19より発売)
上記製品群の発売時期までを考慮すると
$TSM Q4売上高を牽引するのが
N3プロセスなのか$NVDA BlackwellのCoWoSなのかは
11/8発表の$TSM 10月分売上高である程度見えてくるだろう。
10月にガイダンス範囲上限を余裕で超えた場合はN3起因で
11月、12月と徐々に上げた場合は$NVDA起因。
つまり、生成AIトレンドを予想する上で
11/8 $TSM 10月分売上高をしっかりと確認し
11/27 $NVDA決算に臨む必要がある。
(10/31 $AAPL決算、 11/6 $QCOM決算)
$NVDA Q3売上実績予想に関しては
SK Hynix決算後に改めて検討したいと思う。
SK Hynix決算予想
少し脇道にそれるが
$NVDAのQ3売上高を予想する上でも重要となる
10/24 決算発表予定のSK HynixのQ3に関して個人予想を述べたいと思う。
同社のQ2期(4月-6月)からQ3期(7月-9月)での変化として
韓国→台湾($TSM)への
メモリー(DRAM、HBMを含む)の輸出額は
$2,694,536K→$4,708,581K(1.75倍)と
韓国ウォンに換算すると
₩3,694B→₩6,354B(1.72倍)と驚異的な増加を見せている。
ここには、
SamsungとSK Hynixからの$TSMへのHBM支給が含まれるが
Samsungは$NVDA H20用のHBM3が予想される一方
SK Hynixはより高価なHBM3Eの
大量出荷を行なっている事が状況的に予想され
Q2からQ3の増分の多くがSK Hynix起因と思われる。
したがって、
Samsung分の伸びを7%と仮定し
売上高全体は ₩18,842Bと言うのが個人予想である。
(コンセンサス予想は₩18,038B)
当然、
$NVDAのQ3実績が伸びるためには
上図のGraphicsが急増している事が望ましく
H200の大量出荷、そして少量のBlackwellも含まれており期待は高まる。
今後の予定
来週の決算予定だが
10/23 $TSLA決算
10/24 SK Hynix決算が主要どころであるが
先週のマーケットの動きを見るに
大統領選挙への警戒から
ポジション調整が発生する可能性が出てきている。
前回のNoteでも触れたが大統領選とも絡み
10/28週はApple Intelligenceがリリースされ
10/31には$AAPL決算に加えて
不調が続いているSamsung決算もあり
ポジションを落とす口実に使われる可能性が高い。
Q3決算を吟味しつつ
大統領選へのリスクオフの流れに備えるが吉である。