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強い雇用統計とは対照的なISM雇用

先週はFRBパウエル議長がNABEにて
「FOMCは利下げを急いでいない」と述べ
さらに、年内は追加50bps利下げを示唆する発言から始まった

ISM製造業雇用指数は6月以降で軟調を見せ
サービスの雇用においては7月に急反発を見せるも
8月以降は反落となっている。

上記、ISM雇用の弱さとは対照的に
JOLTs求人および雇用統計は予想を上振れる強さを見せた

本稿ではこうした対照的な雇用指標の結果において
ISM雇用と10/4に発表された雇用統計にフォーカスし
米国の現況を見ていきたいと思う。




米国の個人消費状況

まず、本題に入る前に
米国の個人消費状況に関して簡単に述べたいと思う。

10/1にシカゴ連銀が発表した
Chicago Fed Advance Retail Trade Summary (CARTS)
9月小売業売上高(自動車を除く)の暫定レポートでは(〜9/21)
季節調整済みで先月より+0.4%が予想されている

現状、
米国の個人消費は堅調であると言えるだろう。


その他、
10月からは学生ローンの返済遅延が
信用情報に記載されない”という措置が終了している。

今後、個人消費に変化が見られるかは留意したいところだ。

赤線:小売売上高、黒線:シカゴ連銀小売業取引(週間)、黒点線:シカゴ連銀小売業取引(月)
(9/21までの暫定データでは、自動車を除く小売業売上高は先月比で+0.4%が予想されている)
小売売上高およびクレジットローン残高
(クレジットカードローン残高は5月以降で上昇が続いている)



また、アトランタ連銀 GDPNowは
米国勢調査局の建設支出と
米サプライ・マネジメント協会の製造業ISM景況報告を受けて
前回3.1%から2.5%へと下方修正されたが
依然として2.0%を超える水準になり
問題視される状況にはない。
(景気後退を危惧する状況にはない)

アトランタ連銀 GDPNow
(直近では下がっているが、2%を超える水準にあり問題視される状況にはない)
Atlanta Fed GDPNow estimates for 2024: Q3, contributions to growth
(ISM製造業指数、建設支出が前回からの下方修正要因)


パンデミック後の返済猶予が解除された昨年、
学生ローンの返済遅延は信用情報に記載されないという
1年間のモラトリアム(一時停止)措置をバイデン政権が命じたため、
借り手の信用スコアは現在、打撃を受けることはない。

しかし、
この措置が終了すると、
学生ローンの債務者の多くが債務不履行に陥る可能性が高い。

Bloomberg



対照的な雇用指標(ISMと雇用統計)

10/4に発表された雇用統計では
平均時給、非農業部門雇用者数、
そして、最も注目された失業率においても
予想を超える強い雇用状況を示す結果となった

雇用統計結果

ここでは、
雇用統計における雇用の中身を中心に説明し、
ISM製造業、ISM非製造業(サービス)の主要項目を簡単に整理し
ISMと雇用統計での対照的な雇用指標を見ていきたいと思う。


Employment status
(労働人口、被雇用者数、失業者数および失業率)
Employees on nonfarm payrolls
(9月は非農業部門新規雇用者数は254Kとなった)

まず、雇用統計での雇用の中身を見ると

・労働人口は150Kの増加
・被雇用者数は430Kの増加
失業者数は281Kの減少!

失業率は4.1%だが計算すると

失業率(Unemployment rate)
=失業者数(Unemployed) / 労働人口(Civilian labor force)
=6,834K / 168,699K

よって、
9月の失業率は4.051%となる
これは4.0%の可能性すらあったと言え、

前回失業率4.22%であったことを考えると
明らかに雇用軟化の加速は見られず改善していることが分かる。
(市場に衝撃を与えた、7月失業率4.3%は4.25%である)

雇用統計、新規失業保険申請件数(週間報告を各月換算)
(上段:労働参加率および失業率、
中段:労働力人口および被雇用者と失業者数、
下段:新規失業保険申請件数(月換算)および非農業部門雇用者数)

被雇用者数も上昇傾向を続け
非農業部門新規雇用者数も持ち直している。

今後、雇用の改善を期待させるような内容と言えるだろう


また、雇用形態別に見ると以下となり
平均受給が増加していることとも整合的な結果となっていた

先月比
Full time workers:+414K
Part time workers:-95K
total multiple jobholders:+121K

FULL- OR PART-TIME STATUSおよびMULTIPLE JOBHOLDERS
(詳細は下図参照のこと)
フルタイマー、パート、職を掛け持ちしている被雇用者数
(9月はフルタイマー増、パート減となり、平均受給増とも整合する結果であった)



次にISMに入りたいと思う

ISM製造業では
PMI、新規受注、雇用は軟調が続いているが在庫の急減により
新規受注 / 在庫 比率は1.0を回復した。

ISM非製造業(サービス)では
新規受注が急増したため改善を果たしたが
雇用が対照的に悪化を見せている

ISM製造業およびサービス(PMI、新規受注、在庫、雇用、価格、そして、新規受/在庫 比率
ISM製造業およびISM非製造業(サービス) 雇用指数のみ
(製造業に加え、サービスも直近では雇用の弱さが伺える)


上記、ISMの各雇用指数を見てどう思うだろうか?
雇用統計と比べるとISMの雇用は

”悪化していくように見えないだろうか?”

現に、
回答者の意見では
今後、雇用が改善する様な、前向きな発言は少数である

<回答者の意見抜粋>

ISM製造業
人員、運転資金、供給はそれに応じて縮小されます。[輸送機器]
・生産・管理部門の空席を埋めるために引き続き採用を行っています。
 新規雇用は増やしていません。[Primary Metals]

ISM非製造業(サービス)
・活動量の少ない部門の従業員を解雇するなどし
 組織はコスト削減に取り組んできました。[情報]

Institute for Supply Management
ISM製造業 回答者の意見
ISM非製造業(サービス) 回答者の意見


ここまでを振り返ると
米国の個人消費は堅調でありGDPを見ても
景気後退からは程遠い。

しかし、雇用においては
雇用統計とISMでは対照的な印象を受ける。

要するに、
雇用は強いと言うには過文であり
景気減速感は否めないと言うのが実態ではないだろうか。

現状、11月FOMCでは
50bps利下げ確率が消失し
利下げなしを2.6%で織り込んでいる。


10月の雇用統計では、
米港湾労働者組合のストライキの影響もありノイズが含まれ
11月FOMCではどの様な見解が示されるのかは判然としないが
利下げ幅は25bpsが大方の見方であり
現状、この目線で立ち回るのが良い様に思う。

FedWatch
強い雇用統計を受けて、11月FOMCでの50bpsの利下げ確率は消失した




FoxconnのQ3過去最高の売上高に関して

少し脇道にそれるが
$NVDAおよび$TSMとも絡むため
Foxconn(鴻海精密工業)の9月売上高に触れたいと思う。

同社の9月売上高はNT$73,3024 Mと
9月としては過去2番目なり
Q3期間としては過去最高の結果となった

売上高を牽引したのは
Smart Consumer Electronicsでは
新製品(9月発売)

Cloud and Networking Productsは
AI ”サーバー” 需要($NVDA H200の可能性大)

が大きく貢献した。


$TSMに絡む点は
9月新製品のスマホと思われる先月からの強い上昇


これは、10/9に発表される9月分にて
$TSM先端プロセスでの売上増を期待させるが
Foxconnの説明から予想するに
9月売上増は$AAPL iPhone起因ではないようである
(おそらく$TSMは新型iPhoneを7月に生産した)

しかし、
状況的に$TSMから見ると
先月からのマイナス要因ではなく後述内容を踏まえると

$TSM 9月売上高は
8月のNT$250Bの水準を維持していると思われる。


$NVDAについては
Foxconnは$NVDA製品も扱いAIサーバーを提供している。

8月韓国からの台湾へのメモリー輸出の急増
そして、FoxconnのAIサーバーの旺盛な需要に基づく9月の売上増は
$NVDA H200 ”サーバー” の堅調な売上増を予想させる。

状況的に、
$NVDA Q3決算ではH200の売上貢献は堅く
Blackwellも順調に生産が進んでいるとの報道もあり
期待が高まる状況と言えるだろう。

ただし、Samsung製HBM3Eの
$NVDAからの承認完了の報道は確認出来ておらず
一抹の不安は残っている。

Hon Hai Unaudited Consolidated Monthly Revenue Report
9月はAI需要が牽引し、9月としては過去2番目の売上高となり、Q3は過去最高となった
Revenue Performance by Segments
9月売上高はSmart Consumer Electronicsでは新製品が、
Cloud and Networking ProductsではAI需要が大きく貢献した


今後の見通し

今後の予定

来週の予定としては、
以下が主要な予定となる。

10/9 $TSM 9月売上高発表
10/10 CPIと$TSLAのロボタクシーイベント
10/11 PPIと金融セクターの決算スタート

CPIでは
Core MoMは前回より下がり、YoYは横ばいが予想されており
11月FOMCにて25bps利下げ予想が大方の見立てとなっている現状では
市場への影響は限定的になると思われる。

また、PPIにおいても無難に通過すると思われ
今週は経済指標がマーケットに与える影響は軽微で
中東情勢の変化がインパクトとしては大きいように思う。
イスラエルの動向には注意が必要であろう。

自身のトレード方針としては
先週、$TSMを少しばかり拾ったが
今週も機会を探って買い増したいと思っている。

現状、
$QQQ、$NVDA、$TSMがターゲット銘柄である。
($AMAT、$TLTは状況次第)


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