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コロナビール
今日も僕はクラブでコロナビールを飲む。派手な音楽に合わせて1人でリズムを刻む。
ここに来ると、何かが起きそうな気がしてならない。仕事に追われる日常を忘れられる。
市役所の仕事も3年目。要領良くなり、定時退社できるようになった。真っ直ぐ家に帰ってもつまらないので、居酒屋で一杯やった後、クラブに通うようになった。
クラブに1人でコロナビールを飲みに来るのは僕ぐらいか。男子特有のウェーイなノリは好きじゃないし、ナンパしてお持ち帰りしようとも思わない。
ただ、音楽に身を任せるだけだ。流れに乗る。
思えば、今までも流れに身を任せてなんとかやってきた。大学受験に公務員試験。恋愛なんかもその場の雰囲気でなんとかやってこれた。今は彼女いないけど。
強いて自分から何かを変えようとも思わない。自分にできることなんか、たかがしれている。
つまらない人間だろうか。だけど、これが現実ではないか。漫画の主人公にはなれないし、スポーツでプロには到底なれなかった。
淡々と毎日業務をこなしていく。非日常を味わいにクラブに通う。その繰り返しだ。
周りは結婚していくし、転職でキャリアを作っていく奴もいる。僕はあいにくどちらも興味がない。
たいした趣味もない。少年漫画を読むくらいか。週に1度の密かな楽しみだ。
だいぶ酔いがまわってきた。そろそろ帰らなくては。荷物を取りに行こうと歩き出したそのときだった。
髭を生やし、眼鏡をかけた白衣のおじさんがクラブに入ってきた。あたりを興味深そうにキョロキョロと眺めている。手には機関銃。宙に向けて銃を乱射し始めた。
ついに幻覚が見え出したか。が、おじさんは僕の方へと真っ直ぐやって来た。
「お主!わしと一緒にザンビアへ行くぞい。村を作っているのだ!わはは!」
この出会いが、世界を激変させるとはまだ誰も知る由がなかった。
【続く】
(770字)
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