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優しいんじゃなくて、後悔したくないだけ

困っている人に積極的に声をかけるようにしている
時間がない時も
仕事に遅刻しても
声をかけない時があるのは
もう誰かが声をかけている時だけ

そんな話をすると、大抵

優しいんだね

って言ってもらえるけれど
優しいから声をかけているわけじゃない
私は、私のために、声をかけている

そりゃ、まったく優しさがないわけではないけど
それよりも
声をかけなかったら
私はその日1日
そのことを引きずるからだ

一度だけ
声をかけなかったことがある
駅から会社までの道のりで
朝、お爺さんがよたよたと歩いていた
そのお爺さんは私が見た感じ
普通ではなさそうだった
会社まで向かう人たちの流れに逆らって歩いていたお爺さんは
余計目立っていた

その日は遅刻ギリギリで
声をかけたら遅刻確定
誰も声をかけずに知らんぷり
私も目を背けて
早歩きした
それでも気になるから
何回か後ろを振り返る
お爺さんはゆっくり歩いていた
気になるけど、しょうがない
そう言いきかせて出勤したけれど
結局その日は
ずっとそのことが気になっていた

そんな思い、もうしたくない
だから、声をかける
誰のためでもない
私のために
だから優しいって言われると
ちょっと複雑だ

優しい気持ちだけで声をかけているわけじゃないけれど
それでも誰かが
少しでも助かるなら
いいんじゃないかなって思う
少しでも誰かの助けができて
私も後悔しないなら
それが1番いいことだから



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