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カミカクシ

最近、瀬戸内海にあるとある島に滞在した。色んなご縁があり地元の方の家に泊めて頂きさらに一緒に晩酌させて頂く事に。ほどほどにお酒が進むとその地元の方が私の職業を聞いて驚いていた。

「ほぉ、怪談師を・・・。それは珍しい」

「そうなんです。昼はラーメン屋で夜は怪談師って変わった形態でやっております。この島とかで何かそう言った話とかありませんか?」

「・・・うーん。あると言えばあるんですが」

「え?あります?どんな事ですか?」

「カミカクシってご存知ですか?」

「ああ、もちろん知ってます。あのよく子供が忽然と消えたりするやつですよね?有名なやつですよ」

よく神社や山で子供が遊んでいたら行方不明になり、数日後に遠く離れた山で発見されたり、下手すると未だに見つからないなんて事は話や書籍でもよく見かける話だった。

「いや、ちょっと違うんですよ。ここの島は」

「違うってどう言う意味ですか?」

「この島でカミカクシにあうのはみんな大人なんです。子供でカミカクシにあったなんて私は聞いた事がありません」

「え!?大人が!?」

「はい。大人が夜出歩くと結構な確率でカミカクシにあってしまうんです。だからこの島では夜、大人は1人で出歩いたりしないんですよ」

「え?それって最近あったりとかしたんですか?」

「ちょうどこの前にある家のおばさんがカミカクシニあいました。そんなに大昔でもないですよ。10年か20年前ぐらいの話です。島中のみんなで探したんですよ。そんなに大きな島じゃないから簡単に見つかると思ったんですが本当に見つからない。1週間ぐらい行方不明になって突然見つかって。そのおばさんが傷だらけになりながらいきなり山から現れたんです。そしてその1週間の記憶が全く無いそうです」

「じゃあ無事にみつかったんですね。それは良かったです」

私のその言葉を聞いて地元の方はコップに入った酒を一気にグイッと飲み干し、そして何気なく天井を見つめてこう言った。

「未だに見つかって無い人が何名もいますけどね・・・」

「・・・・・」

その言葉に私は背筋がゾッとした。もし、私がその事を知らずに夜の海を見に行ったりとか散策をしていたらどうなったのか。

しかし、そのゾッとした直感はその事では無かったのだ。その次の日に私は奇妙な体験をする事になる。

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