山に潜む怪異
これは数年前の高知で2月下旬に体験した話。
その日は朝から気温が低く昼になっても曇天が続いていたので気温がほとんど上がらなかった。夕方になると雪がチラホラと降り始め、夜になると気温も更にグッと低くなり夜空に舞う雪の量も多くなってきた。
こんな寒い日は早く寝た方が良いな・・・
そう思うと早めの夕食を済ませてお風呂に入り、夜の9時前には2階の寝室に上がり布団に入った。
しかし、あまりにも寒いため1時間ほど布団の中でゴロゴロ寝付けずにいた。仕方がないので寝室を出て一階のリビングに行きノートパソコンを開いた。溜まっていた事務作業があったので暖かい室内でそれを片付ける事にした。
しばらくしてふと時計を見るといつの間にか時刻は午前2時を回っていた。
ああ、そろそろ寝るとするか・・・
そう思いノートパソコンを閉じると次の瞬間
ドオオオオン!!ドオオオオン!!
と物凄い音がどこからか聞こえてきた。
私は訳がわからず室内を見回したが、物が落ちたり何かがぶつかったりした形跡は無かった。
ドオオオオン!!ドオオオオン!!
音が再び聞こえると私は椅子から立ち上がり音の出所を探すことにした。
一階にある和室に電気もつけず入った。部屋の真ん中に立つとジッと辺りを見まわした。
ドオオオン!!ドオオオオン!!
音がまた聞こえてきた。それと同時に私は妙な違和感を覚えていた。しかし、その時は音の出所を探すのに必死でその違和感の正体に気づく事が出来なかった。
結局和室を含め一階は一通り探したが音の原因を突き止める事が出来なかった。
残るは2階の寝室のみ・・・
私はそう思うと意を決して階段を上がり2階の寝室へと入った。また、電気もつけず真っ暗な部屋の中央に立ち音を待った。
ドオオオオオン!!ドオオオオオン!!
「!?」
再びあの大きな音が聞こえると私は違和感の正体に気づいた。
普通それだけ大きな音が聞こえたら音は振動を生み出す。夏の花火が近くでドカンと上がるとビリビリ来るあの振動。それがこれだけの音なのに全くない。そしてそれだけ大きな音がすれば大体方向がなんとなく検討がつくはずなのに何故か私はさっきから部屋のあちこちで音の出所を探していた。
おかしい・・・.何かおかしすぎる・・・
そう思い私は考えた。
そして一つの答えを導き出すと寝室を出て一階のリビングへと向かった。リビングに入るとノートパソコンを開きキーボードを打ち始める。
ドオオオオン!!ドオオオオオン!!
どこからかやまぬ音を聞きながら文字を全て入力した。
高知 大きな音 妖怪
と。そしてエンターキーを押すと見慣れない4文字がそこには出てきた。
フルソマ
と。フルソマは高知の一部の地域にしかいない音だけの妖怪。
この時代に妖怪???
私がその音の正体を妖怪と認識した瞬間、何故かあの聞こえてくる音もピタリと止んだ。
それ以降、どれだけ同じ条件が揃おうともフルソマが再び現れる事は未だにない・・・
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