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ひとりめ

最初の怪談ライブをした時から違和感を覚えていた。

2回目の怪談ライブでそれが次第にはっきりと分かってきた。しかし、見えている訳ではないので確信は持てない。

3回目のライブが終わった後。心に余裕が出来ていたせいかそれは確信に変わった。

客席にお客様ではない観覧者がいると。

次の日、会場として使っているお店の方から私に連絡があった。

「ちょっとやばいんです。お店に来てもらえますか?」

と、言われたので開店前のお店へと向かった。

「これ見て下さい」

店主が指差したその先の壁にはいくつもの手形がついていた。明らかに不自然で気持ち悪いその手形。どう見ても人の仕業ではなかった。(この件に関しては過去の作品「手形」を読んでみて下さい)

私はその手形を見て

「やっぱりか・・・」

と呟いた。実はそれだけでなくこのお店では最近奇妙な現象が続いていたのだ。夜になると勝手に怪談用のBGMが流れたり照明がついていたり。

「ちょっとすいませんがしばらく何もせずに私のやる事見ておいて下さい」

私は店主にそう言うといつも怪談を語る場所に立った。そして誰もいない空間に向かって語り出した。

「あなたが怪談を好きでいてくれて毎回聴きに来てくれてるのは嬉しい。しかし、こう言った迷惑をかけるような事はやめてほしい。もし、これ以上あなたがこれを続けるなら私は怪談を語るのはやめます。もし、やめてくれるのであれば今から新しい怪談を語ります」

私はそう前おくと誰もいない空間に向かって怪談を語り始めた。

すると向こうも納得したのかそれ以降そう言った奇妙な現象は起こらなくなった。

私にとって怪談の1人目のファンがまさかの幽霊だなんて驚いたが、幽霊だってそっちの世界の話なら怪談は好きなのかもと妙に納得した。

姿は見えないがきっとどこかで今も私の怪談を毎回聴きにきてるんだろうなぁ。怪談ライブをするたびになんとなくそう思いながら怪談を語っていた。


しかし運命と言うのは奇妙なものでその半年後、私とその幽霊のファンはとある事がきっかけで再び交わる事になる。

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