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アイヌ語と縄文語
お久しぶりです。徳川家康は嫌いだけど最上義光は東軍で特例で許してしまおう党代表(適当)のMataです。
11月18日に巷で流行っているマイコプラズマに罹りました…
39度以上が11日間続き、その後も37〜38度行ったり来たり。更には小4の頃から治療している小児喘息も併発いたしましてマイコプラズマは治ったけど喘息がヤバすぎる、という状況になってます。この記事を書いている段階(12月20日)でもまだ治ってません…
神は我を見捨て給うたのか!!!
因みに私の喘息は小児喘息の中でもクループ症候群というものに入りまして、「犬吠様咳嗽」というオットセイのような咳がずっと出るような重めのものです。喉の痛みや声枯れが特徴的。あと痰ですね。
吸入ステロイドで治療しているのですがこれがもう治りにくい…
しかも病院や学校に謦咳が響く響く…
かかりつけ医の先生に「君の喘息はまいどまいどプレミアムクラスだね(笑)」って言われました(泣)
こちとら1年に2回ぐらい発症してんだよ、その度3週間ぐらい学校休んでんだよ(泣)
そのたんび病院で「またかい」みたいな雰囲気になるんだよ、くそう。
病気への愚痴はこのぐらいにして今回の話題は、ずばりアイヌ語です。
謎に満ちた言語、アイヌ語。文字は存在しなく、音だけで代々アイヌ人達に伝わってきた伝統的な言語です。
アイヌ語は系統不明の「孤立した言語」と呼ばれています。つまり、何処の語族にもアイヌ語と似た言語が見られない、オリジナリティのある言語なのです。
言語学者たちはアイヌ語がどの語族に所属するのか日々研究しているのですが残念ながら未だに結論は出ていません。
が!しかし!
最近有力になってきた説があります。それは、
アイヌ語は縄文語と非常に似ている
ということです。どちらもSOV型の文系を取り、同発音、同意味の単語が多くあるというのです。
どういうことなのか詳しく見ていきましょう。
縄文語とは?
まず縄文語とは一体何なのでしょう。勿論、その意味は縄文時代に使われていた言語の事です。文字は存在しなく、音だけで物事を伝え合っていた言語です。つまり、特徴として音にその意味があるのです。
「え?じゃあ今使っている言葉や古文の言語とは全く違うの?」
全く違います。
音が違います。語彙も違います。一人称二人称も違います。かろうじてSOV型の文系が同じなことぐらいが共通点です。
これには理由があり、本州は昔から中国や百済等といった隣国との交流を盛んにしていました。漢字も中国のものです。文字が流れてきたら言語も流れてくるのが普通でしょう。渡来人も多く日本にやって来るので文化の混合などはあったと思います。
「じゃあ、縄文語はもう消滅しちゃったんだ」
そうとも言い切れません。
漢字には皆さんの知っての通り音読みと訓読みがあります。
下の図の「境」という文字で見てみましょう。
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皆さんも知っての通り、音読みは中国由来の読み方です。
では訓読みとは何処から来たのかというと…そう、漢字が伝わる前から日本で使われていた縄文語が元になっているのです。
「境」は「さかい」と読みます。音読みは「キョウ、ケイ」でこれは古代中国語由来かサンスクリット語由来の読み方と考えられます(現在の中国語では「ジン」と読みます)。
上述した通り、縄文語は音に意味があります。どういうことでしょう。
「さかい」の場合は「さ」に意味があるのです。これは縄文語では「サッ」と発音します。
「サッ」は縄文語で「境界線」という意味を持っています。陸と海の境界線、天と地の境界線、過去と未来の境界線、人と神の境界線、現実と異世界の境界線など…
この「サッ」の意味と音が使われている言葉は現代にも複数存在しています。
「岬(みさき)」。
二文字目の「さ」。これは「陸と海の境界線」を表しています。
「幸(さち)」。
「山の幸、海の幸」などの「幸」です。
これは「霊力」を意味する「チ」が合わさっており、「サッ」は「人里と山の境界線」を表しています。どうやら、縄文人たちは霊力をコントロールし、山の神様に気に入られれば獲物が捕れる、と認識していたようです。
そして、「境」と同じ読み方の街、「堺(さかい)」。
現在の大阪にあり、室町から安土桃山にかけて貿易の中心都市として栄えた「東洋のベニス」。
ここも貿易港として栄えたため、海と隣接しており、「陸と海の境界線」が二文字目の「さ」に表れていることが分かります。
地図を見ても丁度陸と海の境界線に当たる位置に堺市は存在しています。
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このように縄文語には音それぞれに意味があり、それらが組み合わさって一つの単語が成り立っているのです。
紹介したのはほんの一例ですが、これだけでも縄文語が現代の日本語に根強く残っていることが分かるでしょう。縄文語は日本語の「音」に残って意味を今に伝えているのです。
アイヌ語と縄文語の関係とは?
北海道も旧石器、縄文、弥生までは本州と同じ文化でした。勿論言語も同じものが話されていました。
しかし、北海道は弥生以降、続縄文文化という独自の文化を形成します。その後、擦文文化、途中でそれと並行しながら北と樺太でオホーツク文化、そしてこの二つが合わさってアイヌ文化が形成されます。
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本州との文化の違いは何でしょうか。
それは、百済や中国といった異国の文化の介入を受けていないということです。
つまり、渡来人も存在しないので文化の担い手も変わらない。なので言語も大幅に変わることがない。アイヌ語は縄文語とそう変わらないのです。
国立科学博物館に所蔵されている「縄文人のゲノム解読」という書物にはアイヌ人は縄文人ゲノム70%を受け継ぐ、と書かれています。
これで縄文の時代からアイヌの時代まで暮らしていた民族は日本の縄文時代の時の民族とそう変わらない、という事が証明されました。
アイヌ語と縄文語の共通点
では、本当にアイヌ語と縄文語の中に共通点は見られるのでしょうか。
相違点は沢山見つかります。数詞が違う、動詞の活用が無い…など。
しかし、決定的な共通点があり、それは語順がSOV型の日本語と同じであること、母音が「アイウエオ」であること、そして動詞の70%がアイヌ語と繋がること。
そして、西洋におけるアイヌ語研究の先駆者、アレキサンダー・ボビン氏は「北海道の地名にアイヌ語(≒縄文語)が残っていることを見れば、本州各地に縄文語(≒アイヌ語)由来の地名が残っているのは明らかであり、万葉集の東歌と防人歌、風土記の記述の中にもアイヌ語と共通する言語が見られる」としています。
アイヌ地名懇親会の門田英成氏の言葉を借りれば、「アイヌ語と日本語は、縄文語を祖語として、弥生に入り日本語は変化したが、アイヌ語は縄文語を純粋に残している」と、言えます。
アイヌ語由来の日本の地名を探してみよう
前述した「サッ」のところで証明され、先程から言っている通り、縄文語は日本各地の地名や語彙に音として今も残っています。アイヌ語を縄文語と殆ど同じである、と捉えると、アイヌ語で日本の地名の由来が分かる、と言えます。つまり縄文語由来の地名はアイヌ語由来と捉えてもいいと思います。
つまり、札幌や苫小牧の様なアイヌ語由来の地名が日本全国各地に眠っているのです。
では、どんな場所があるのでしょうか。
軽井沢
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長野県のリゾート観光地として有名な軽井沢。
考えてみましょう。
沢は分かるにしても「軽」と「井」って何なんでしょうか?
………………………
はい、これは当て字です。
元々「カルイサワ」という音で表された地名があってそこに漢字を当て嵌めたに過ぎないのです。
「カルイサワ」を縄文語の発音みたいにそれらしく書くと、こうなります。
クㇽウㇲイ
すみません。発音の仕方は私も分かりません。取り敢えずクㇽウㇲイです。クㇽウㇲイ。
前述した通り縄文語には音に意味があります。これを品詞分解してみると、「クㇽ」と「ウㇲイ」に分けられます。
クㇽ
古くは'魔' '神'の意だったらしいが、今はもっぱら'人'の意味を表す
ウシ
「何々ウシ」というぐあいに、語尾に-usiのつく地名が多い。
'名詞+usi'のばあい「…がそこに群在(生、居)する所」
まず、「クㇽ」ですね。「クㇽ」は神や魔を表す、といいます。
いやいや、神はアイヌ語で「カムイ」でしょう!っていう人が沢山いると思いますのでここで一旦整理します。
「カムイ」はアイヌ語で「魂、霊性を持っている物」を表します。つまりアイヌ人にとっては動物や自然現象、太陽や月などの天体に至るまで全て「カムイ」なのです。
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「クㇽ」は純粋に「神」を表します。神様はときに嵐や地震などの自然災害を起こします。これはアイヌ人にとって分からないもの、意味不明なもの、恐怖の対象です。つまり「魔」なのです。
この解釈は日本で妖怪という存在が生まれた理由と少し似ていますね。
因みに「魔」と聞いて色を思い浮かべてみてくださいと言われたらどんな色を想像しますか?
「黒」ですね。「黒」もこの「クㇽ」が転じて出来た言葉なのです。
次に「ウㇲイ」です。
「なんだ、上にウシって書いているじゃないか!」
はい、ウㇲイは縄文語表記、ウシはアイヌ語表記です。どちらにしても発音はそこまで変わりなく意味も変わりません。共に「〜が群生する場所、〜がある場所」という意味を表します。
北海道や東北には「ウシ」を「牛」や「石」と表記し、「〜牛」、「〜石」と書く地名が数多く存在します。
例えば北海道の西にある「熊石町」。「クマ」は物干しを意味し、合わせて「物干しが多くある場所」となります。
他にも旭川の近くにある田園が象徴的な町、「妹背牛(もせうし)町」。「イラクサが繁茂している場所」という意味になります。
さて、この「クㇽ」と「ウㇲイ」を合わせた「クㇽウㇲイ」が軽井沢の語源だというのです。日本語訳は「神のいるところ」となります。
浅間山
何故軽井沢は「神のいるところ」なのでしょうか。これには軽井沢の立地が関係しています。
軽井沢は位置的には浅間山の麓に位置します。
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浅間山の神といえば岩長姫。富士山の神、木花咲耶姫の姉です。
この「浅間」もアイヌ語由来の言葉です。
アイヌ語表記にすると、「アサㇺ」。
アサㇺ
アイヌ語で「ア」は「座っている」。「サㇺ」は「隣」。
転じて「アサㇺ」で「隣に座っている」という意。
元々浅間山は「クㇽアサㇺ」と呼ばれていました。意味は「神が隣に座っている」。年月と共に「クㇽ」が省略されたのでしょう。現在は「アサㇺ」が訛って浅間山という山の呼称になっています。
他にもアイヌ語の「アッサム」という言葉が起源になっているという説もあります。「アッサム」は「噴火」という意味です。
でも、軽井沢の語源を考えたらこちらのほうがしっくり来る様に思えませんか。
浅間山は「神が隣に座っている場所」で麓の軽井沢が「神がいる場所」。繋がりました。
因みに軽井沢の近くに碓氷(うすい)峠という場所があります。
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この「碓氷」も軽井沢の語源である「クㇽウㇲイ」から「クㇽ」が省略されて出来た地名だと考えることが出来ます。
金沢
「ウㇲイ」(〜が多くある場所)という言葉はそこから転じて「沢」という言葉になったと先程説明しました。
でも現在「沢」は「〜が多くある場所」という意味で使われていません。
本当にそうでしょうか?
現在の言葉にその意味が残っていなくても地名に残っていることなんて沢山あります。
それが、今回の場合石川県の県庁所在地、金沢市にあたります。
金沢を漢字のままに意味を読み取るとどうなるでしょう。
「金の水場」。意味が分かりません。
でも「沢」をアイヌ語の意味で受け取るとどうなるか。
「金が多くある場所」。おお!なんか良さそう!
金沢城主、前田利家は秀吉の親友、側近としても知られていて秀吉から一番信頼されていました。
秀吉が死に瀕したとき、息子の秀頼を守ってもらうために真っ先に頼ったのも利家でした。秀頼を家康から守るために家康に対抗して秀吉は利家を従三位に引き上げ、加賀の石高を百万石まで引き上げました。
結局利家は事が起きる前に病死、息子の利長は家康側についてしまうのですが、家康についた事で減封を免れ、加賀は日本一の金持ち藩として栄えたのです。所謂「加賀百万石」です。
どうでしょう。「金が多くある場所」という金沢の意味と一致しませんか。
この様に地名にその意味が込められていることも沢山存在するのです。
群馬
群馬の語源とは何でしょうか。それは群馬県の中に「車評(くるまのこおり)」という地名があったことから、といいます。
奈良時代、風土記編集の勅令の折、国や郡は漢字二文字で表すことが定められ、「群馬郡(くるまのこおり)」となりました。
また、「群馬郡」のあった国を上毛野国といい、栃木の下毛野国と合わせて毛野(けぬ)国といいます。こちらも上記の、国を漢字二文字にする勅令により上野国と下野国に分かれました。
さて、何が言いたいかというと、この「くるま」と「けぬ」は共通のアイヌ語を起源に持つ、ということです。
これらをアイヌ語表記にすると、「クンネ」となります。
クンネ
クㇽの形容詞。「神の〜」
つまり、毛野国は「神の国」、車評は「神の郡」となります。
群馬は昔から災害の絶えない場所であったといいます。クㇽアサㇺ、浅間山の噴火活動が昔は活発だったのでしょう。
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うわ、噴火多っ…
この場合のクンネは「神の」というよりクㇽのもう一つの意味、「魔の」と訳したほうがいいかもしれません。
アニミズム信仰が進んでいた当時において自然は畏れ敬うもの、神と同一だったと考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。アイヌ語と縄文語の繋がり、現代語との繋がりを纏めてみました。
二年ほど前に興味を持って調べていた物なんですけれども、最近修学旅行で北海道に行ったのもあってアイヌ語に熱が入り再び調べてみました。
皆さんも身近な地名が何処から来た名前なのか、由来を調べてみると面白いかもしれません。
最後に。喘息治らねえ!!(書き終わり時12月21日)