小学物語11
今日は父さんの狩猟について行く
もちろんチビとクロも一緒だ
初めて 狩猟について行く
鉄砲の音が大きいのではないか
雪崩が起きないか
不安になってしまう
母さんが運転する軽自動車に乗り
3人と2匹で山へ向かう
麓の集落の民家までは道路除雪されており
そこからは歩きとなった
母さんは帰っていった
犬たちは大喜びで雪に潜ったり
走り回っている
おらもなんだか楽しくて
そして興奮してくる
前の晩
父さんは自分で鉄砲の弾をこしらえていた
道具をゆっくり回し
火薬を圧縮する
結構きつく締めている
爆発するんじゃないかと思って
おらは離れて見ていた
つい最近 向かいの家が火事になったり
工場(こうば)でぼや騒ぎもあったし
気が気でない
5個ほど 造ると
弾用のベルトに差し込んでいた
思ったより造らないもんだ
尾根づたいに山を登る
静かに小股でゆっくり
小股で歩けば疲れねどと
父が言う
ゆっくりが大事なんだそうだ
途中でキャラメルを食べる
キャラメルを開けるときに摘まむ
赤いビニールのびもが落ちた
父さんは静かに拾って
ポケットにしまった
小さな頃から
山にゴミを忘れていかないように
注意されていた
自然とおらも一人で山に行くときも
ゴミを忘れないようにした
尾根を登る 深い谷が左側に続く
水は流れていない
チビとクロが尾根の裏に隠れるよう
谷から見えないように
軽快に トットット と下っていく
父さんは弾を込めるため
準備をする
銃が途中から折れるようになっており
銃口がむき出しになる
丁寧にゆっくり
ひとつ
ふたつ
元に戻す
なんか急に空気が張り詰めた
黙ってここさいれという
父さんは尾根づたいに少し降りていった
チビとクロの声がずっと下の方から
聞こえる すごい迫力だ
ずっと吠えている
喉が痛くならないだろうか心配になる
ダーン
山全体に響き渡る
うるせー
やっぱびっくりしたあ
しばらくするとクロがキジをくわえて
上がってきた
父さんは
おー今度は噛んでねなと喜んでる
てっきり年上のチビが持ってくると思ったら
クロが持ってきた
たぶん教えてるんだろう
散弾は全部当たるように打ったら
ダメだ
円のように散弾は広がるけど
その3分の1くらいが当たるように打つ
タイミングが遅れると
鉛玉が鳥にたくさん入って処理が大変だ
剥製にするときも良くない
おらは 食べるとするとキジより
ヤマドリが大好きだった
肉がすごく締まってるけど
肉の表面に汁がしみこんでおいしい
稲庭うどんになめこと入れると最高だ
食べる宝石だ 美しい
でも父さんは鶏肉を食べられない
銃で打った動物は食べられなくなるようだ
解体も自分でやっていたので
そのせいではないのかなと思った
おらはネギと豆腐 シラタキ 春菊
白菜が入ったなべだべか
それとも たまり醤油のおすいものだべか
と想像する
結局 雪崩は起きなかった
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心配しても何も起きないことが多い
とにかく行動してみよう
娘へ