小学物語２３

チビという名前のポインターだった
白黒の大きなブチ模様で
とにかく体つきがしなやかで
美しい犬だった

それと　クロ
なぜか雑種の赤犬（輝く茶色の毛）
毛並みがきれいでなでるとすべすべ

七夕祭りの夜は
遅くまで遊んでいても叱られない

いつもは早く閉まる店も
遅くまで開いている

デパートの１階
店の外にあるエレベーター

店内は暗いが
エレベーターのボタンを押したら

ボタンが光った

扉が開く　乗り込む　
最上階のボタンを押す　閉まる

んっ

なんかエレベーター内の明かりが点滅した

上昇していく

ガクンと停止する

扉が開かない

えっ　なんで

おらは焦った

ガクンと動き出した

すぐに２階の丸いボタンを押す
開いたっ

飛び出す
商品のカートに布がかぶせられていた

おらは階段へ向かった

シャッターが降りてる

えっ

なんで　

困った

階段の上の方から人の気配がする

おらは忍び足で　エレベーターのそばまで
戻った

ガチャガチャ　キイーと音が聞こえてくる

布がかぶせてある大きなワゴンの下に隠れる

懐中電灯の明かりが周りを照らし始める

足音が聞こえる

近づいてくる　近づいてくる

来たっ

目の前にいる

足が見える

身じろぎせず目だけで
動きを追う

エレベーターの前でガチャガチャ
音がする

足音が変わった

トイレへ入ったのか

息を殺す

足音は階段へ戻っていく

ガチャガチャ　音が続いたあと

足音は小さくなり離れていったようだ

しばらく息を殺す

おらは静かに　エレベーターへ向かう

下行きのボタンを押す

点灯した！

開く　体重をかけないよう
音が出ないよう　静かに　

乗った

１　のボタンをしっかり見て押す

動いた

止まった

えっ

動いたと思ったら止まった

なんで

エレベーターの中は明るいのに

やばい

見つかったら絶対怒られる

エレベーター内の天井から外へ逃げることは
無理だろうか

急に動き出してワイヤーに巻き込まれたら
もっと危ない　止めよう

そもそも上から出られそうにない

１のボタンは点灯してるのに

ドアを無理やりこじ開ける

隙間が開いた

ダメだ

コンクリートむき出しの壁だ

明かりが点滅した

えっ

消えた

真っ暗だ

やばい　やばい　やばい

助けて　助けて　助けて

危ないことはもうしません　

点灯した

おらは狂ったように下向きの
逆三角形のボタンを連打した

１秒間に１６発
高橋名人のように

ダメだ

１のボタンを連打する
１秒間に１６回とつぶやく

両手で
逆三角形と１のボタンを同時に連打する

１秒間に１６回　１秒間に１６回

動いたっ

手は止めない

早く着いてくれ

チーン

開いた！

ガクンとエレベーターが落ちる

うそっ

ワイヤー切れる？

んっ

ずれてる

ずれてるじゃん

床と床がずれてる

エレベーターの床が１ｍくらい低い

おらは　跳ねた

自分でも　奇跡だと思う
こんな速さで飛び出せたのは

おらはふらふらになりつつも
駆け足でその場を離れた

たくさんの人達が　街を　歩いている

おらは

七夕祭りの短冊コーナーで祈りを書いた

明日も元気でいられますように

息継ぎして２５ｍを泳げますようにと
書いてある短冊の隣に

結ばせてもらった

家に帰るとクロがしっぽを振って
床下から出てきた

首にそっと手を回して抱きつくと
しばらくそのままにしていてくれた

今日も生きてクロに会えた
良かった～

マキを加えて熱い風呂に入った

大好きな歌を歌う

元気がもりもり出てきた

明日も冒険しよう

ーーーーーーーーーーーーーーーー

三つ子の魂百まで
と言いますが

さすがに
もう危ないことはしてないと思います

娘へ