小学物語24
チビという名前のポインターだった
白黒の大きなブチ模様で
とにかく体つきがしなやかで
美しい犬だった
それと クロ
なぜか雑種の赤犬(輝く茶色の毛)
毛並みがきれいでなでるとすべすべ
大名行列の日だ
おらも幼稚園の頃
装飾したトラックの荷台に乗せられた
化粧するのが嫌だった
親が仲の良かった家の女の子と同乗した
色の白い子だったけど
顔がおしろいでさらにまっしろで
口が真っ赤だったので驚いた
馬に乗る侍を
やってみたかった
小学校に入ると
紙で作った一文字傘を頭にかぶり
しー しー といいながら
お控えなすってというような恰好を
連続して行う
そして少しずつ前進していく
しー と言いながら お控えなすって
少し前進
しーと言いながら お控えなすって
少し前進
これを指先まで力を込めて
ず~~~とやり続ける
9月とはいえ 気温が高い日もあり
顔が真っ赤になる
おらも4年生になって
この役割から卒業できた
今年は隣の家の同級生とその兄弟との
夜宮の買い食いを楽しみにしている
夜宮
夜宮
夜宮
なんてすてきな響きだろう
おらは大人になったら夜遊びが好きになってしまうかも
大名行列の前の晩は 夜宮まつりといって
夜店がたくさん出る
くじむき、金魚釣り、輪投げ、射的、ひもくじ、ちくちく
なんとなく雰囲気のある大人たちが
子供相手に商売をしている
もちろんこれらの店はお昼頃から開いている
おらの家の神社のそばには
毎年金魚すくいがくる
なぜかそこに遊びに行くと
店の人から娘と店番をしていてと言われる
休んでるんだろう
苗字しか覚えていないが一つ年上だ
毎年来ている ちょっとだけ恥ずかしい
おらは小麦粉を溶かしたものを焼いて
割りばしに巻く はし巻きが好きで
2本以上は食べた
粉っぽい香り
紅ショウガの味と
青のりの香りが食欲を誘う
これにブルドックソースをかけると
最高にうまい!
サイダーであえて一気に流し込む
うー 効くー
ちょっと酔っぱらいの気分になった
だんだん暗くなってきた
いよいよ花火の時間だ
もっと近くで花火を見ないか
んだね
おらたちは打ち上げ場所である
山の中に入った
すげー 音
打ち上げ場所から
30mくらい
筒から火花が回りに散らばる
打ち上げる人はやけどしないのだろうか
法被を着た大人たちが代わる代わる
打ち上げている
なんか筒に入れると
すぐに逃げてる
なんか危なっかしい
隣の家の弟と妹が鼓膜やぶけるって
騒いでいる
あと衝撃と振動がすごい
体に衝撃がどどんとくる
地面が揺れる感じもする
えっ
花火が向かってきた
ひゅるるー どん
花火がおらたちから
10mくらいのところに落ちて
破裂した
地面から半球状に火花が広がり
おらたちに降ってくる
ばらばらばら
火花は直接当たらなかったが
燃えカスが大量に降ってきた
熱い 痛い
怖いと思わなかった
ただ
ただ
驚いた
逃げ場がない
おらは弟を
やつは妹を覆うように守る
体が本能で
守るように勝手に動く
体を低くさせる
熱い 痛い
茂みになっているのが幸いして
大部分は木の枝や葉っぱに当たってから落ちてくる
月明りのなか
腕が黒くなっているのがわかる
服が一部焼けて
穴が開いてた
おらは心から思った
絶対戦争はしてはだめだ
だって、誰がなんて言っても
そのときそう思ったんだ
火の玉が近くに落ちただけで
この威力
弟と妹を守れたけど
大砲の玉だったら
きっと無理だ
おらたちは人に見つからないように
裏道から大きく迂回して
山を下りた
親に見つからないように風呂に入り
服の汚れをせっけんで落とした
きれいには落ちなかった
怒られるだろう
外から 太鼓の音が聞こえる
今日の祭りのクライマックス
昔の殿様の名前がついた太鼓
おらは穴のあいた服を
風呂につかりながらずっと眺めていた
するとチビとクロが風呂に入ってきた
父さんから犬の体についたダニや汚れを
落とすように言われる
狭いすのこの上で
はしゃいでいる
石鹸を両手で泡立てて洗う
ぜんぜん黙っていない
もー
首に手を回して落ち着かせる
やっと2匹とも落ち着いた
山から帰ってくるといつもこうだ
おらは洗濯機に脱いだものを入れて
手ぬぐいで体を拭いてから上がった
犬たちは濡れたまま外へ行ってしまった
次の日 母さんから怒られた
でもなぜかほっとした
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体験しなければわからなかった
日常のありがたさ
平凡な日常こそ宝です
娘へ