小学物語26
チビという名前のポインターだった
白黒の大きなブチ模様で
とにかく体つきがしなやかで
美しい犬だった
それと クロ
なぜか雑種の赤犬(輝く茶色の毛)
毛並みがきれいでなでるとすべすべ
扇状地は水はけも良く
果樹の栽培に適してるらしい
果樹園の中には
たくさんの管理用の通路があり
その内の主なものは
舗装され山の方までつながっている
最近のおらたちの
ブームは
自転車レース
コースを決めて横一列で
幅が狭いときは
ジャンケンで順番を決めて
スタート!
今日は下りのコースだ
管理用通路は狭いので
ジャンケンで順番を決めた
おらは3番目だった
行けー
夢中になって下っていく
先頭のやつが
おらはノーブレーキで下りていくと
叫んで
早速
一つ目のコーナーで
コースアウトしてた
おらたちは心から
賞賛の声を上げた
勇気あるぞー
最高だな
転んだやつは誇らしげに腕を上げていた
くそー
追いつかねー
おらのチャリンコは26インチででかすぎる
やつの24インチは
コーナーの多いコースで
小回りが利く
もうゴールだ
おらは思った
ショートカットすれば
いいんじゃないか
おらはやつの自転車の前に出るため
やぶに向かって突っ込んだ
おりゃあー
高低差3m
崖みたいなところだ
傷だらけになりながら下りていく
たぶんリムも曲がるだろう
スポークも折れるかもしれない
そんなのわかってる
男は
勇気と
根性だろ
歯を食いしばり
ハンドルを離さないように
全身全霊で
コントロールする
おらはやぶを抜けて
果樹園の入口をトップで通過した
2番目のやつが
おらの雄姿に感動したんだろう
後ろブレーキだけをかけて
派手にスライデングして
そのままぶっ転んだ
おらとそいつは
目を合わせてニヤリとした
あれ
おかしい
他のやつらが戻ってこない?
おらたち2人は
心配になって戻る
あっ
挟まってる
びっくりした
おらがショートカットしたルートを
そいつも下りてきたんだ
地上から1.5Mの木間に
きれいにまっすぐ
すぽっと
そいつは自転車に乗ったまま
挟まってガッツポーズをしていた
あまりにきれいに挟まってるので
残りの奴らが
腹を抱えて笑って
寝っ転がったりしてる
おらは拍手した
やつの頑張りに
涙した
あの高さに挟まるということは
猛スピードで突っ込んだんだ
なんという度胸だろうか
チビとクロがしっぽを振って
そいつを見上げていた
賞賛してるんだろう
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何かを犠牲にしてまで結果を出す
悔いは無いけど
後から考えると
何でこんなことしたんだろうってことあるね
でも やらない後悔よりやった後悔を選ぼう
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