小学物語16

チビという名前のポインターだった
白黒の大きなブチ模様で
とにかく体つきがしなやかで
美しい犬だった

それと クロ
なぜか雑種の赤犬(輝く茶色の毛)
毛並みがきれいでなでるとすべすべ

家の右斜め前には神社があった
大きなニレの木のある神社だ

おらたちはその木の下
舗装されたばかりの道路に

チョークで○を書いて
その中に1 5 10 20 30点と
数字を書いていく

神社から漬け物石位の大きさの
すべすべした石を持ってくる

輪になってじゃんけんをする

勝った人が1番で その人が
左回り 右回りを決めて順番が決まる

一番の人が石を投げる
転がる 5の○に止まった

みんな 5点と声をそろえて言う
本人も何度か5点と確かめるように言う

次の人が投げる

砂地の点数表示枠に
数字が埋まっていく

3回勝負
みな夢中である

神社で遊んでいた子供が
底のない穴を見つけたと言う

それは二十三夜塔と書いていた石が
倒れた下にあった石の土台に開いた穴

真っ暗でさっぱり見えない
気の棒を指しても刺さらない

大人たちが集まる会所(かいしょ)の前にあった一升瓶を誰かが持ってきて
近くの堰から水を汲んで穴に流し始めた

んっ おかしい

すでに30回は入れた
おらたちは夢中になって
ついに99 100

えー

100回も入れたのに
あふれてこない

やっぱり底がないんだろうか

小さな子がニレの木が吸ったんじゃないの
と言う

しばらく皆静かに穴を見続けた

おれ帰る と6年生の子が言った
じゃあ おらもという感じで

みんな家に帰った


その晩 相変わらずおらの部屋には
ニレの木の影が入り込む

防犯灯の電球を変えたのだろうか
なんか明るく感じる

んっ なんか明るすぎないか

珍しく枝や葉っぱが動いていない
風がないのだろう

おらは
布団の上で下向きになって
目のあたりに右腕を当てて眠った

なんか見ない方が良いと思った
ニレの木のほうは


夜中に目が覚めた
やっぱりいつもより明るい

特に怖いとは感じない
ただまぶしい

なぜか中庭が気になって
2階の窓を開けて中庭を見る

なにも動く物はない

月?のせいか
よく見える

なんか暗いはずなのに
昼のように感じる
なんかよく見えるなあ

珍しくチビが階段を上がってきた

たぶんここまで上がってくるのは2回目?
普通は階段の下までしか来ない

チビと2階の大きな窓の方を開け
外を見る

クロがどこかから家の中庭を通って
工場(こうば)の方に向かった

たぶん床下の寝床に入るのだろう

チビの頭をちょっと強めになでる
目が大きくなり ちょっとおもしろい

おらもチビも
夜の雰囲気を一緒に楽しんだ

布団に戻ろうとすると
チビもちらっとこっちを見てから

階段を降りていった

相変わらず明るい気がするが
まあ明るいことは良いことだろうと
思って普通に寝た

なんか夢を見たと思うけど
覚えていない

階段を下りて台所に行く

おらは小学3年の時から自分で結構料理する
ばあちゃんが教えてくれる

フライパンにハムを2枚
卵を1個入れて焼く
小さいコップに入れた水を加えてふたをする

ジュパー

食パンはトースターで3の目盛りまで
回して焼いている

オレンジペコという紅茶をいれる
結構 高級なカップに

母さんが炒めてあったキャベツと
いっしょに食べる

うまい

また 今日がはじまる

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いろんな日があるけど

今日ははじまる

おいしい物を食べて
がんばろう

娘へ





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