サンダーソニア〜ブーメラン発言道:勝手に楽曲コラボ〜
その道はブーメラン発言道と呼ばれている。
宙に放った言葉がそのまま物質化し、自身の元へ戻ってくるからだ。
質量を伴っているので、当然当たれば痛い。
だが、発言師と呼ばれる芸人達は上手く身を躱し、黒い文字を道に突き立てる。
それは土地の名物にもなり、観光客がその言葉と記念写真を撮ったりもする。
それも歳を取っているからこそ出来る技。
若者が発すると、文字ではなく只の色として現れてしまう。発言師が皆年配なのもその為だ。
美術部の私がここへ来たのも、その話を聞いたから。
言葉にならない叫びは、パステルオレンジの雫へと変わり、宙を舞った後私の元へ戻ってくる。
あとは葉と茎の書かれたキャンパスノートを広げ、上手く当てればサンダーソニアが描かれる。
若さを逆手に取ったやり方だった。肝心のノートを忘れていなければ。
パステルオレンジは勢いよく体に直撃したが、私は痛みよりも快感を覚えた。
これが、美術部からボディペイント部に転部した切っ掛けの出来事である。
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