メガネ初恋
メガネの女の子に恋をした。これは多分僕の初恋だ。
でも何処の誰だかわからないから、近所の占い師に見てもらうと「メガネに向かえば会える」と言われた。
なんだインチキか。諦めて帰る途中、橋の上にあの子を見つけた。しかもその橋は二連アーチ型で川面に映るのと合わせてメガネに見える、眼鏡橋だった。
そういう事か。でも踏み入れた途端、橋はグラグラと揺れ出した。欄干に凭れた僕達は見つめ合ったまま動かない。これって吊り橋効果?じゃあ、あの子も僕を好きに…。
なんて事はなかった。
なぜなら揺れた衝撃で、あの子のメガネが外れたからだ。だから僕の顔もちゃんと見えなかったと思う。掛け直すとすぐ逆方向に駆けていっちゃったし。
それにしても何で眼鏡橋があんなに揺れたのか、それはわからないまま。
確かめようとした時、僕のメガネも外れ川に流されたからだ。
それ以来どんなに探してもあの橋は見つからない。
だから文字通り、危ない橋を渡らずに済んだと思う事にした。
(了)
(410文字)
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