執念第一
M子がY先輩から第二ボタンを貰ったらしい。
先を越されたか。ううん、でもそれなら。
「じゃあ、私には第一を下さい」
「L美ちゃんごめん、これは取っておきたいんだ」
「そんな…私にはくれないの?」
「ごめん」
でも諦めなかった。それから毎日断られても断わられても、先輩に頼み込んだ。
これはもう執念だった。第一ボタンを貰おうとする執念、執念第一だった。
そして同時に、卒業後の進路を見つけた気がした。
夜、目を覚ますとL美が乗っかっていた。
そしてその手には、ホークが握られていた。
「これはなあ!ブッチャーが使うたんと同じもんや!本当は第二が欲しかった!でも第二は心臓に近いから大事なもん言うなら、これでその心臓抉り出して掴み取うたる!」
「わかった!ボタンやるから!」
それから数年経ち、私はL美からLサムライに名を変えリングの上に立っている。
「あとはこれをね、一回腰に巻くだけだから」
控室に戻った私は、執念で掴み取ったベルトに第一ボタンを埋め込んだ。
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