そしてヒロインはいなくなった/ばったん
昭和の匂いがする漫画家が好きだ。
先日新刊が出たばったんもその一人である。
更に言うなら、作画の技術がしっかりとある作家が好きだ。
ここ数年で出てきた作家だとは思うが、ベテランのような巧さがある。するする読めてしまう。読めてしまうというか、作家の画力とストーリーテリングの力に巻き込まれる感じ。途中で読むのを止めることはできない。
画風にちょっとした古さを感じさせるのに、感覚は新しい。そのくせ、描こうとしている芯は、普遍のほのかな感覚。多くの人が感じたことのある寂しさや喪失感や、人の愚かさ、優しさ。人間臭さみたいなものだろうか。
紙タバコを吸う人間がぐんと減った世の中で、表紙に火を移してタバコを吸おうとする二人の女を描くとこなんて、小気味いい。
自由を象徴するような表紙だ。
作家が気になって少し検索したら、顔出ししていた。やはりお洒落な人だった。誰もが頷く美人ではないけれど(失礼)、センスが良くて、この人はモテるだろうな〜と思った。まさに、本著に出てくるトラさんの雰囲気がある。
テンポが良くて、しっかりとした物語で、上質な漫画だ。良い仕事を見ると、自分も頑張ろうと思う。
この漫画に出会えてよかった。