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見ててよ地獄、見ないで地獄

「ごめんなさい」と言いながら、ボロボロになった『人間失格』をベッドの奥底に眠らせた。人間試験に合格できなかったことが悔しかったのではない、こんなに愛していた読書を捨ててでも私は夜の世界に足を運ぶという、その馬鹿さに呆れたのだ。

ハルシオンやサイレース(睡眠導入剤)の色で発光したネオンカラーの看板の数々。知り合いの風俗嬢が「うちの店、ベロにつけたときの眠剤の色。うけるよね」と言って笑っていたことを思いした。歌舞伎町という街がここまで光っているのは、精神安定剤の効能を全てここに持ってきているからではないか、とか私は思った。うけるよね。そっか、うけるよね、の一言で片づけていいものなのか。

夜の世界の住人でよくあること。
毒親・DV・ホス狂いなんて単語は常識で、例に漏れず私は毒親育ちかつDVホストに絆された経験もあるような(現在は違う)典型的なホス狂いというやつだ。もちろん吉原のソープで働いていて、来る日も来る日も担当へ貢ぐための金を稼ぐために──いや、私の汚い欲望を満たすために、汚い私を担当に見られないようにするために、必死に働くのだ。

担当は私にとって神様だ。

担当は私のすべてで、君が成し遂げたいことが私の成し遂げたいことなんだよ、なんて煙草のように臭いことを言いたくなってしまう。担当は神様のようにきれいで、神様のように残酷だ。だから働いている姿も、必死に働いて稼いでジップロックに入れた札束たちも、できれば担当の視界に入れたくない。一緒に死ねればそれでいい。彼がそれを望んでいようといまいと、死を添い遂げることだけは一緒であってほしい、と、思う。

太宰治は『人間失格』の中で恥の多い人生を送ってきたと書いた。私が自分について小説を書くとしても同じ文章を書くだろうが、結末は違うだろう。太宰、私は神様みたいにいい子でした、とは、きっと誰かは書いてくれない。

救いのある人生を書けるだろうか。
これから、自分で。
破滅への道しかたどっていないのに。






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