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SLの前照灯が点かなくて運休??鉄道のヘッドライトとは?

2024年5月18日、JR西日本山口線「SLやまぐち号」の蒸気機関車の前照灯が点かなくて運休したというニュースがあった。

身近な自家用車と比較してみると、夜間はもちろんダメだが、昼間にヘッドライトが点かないぐらいでクルマの使用を止めるかというと、そうでもないという方が多いのではないだろうか。
私は、まずそのクルマでカー用品店へ往復するだろう。

■鉄道における、ヘッドライトの規則とは?

鉄道車両のライト類も、自動車と同じように、それぞれの用途ごとに細かく分類されている。

今回話題となったヘッドライトは、鉄道の規則の中では「列車標識」という項目にある「前部標識灯」という。規則上は、列車の最前部であることを示す灯であって、前照灯という意味合いのものではなく、列車の進行方向や接近を係員に知らせる役目がある。

照度(明るさ)の規定がないとはいうものの、実際は前照灯としての機能を兼ねているから、現代の車両では照度や照射角度、照射距離なども設計段階で考慮され、明るい灯具を使用しているが、かつては100ワットの白熱灯ひとつで漆黒の闇を走り抜けていたのだから、先人たちには畏れ入る。

ある鉄道会社で、新型車両開発にタッチしていたとき、LED前照灯の仕様書にハイビームの照射距離が「 ∞(無限)」と表記されていて、そんなわけないだろうとメーカーのエンジニアに質問したら、「光軸が水平なんですよ」という説明を受けたことがある。こちら(運転士)としては、普段の体感から数百メートルと表記されると思っていたから驚いた。立ち場が変われば表現や見方が変わる一例といえるだろう。

この前部標識灯の細かい運用は、国土交通省令を基にした、各鉄道事業者の社内規則によるが、旧鉄道運転規則に準じて「昼間の方式」「夜間の方式」の2つが定められ、「昼間は表示しない」「夜間は列車の前部に白色灯1灯以上を表示する」などと定められていることが多い。また当然といえば当然だが、地下区間やトンネルでは昼間でも「夜間の方式」として、前部標識を表示=前照灯を点灯させることになる。

■実際の現場での運用と球切れの対応

現在、多くの鉄道会社では、昼夜を問わず前部標識灯を常に点灯させているケースがとても多いので、前部標識の条件を満たせない状態の車両で運転することは「難アリ」だ。しかも多くの車両は朝から夜まで走りっぱなしの運用を組んであるから、不具合があればすぐに対応することになる。

例えば都会の通勤列車でも、球切れなどで前照灯が点かなくなったら、仮に2灯のうち1灯だけが点いていても、すぐに電球交換の手配をして、折り返し駅などで検査係が対応するか、車庫のある駅で車両そのものを交換することさえある。場合によっては1灯のままで夜(終車)まで走り切ることも、もちろんある。

 また、先述した通り照度は求められていないので、部品交換までの応急処置として、なんらかの白色灯(懐中電灯でも良い)を運転席に置いて前部標識とすることも可能だ。これを「代用灯」という。

■ライトが点かない車両は・・・運休もやむなし

しかし、今回の「SLやまぐち号」の機関車のように、故障で前照灯が全く点かない場合、それが判明した時点で回送列車に変更して営業運行を取りやめたのは、SLを楽しみにしてきたお客さんには気の毒だが、失策に厳しい現代では妥当な判断といえるだろう。
代用灯を用いて運転することは規則上可能でも、不測の事態を考慮すると、「正規の前照灯が点いていなかった」ということが鉄道側の落ち度になることは十分に想定できるからだ。

地上区間で、しかも地方線区の郊外区間ともなると、線路柵も少ないし、警報機&遮断機が無い四種踏切も多い。
昼間でも前照灯が点かないのは、事故防止に直接関わってくるから、自分でもその状況になったとしたら、率直に「嫌だなぁ」と思う。

私もかつて、夜間の乗務中に電気回路の不具合で、いきなり前照灯がまったく点かなくなり、前面窓に置いた懐中電灯を代用灯としたことがある。
私のケースは高架区間で、外的要因(踏切・自動車・人…etc.)をほとんど考慮しなくて良かったからまだ良かったものの、それでも真っ暗闇を走るのは緊張した。

その詳しいエピソードは、また次回。

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