「ワクチン接種率が高い県ほど超過死亡率が低い」という意見に違和感
下図の図1を示し、「ワクチンを接種している県ほど超過死亡は低い」とソーシャルメディアで主張している方がおられます。
私はこのグラフを見て違和感を感じます。
私の日本全体でのデータ分析では、ワクチンを接種すればするほど超過死亡が増加するからです(図2参照)。
このことについて「超過死亡はコロナワクチンによるものであることを死者数データから判断する。」という題目で下記のnoteに投稿しています。
図1のグラフは「2022年の11月中旬までの県民1人あたりの接種数」(各県の接種率)と「2015年~2019年」の傾向から逸脱した超過死亡率(%)」(各県の超過死亡率)をグラフに表し相関を求めたもので、接種率が下がるほど、超過死亡率が多くなっています。
そこで、このことについて検証してみたいと思います。
1.県同士を比較する事は適切か?
まず、高齢者である65歳以上と65歳未満で死亡者数に大きな差があります。
全死者数の9割が65歳以上の高齢者です。
下図の図3、図4は2016年から2022年の月別死者数を示したものですが、この表から明らかです。
図3の65歳未満の年間死者数は13万人前後です。
図4の65歳以上の高齢者の年間死者数は130万人前後です。
したがって、亡くなる方の9割は65歳以上の高齢者です。
次に、各県の人口に大小があるのは仕方ないとして、その人口構成に差がある点です。
各都道府県で65歳以上の高齢者の割合に差があると、亡くなる方の9割が65歳以上の高齢者ですので、県全体の死亡率に差が出て来ます。
各県の高齢化率は37.3%から22.1%まで様々で、その差は15.2%あります。
①人口構成が超過死亡率に及ぼす影響
仮に2つの100万人の県がありその高齢化率が20%と35%であり、65歳未満の死亡率が0.1%、65歳以上の死亡率が3.5%とするとその死者数は
高齢化率20%の県~65歳未満 800,000人、65歳以上 200,000人
死者数=800,000人×0.001+200,000人×0.035=7,800人
高齢化率35%の県~65歳未満 650,000人、65歳以上 350,000人
死者数=650,000人×0.001+350,000人×0.035=12,900人
両県の死者数の差は5,100人です。
仮に65歳以上の死亡率が3.5%から4.0%に0.5%上がったとすると
高齢化率20%の県
死者数=800,000人×0.001+200,000人×0.040=8,800人
高齢化率35%の県
死者数=650,000人×0.001+350,000人×0.040=14,650人
両県の死者数の差は5,850人で0.5%死亡率が上がるとその差は750人多くなります。
死亡率が0.5%上がった場合の超過死亡率は
高齢化率20%の県
超過死亡率=(8,800人-7,800人)÷7,800人×100=12.8%
高齢化率20%の県
超過死亡率=(14,650人-12,900人)÷12,900人×100=13.6%
同じ死亡率でも65歳以上の死亡率が0.5%上がると、高齢化率に15%差がある両県の超過死亡率の差は0.8%広がることになります。
②人口構成が接種率に及ぼす影響
次に接種率を検討しますが、①と同じく同じ県民人口100万人で高齢化率が20%と35%の県を想定します。
接種率が両方とも65歳未満が60%の接種率、65歳以上が90%の接種率とすると、
高齢化率20%の県
接種率=(800,000人×0.6+200,000人×0.9)÷1,000,000人×100=66.0%
高齢化率35%の県
接種率=(650,000人×0.6+350,000人×0.9)÷1,000,000人×100=70.5%
つまり同じ県民人口100万人でも、県全体では接種率は66.0%と70.5%となり、65歳以上と65歳未満が同じ接種率でも県全体の差は4.5%の差が出ることになります。
全死者の9割を占める65歳以上の接種率が90%と同じでも、県全体では接種率に4.5%の差が出て、死亡率が3.5%から0.5%上がった場合、超過死亡率は0.8%の差が出ることになります。
これから言えることは、逆に高齢化率35%の県が高齢化率20%の県と同じく県全体で66.0%の接種率だったとすると、高齢者の接種率は90%から77.2%に下がっていることも考えられます。
接種率=(650,000人×0.6+350,000人×0.772)÷1,000,000人×100=66.0%
死者数全体の9割を占める65歳以上の高齢者の接種率が正確に分からないと、適正な比較は出来ないのではないでしょうか。
人口構成が同一でない県同士の比較では、接種率や超過死亡率にズレが生じ、比較対象とするには適切ではないと思われます。
この問題の図1のグラフは「2022年の11月中旬までの県民1人あたりの接種数」(各県の全体の接種率)と「2015年~2019年の傾向から逸脱した超過死亡率(%)」(各県の超過死亡率)をグラフに表し相関を求めたもので、接種率、超過死亡率が人口構成によって変動するのでは、県同士で比較するには無理があると思います。
私はワクチン接種が超過死亡に影響していると考えているので、死者の9割が65歳以上の高齢者であることを考慮すると、県全体の接種率が分かっていても、65歳未満と65歳以上で接種率がどうなっているか調べる必要があると思っています。
2.65歳以上と65歳未満の接種率が確認出来るデータによる各県の接種率と超過死亡率の相関
図1のグラフを65歳以上の高齢者群と65歳未満の群に分けて検証したいのですが、この年齢別のデータをまとめたものがありませんでした。
仕方がないので、デジタル庁ワクチン接種記録システム (VRS)ページの一番下の方にある「都道府県別接種回数詳細(NDJSON)(改行区切りJSON形式)というJSON形式のデータをCSV形式に変換しEXCELで集計して65歳以上の高齢者群と65歳未満の群に分けて接種率を計算しました。
都道府県別接種回数詳細(NDJSON)(JSON形式)をEXCELに変換したものを以下に添付します。
県民1人当たりの接種数(65歳未満・65歳以上・全年齢の3種類を集計)は下記の2つのEXCELにより集計しました。
図1は「2022年の11月中旬までの県民1人あたりの接種数」で計算していますが、以下のEXCELでは「2022年の1月1日~12月31日までの1回~5回のすべての接種合計」により、65歳未満の県民1人当たりの接種数、65歳以上の県民1人当たりの接種数、全年齢の県民1人当たりの接種数を計算しています。
2022年の県民1人当たりの接種数(65歳未満・65歳以上・全年齢の3種類を集計)は下記のEXCELの「年間接種数及び接種率」シートに載せてあります。
なお、次に超過死亡率(%)は、図1では、「2015年~2019年の傾向から逸脱した超過死亡率(%)」を求めています。
今回検証するにあたり、2015年~2019年の5年間には、65歳未満・65歳以上・全年齢の人口にかなりの増減があると思われることから、各年の10万人あたりの死者数を求めて、2015年~2019年の5年間の10万人あたりの死者数の平均値と2022年の10万人あたりの死者数の差を求め、その差が5年平均値から2022年は何パーセントの増減(超過死亡率)があるか計算しました。
この増減値は10万人あたりの死者数を元に計算しているので、各年の人口増減を考慮しなくても比較できます。
下記のEXCELで10万人あたりの死者数を元にした超過死亡率を計算しています。
また、計算に用いた死者数のデータは各年の人口動態統計(年報)から算出しています。
以下にEXCELデータを載せます。
県民1人当たりの接種数(65歳未満・65歳以上・全年齢の3種類)と
各都道府県毎の県民10万人あたりの死者数を元にした超過死亡率が算出できたので、図1と同じグラフと相関係数を求めました。
図6~図8のデータを以下のEXCELに載せてあります。
まず、各表の接種率を見ていきます。
接種率は65歳未満は最大1.31回、最小0.6回でその幅は0.71回、都道府県の平均値は0.98回なのに対し、死者の9割を占める65歳以上は最大2.42回、最小1.91回でその幅は0.51回、都道府県の平均値は2.29回となり、かなり接種率が高くなっています。
この接種率を全年齢に広げると最大1.69回、最小0.91回でその幅は
0.78回、都道府県の平均値は1.41回になります。
死者の9割を占める65歳以上の平均接種回数の幅は0.51回なのに対し、全年齢に広げるとその幅は0.78回になり、1.5倍ほどに広がります。
図のグラフと相関係数を見ていきます。
相関係数は図6の65歳以上では-0.12で「ほとんど相関関係がない」でした。
これはグラフをみて分かるとおり、接種回数が狭い接種数の範囲に集中して傾きを持たず縦長に集中しています。
死者の9割を占める65歳以上は最大2.42回、最小1.91回でその幅は0.51回、都道府県の平均値は2.29回で平均値の10%の範囲内に接種回数が集中しています。
これだけ接種回数が集中していては傾き(相関係数の絶対値が大きくなる)が大きくならないでしょう。
なぜなら、県毎の高齢者人口は鳥取県の18万人から東京都の314万人まであり17倍の差があり、県毎の死者数も大小が混在し、死因は病気のみならず老衰や事故死や自殺まで含みますので、高齢化率や社会環境まで影響して変動するからです。
65歳以上に於いても、この県民1人あたりの平均接種回数が65歳未満の平均である1.0回まで低くなる県が数県あれば、相関係数の絶対値が大きくなり「かなり相関関係がある」や「強い相関関係がある」になるかもしれません。
しかし死者の9割を占める65歳以上の高齢者の接種回数が平均値の10%の範囲内に接種回数が集中していては、県単位で相関を求めるには無理があります。
図7の65歳未満は-0.24で「やや相関関係がある」でした。
図8の全年齢では上記の理由(接種回数の範囲が65歳以上の場合の時より広がる)により、65歳未満より相関係数は上がりましたが、数値的には
-0.34で「やや相関関係がある」にとどまりました。
65歳未満で「やや相関関係がある」と出た理由は分かりませんが、死者の大部分の9割を占める65歳以上で「ほとんど相関関係がない」と出ていることから都道府県のデータで相関を求めるのは意味が無いと思います。
都道府県のデータには65歳以上の高齢者と65歳未満で死者数に9:1の差があること、65歳以上の高齢者と65歳未満で死者数に差があるのに、接種率にも大きな差(65歳以上の高齢者の平均接種回数2.29回、65歳未満の平均接種回数0.98回で2.34倍の差)があること、高齢化率(65歳以上の高齢者と65歳未満の構成比)が都道府県によって最大15.2%の差があることにより、条件が異なる母集団をまとめて相関係数を求めると、異なる結果を導くことになります。
そもそも、高齢者の65歳以上と65歳未満で死亡者数も違う、接種率も違う、県毎の高齢化率も違うものを同列に扱うこと事態が間違っている気がします。
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