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米1PointFiveのCCS・DACプロジェクトが進展も、政治的リスクに直面か?
米国テキサス州南部で米石油会社オキシデンタルの子会社である1PointFive(ワンポイントファイブ)がCO2回収・貯留(CCS)ハブおよび大気中CO2の直接回収(DAC)プロジェクトを進めている。2026年にも運転開始が予定されているもので、米エネルギー省(DOE)も支援しており、CO2輸送パイプライン関連でも動きがあった。
米オキシデンタルの子会社である1PointFive(ワンポイントファイブ)は、同社がテキサス州南東部で開発中のブルーボネット隔離ハブにつながるCO2輸送ネットワークの開発でEnterprise Products Partners(エンタープライズ プロダクツ パートナーズ)と提携した。
契約に基づき、1PointFiveが通知すると、Enterpriseは新しいパイプライン・ネットワークを開発し、ヒューストン船舶航路付近の施設で第三者が回収したCO2排出物を 1PointFiveのブルーボネット ハブに有償で輸送する。
ブルーボネットハブは、ボーモントからヒューストンまでのメキシコ湾岸沿いの製油所、化学工場、製造施設の近く、チェンバーズ郡、リバティ郡、ジェファーソン郡に立地。2026年に運用開始予定であり、オフサイトで回収されたCO2を、石油やガスの生産とは関係のない塩水層に安全に保管できる。
また1PointFiveは、南テキサスのDAC(大気中CO2直接回収)ハブで米国エネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー実証局(OCED)から資金提供を受けた。この資金は複数回に分けて提供される予定であり、最初の5000万ドルは1PointFiveの進行中の作業の推進に充てられる。
今後の活動にはエンジニアリング、許認可、長期リードタイム機器の調達、1PointFiveのコミュニティ利益計画を推進するための継続的なコミュニティ活動などが予定されている。
この南テキサスDACハブの総額は、最大5億ドルになると予想されており、南テキサスの地域炭素ネットワークの拡大開発のために最大6億5000万ドルまで増額される可能性がある。
当初年間50万トンのCO2除去能力を持つDACプラントが設置され、将来的には年間100万トン以上に拡張する計画がある(OGJ Online、2022年11月1日)。このサイトは、DACを通じて最大3,000万トンのCO2除去能力を拡大し、最大30億トンのCO2を塩水層に貯留する能力がある。
米国ではバイデン政権によるインフラ抑制法(IRA)でCCSやDACに対して税控除などの優遇策が講じられているほか、特にDACで回収したCO2のカーボンクレジット価格は、トン当たりで最大1,000ドルと言われている。このカーボンクレジットの販売や米国政府の支援策によって、プロジェクトの採算性が見込まれることになっている。
既に1PointFiveは、マイクロソフトと6年間で50万トンの二酸化炭素除去 (CDR) クレジットを販売する契約を7月に締結しており、クレジット大口顧客を獲得している。DAC)によって可能になった CDR クレジットの単一購入としてはこれまでで最大となるものだ。
2030年までにカーボン・ネガティブになることを約束している Microsoftとの契約条件に基づき、クレジットの基礎となる回収された二酸化炭素 (CO2)は、地下塩水隔離によって安全に保管され、石油やガスの生産には使用さない。つまり再び地上には出てこないことを保証するものとなっている。
ただ大統領選でトランプ候補が勝利するような「もしトラ」が起こってしまったら、こうしたプロジェクトへの支援がどうなるか、わかったものではない。米国の脱炭素は政治的リスクに直面しているのかも知れない。