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SMRとデジタル赤字と“スクエアなCO2フリー電源”のお話

 先日、ダイヤモンド・オンラインに、私の記事を掲載して貰いました。米グーグルが小型モジュール原子炉(SMR)技術の開発を進める米企業と契約を交わしたほか、米アマゾン・ドット・コムも開発を進める企業の資金調達に協力を決めたことを受けて、SMRの実用性について考察した記事です。

 「米グーグルが、脱炭素電源として次世代原発に触手を伸ばし始めた。小型モジュール原子炉(SMR)技術の開発を進める米企業と契約を交わしたのだ。AI(人工知能)の普及で大幅な増強が求められるデータセンターは、今後電力需要を爆発的に押し上げると予測されており、その電源としてSMRが急浮上している。」
 という書き出しですが、実はSMRそのものの実用性、つまり経済性と安全性について、今のところは概念としての話であり、実証されたものではない、という話をしております。

データセンターには“スクエアなCO2フリー電源”が必要

 一方、GAFAMと呼ばれる米大手テック企業は、脱炭素化に向けてCO2フリー電源を求めています。今、生成AIの普及拡大に伴って、世界各地でデータセンター不足の懸念が出ています。日本ももちろん、データセンターを拡充しなければ成りません。
 特に日本は、これまでデジタル関連は海外のアプリやサービスに依存しており、その輸出超過、つまりデジタル赤字が問題と指摘されてきました。既に昨年度では5.3兆円もの赤字となっており、足下の見通しでは5.5兆円に達するとみられています。

 従って、海外のデータセンターを使用するより、国内で設置した方が、デジタル赤字の拡大を抑止することができます。
 ただ、データセンターへの投資でも、CO2フリー電源の確保が問題です。しかも、データセンターの場合、24時間365日一定の電源が必要。縦軸に電力量、横軸に時間をとってグラフにすれば、まさに四角い(スクエア)な電力需要です。
 この、スクエアでCO2フリーな電源として、原子力が適している、とされており、そのためSMRが求められていると言うわけです。

●グーグルやアマゾンが「次世代原発」に積極投資へ!世界的ブームに潜む2つの落とし穴
https://diamond.jp/articles/-/352882

 ここからはダイヤモンドにも書いていませんが、日本ではSMRはあまり期待できません。ではどうするか。原子力と同じくスクエアなCO2フリー電源としては、地熱発電があります。しかし日本ではなかなか開発が進んでいません。
 しかし、データセンターと電源を1:1で繋げる必要は特にありません。日本は系統電源を調達し、カーボンクレジットを購入することなどで、スクエアなCO2フリー電源を確保できると思います。クレジット購入額を最小化するためにも、まずは再エネを最大限拡充し、余剰電源を貯蔵あるいは水素化すること、さらに系統を広域化するなどで、平準化を図っていくのが王道ですね。
 

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