憐れみの3章、映画館で観られない
来週にはヨルゴス・ランティモス監督作「憐れみの3章」上映が始まりますね。
首都圏から田舎への移住を考えている方にはぜひ気に留めておいてもらいたいのですが、田舎で暮らし始めて自分の趣味は継続できるのかを考えてみてください。
田舎は田舎でいいところです。道が広いし空気は澄んでいるし(たまに牛糞のにおいで満ちていますが)、食べ物は美味しいし満天の星空が見えます。
でも最新の映画は観られません。
アニメ作品と有名芸能人が出演し番宣を打ちまくっている邦画だけ上映されます。
ランティモス監督作で今年初めに公開した「哀れなるものたち」は、幸い近隣に上映館があったので、映画館で鑑賞できました。
映画館まで片道2時間、高速代1,000円です。
9:00 子供を登園させる、映画館へ出発
11:30 到着、「哀れなるものたち」鑑賞
14:30 鑑賞終了、保育園へ向け出発
16:30 退園
17:00 夕飯づくり
こんなに慌ただしい映画鑑賞あるでしょうか。
それでも劇場へ観に行って良かったと思いました。
ランティモス作品を映画館で観るのは初めてで、パンフレットを買えることもポスターを眺められることも嬉しいと思いました。
年内にさらに新作公開があると知り、今回も片道2時間かかるけど頑張って運転して観に行こうと前売り券を買っていました。
蓋を開けてみると、今回は近隣での公開予定はありませんでした。
一番近くの劇場まで片道3時間、高速代3,720円です。
片道です。往復7,440円、ガソリン代・駐車場代別です。
前回私が2時間も運転できたのは(そしてそれを家族に許されたのは)、映画館の立地が私の住む町と同程度の田舎だったからです。
田舎から田舎への移動は、距離こそあれ、道幅や車線の量は変わらず、車の数自体も減っていき、高速道路は絶対に渋滞しないと確約できます。
「憐れみの3章」の上映館が減らされ、住民数トップ3の市町村で集中的に公開することになったため、私が単身車で映画を観に行き帰ってくるという選択肢はなくなりました。
危険だからです。
劇場鑑賞するのに考えられる選択肢は
①一人で、高速バスで日帰り
メリット:移動費が抑えられる(バス往復9,000円)
デメリット:朝7時出発、夜7時帰宅。すごく疲れる
②家族で、1泊旅行を兼ねて行く
メリット:楽しい、体力的に負担が少ない
デメリット:お金がすごくかかる。不慣れな土地で夫ひとりで子供を見なければならない
映画のチケットは1,600円なのに、映画館までの交通費が1万円近くなるのが痛手で、かつ時間の工面が難しいので、大人の判断でチケットを放棄することにしました。
悔しい・・・
私が田舎でできる唯一の趣味だと思っている映画鑑賞、サブスクで過去のものに関してはほぼ不自由なくできていますが、最新作となるとどうしても時差が生じます。
何カ月も前から公開を楽しみにしているような作品は、東京在住の頃には初日に観るのが当然でしたし、「もう一回観に行こう」が可能でした。
田舎にいると、観たい映画を映画館で観られることは千載一遇なのです。
二度と同じ経験はできないのです。
往復4時間かけて3時間弱の映画を観るというのは一種の覚悟なのです。
上映開始に間に合うか、保育園のお迎えに間に合うか、「映画を観る」という目的達成のために家族を巻き込み全力を尽くしました。
それが、今回はそもそも観るチャンスすらないなんて・・・
悔しいです。
こんなクソ田舎に住んでさえいなければと思います。
子育て中でなければ・・・
そもそも結婚しなければ・・・
最近では公開から2か月くらいすれば配信されますし、家には大画面のテレビがあります。
年末には数百円で「憐れみの3章」をレンタル視聴していることでしょう。
でも映画館で「憐れみの3章」を観る機会は、公開を前にして絶たれているのです。
時間と時間を繋ぎ合わせてながーーーい時間の塊をつくり、そこで映画を観に行きたいくらいです。
これから「憐れみの3章」を観に行く人、自分が恵まれていることを自覚してください。
私はパンフレットをメルカリで買いますが、そういうことじゃないのです。
間違えて一般チケットを買ったので、ムビチケカードもメルカリで探すと思いますが、そういうことじゃない。
昔、石田徹也の展覧会を見るために足利市立美術館へ赴いた際、電車の特急料金をケチって片道3時間、駅からのバス代をケチって徒歩30分、という道程を辿りました。
今考えると馬鹿ですが、そんな時間をかけても、門限もなく身一つで見たいものを見るための行動だと、全然苦ではありませんでした。
独り身は十分楽しんだつもりで田舎に移住してきましたが、田舎には田舎の規制、縛りがあるよなあと感じています。
悔しい。