真実と嘘
この本は、浅倉秋成著 2021年 3月2日 角川書店初刊発行 『六人の嘘つきな大学生』というミステリー小説である。ここでいう曖昧な世界とは、決まりや正解のない就職活動のことである。そこに潜む真実と嘘とは登場人物の発言なのか、行動なのか、人物像なのか。精神の安定しない就活生同士の会話を様々な視点から考察して見るとたのしい。きっと、人それぞれ感じる嘘や真実も違うだろう。
この本の粗筋・内容を説明する。主に登場する人物はIT企業の最終選考に残った六人の就活生である。元々は、一か月後までに最高なチームを作り上げディスカッションをし、結果次第では全員が内定をもらえるといわれていた。しかし突然課題の内容が変更される。それは「六人の中から一人の内定者を決める」という内容であった。内定を賭け議論が進む中六通の封筒が発見される。それは、「〇〇は人殺し」という告発文だった。その犯人の目的とは?そして、六人の嘘と罪とは?
この本を評価する根拠は、次の引用からわかる。
「互いが互いに疑いの眼差しを向けていた。・・・(省略)五人は心からの不安に支配されている。でも、たった一人だけ、ただの演技として表情を歪めている人間がいる。被害者のような顔をして、この会議に劇薬を持ち込んだ裏切り者が__犯人がこの中にいる。」 『六人の嘘つきな大学生』69頁
私の主観的な評価は「曖昧な世界の中に潜む真実と嘘」である。しかし、この本が読者に対してもつ客観的な価値は、「嘘から見える現実の世界」であると考える。この本は人それぞれの腹黒い部分が多く描かれているが、そこにはリアルな人間らしさというものが感じられる。また、今回のような面接は就活生とっては人生が左右される出来事である。しかし、担当者にとってはただの一つの仕事として考えられた。そこから、同じ現場にいてもそれに対する価値観のずれが、人間の現実をしている。
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