恋愛のタイミングが分からないならせめて同意の意思表示はしておこうの話
恋愛はタイミングだ、とよく聞くけどタイミングなんてうまく合わせられない。ここだ!(ピーン!)て気づいたとしてそこで身体はうまく動かない。
だから、あらかじめルールを決めている。
「せめて同意の意思表示をしよう。」
もしもそれがタイミングなら自動的にうまく行くはずだから。たぶん。
20歳夏。大学生だった私は飲食店でアルバイトをしていた。いつもは22時以降の深夜帯にしかシフトを入れていなかったのだけど、夏休みだし、ということでディナータイムにもちょこちょこと顔をだしていた。
夏休みだったし、みんな遊びたかったから、水曜日っていう週の真ん中も真ん中の日は全然シフトが埋まらない。だから1ヶ月まるごと水曜日のシフトは私と1つ年上の先輩の2人で固定シフトになっていた。
その先輩はすらっと身長も高くて細身で優しくて頭も良くて。見るからに好青年。男女問わず人気者。その時すでに拗れに拗れた性格をしていた私にとって眩しすぎて全く恋愛対象ではなかった。
それでも別の先輩(その人は2つ年上でこの人ともいろんな思い出がある)から「お前、手出すなよ」と釘を刺されていた。いや、タイプじゃない。
タイプじゃなかったんだ、ほんとに。
水曜日なんてお客さんもほとんどこない。毎週毎週暇で暇で、ずーっとたわいもない話をしていた。お店の話、遊んだ話、お酒の話、恋愛の話。彼は話も面白かった。
そして仕事も抜群にできた。鈍臭い私のミスを何度もフォローしてくれた。
夏休みが終わる週。固定シフトもこれで終わり。彼は言った。
「あーあ、来週から会えないのか。さみしい。」
ん?んんん?
夏休み最終日。バイト仲間全員で夏の終わりを悲しむ飲み会をした。彼は私の隣に座っていた。みんな酔っ払ってきてみんな周りのことなんて気にしなくなってきたとき、彼は耳元で言った。
「おれ、君のこと好きなんだけど」
酔った勢いだと思った。みんなの人気者が私に、好きと言っている?うそだうそだ絶対嘘だ。
しかも私は2つ年上の先輩との約束があるんだぞ。
はぐらかして聞こえないふりをした。直後、バイト仲間の女の子が酔い潰れて、彼はその女の子を家に送って行った。
彼と、その女の子が付き合ったと聞いたのは次の日バイトに入ったときだった。たまたまシフトが被った彼と一緒に帰った帰り道に告げられた。
本当に君のことが好きだったんだ。そう、彼は言う。そして触れるか触れないかのキスだけして消えて行った。
バーカ、だったらすぐ別の女に乗り換えんなよ!バカバカバカ!でも、本当の本当にバカなのは、あのとき同意が出来なかった自分だ。大学生の恋愛なんて移ろいやすいものなのだ。
そのときに学んだ。タイミングなんて急にやってきて、あれ、タイミングかな?と思ったときにはもう消えて無くなっている。
だから、タイミングかどうかなんてわからなくても一言いっておかなきゃいけないんだ。
「うん、私も。」と。