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「水辺+Ring(輪)=ミズベリング との出会い」中編

前回のコラムに続き、「ミズベリング」について書こうと思う。
前回を前編、今回を中編、そして次回を後編としたい。
「ミズベリングって何?」という方が大半だと思うので、まず私なりの解釈を述べると、
『身近にある川や海などの水辺の利活用に関心をもってもらい、それに関わる取組を通じて、「もっと、自分たちの街のことを知ろう、守ろう」という意識を促すもの。』である。
ただ今後、もっと深くミズベリングを知ることができれば、この解釈は変わっていくかもしれない。

前編の最後は、
『いずれにしても、川というのは、私たちの生活には欠かせない存在であるし、自然災害は減ることはないだろうし、もっと真剣に川や治水のこと、そして「ミズベリング」のことを調べる必要があると感じた。』との記述で締めた。

それから自分なりに、水害対策や「ミズベリング」について、インターネットや本で調べてみた。
まず水害対策だが、2020年頃から「流域治水」という考え方が主流になってきているようだ。これは、地球温暖化による気候変動により、激甚化する大雨に対し、従来の治水対策(河川の改修やダム・遊水地など洪水を貯める施設)だけでは水害を防ぐことができず、住民を含め多くの関係者が連携し水害に備える考え方である。
水害対策というと小学校の時に見学にいった「赤瀬ダム」を思い浮かべる程度であったが、つまりダムも流域治水の取り組みの一つという事になるのだろう。


赤瀬ダム 写真出典先 石川県ホームページより https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kasen/ishikawa-dam/dams/akase.html

水が溢れることを前提にして、水を貯められる場所をたくさん確保したり、危険な場所に住まないようにしたり、避難対策を考えたり、あらゆる対策を組み合わせて、水災害による被害を小さくしようというねらいがあるのだと思う。

つまり水辺周辺の住民の力がとても重要である。
流域全体の現象を意識して、その中で一人ひとりは何ができるのか、「治水」を意識しながら日常を過ごすというのは、まちづくりの考え方の要素もあり、これからの時代に必要な考え方ともいえる。


「流域治水」の施策について 出典先 国土交通省ホームページ chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/pdf/01_kangaekata.pdf

そして「ミズベリング」とは、流域治水の取り組みを広く浸透させるための、これからのソーシャルデザインとも言えるのではないか。

しかし! では私が、ミズベリングといえるような取組をしているのかと言えば、年に1回、校下の川清掃に参加している程度である。
正直、私もそこまで川が好きという訳でもない。

いったい、どうしたらよいのだろうか・・・?と悩んだ挙句、刑事ドラマで聞いた名セリフ「現場百遍」を思い出し、また川辺へ行くことにした。何かを感じ取ることが出来るかもしれない。

今回は、ミズベリングのモチベーションを上げる「ミズイロお菓子」も準備して、万全の状態で梯川へ向かった。


この日も快晴 とても気持ちがいい

選んだ場所は、また梯川ボートハウスの近くの川辺である。


よく見ると、たくさんのボートが停泊している

綺麗な川を見ながら、美味しいお菓子を食べてみよう、と買ってきた袋を芝生の上に広げた。


準備した、ミズベリング用ミズイロお菓子セット

お菓子は、青で統一してみた。ゼリー、キャンディー、ラムネ飲料など。ついでに、シャボン玉や双眼鏡も青色で揃えた。
中身の合計金額は、なんと200円足らずでリーズナブルである。


川の青さと調和している?


水辺で乾杯!

ラムネを飲みながら、川のため、まちのために、何が出来るだろうか・・・?と思いを巡らすが、なかなか、アイデアが出てこない。
ただ、水辺での飲食は想像以上に開放的で、楽しい時間だった。ゴミは当然に持ち帰った。

とにかく、現場に来て分かったことは、川の近くで過ごすのは、心地がよいということだ。はっきり言って、現場へ行かなくても気づけた(笑)

頭の中では、ミズベリングのアウトラインがぼんやりと見えてはきたが、具体的なことが何も分からない。悶々とした気持ちは、あまり変わらなかった。

そんな時に、小松市市役所の職員さん及び梯川を管理されている国土交通省の職員さんが、東京から国土交通本省やミズベリングディレクターを招き、小松市内の様々な分野の方々との意見交換会を2部構成で開催されると聞いた。
ミズベリングの世界では有名な「滝澤恭平先生」も来られるということで、先日購入したばかりの滝澤先生の本にサインをもらおうという目的もあり、夕方から2部の会場であるEATLAB(イートラボ)へ向かった。

EATLAB(イートラボ)さんは、小松市内のコワーキングスペースのパイオニアである。


EATLABさん 出典先 同社HPより https://eatlab.jp/1526
内はカフェのような雰囲気で、とても居心地が良い。

EATLABさんは、ご夫婦で経営されており、奥さんが編集業(エディター)として、ご主人さんがデータ解析・マーケティング業(データサイエンティスト)として、それぞれご活躍されている。


EATLAB エディター 瀬尾 裕樹子さん
他のセミナーでも講演を拝聴したが、いつも丁寧な口調で、分かりやすく説明をされている。


EATLAB データサイエンティスト 新道 雄大さん
お顔も語り口も穏やかで、優しい雰囲気に包まれている方。

会場内では、多様な方々による意見交換が展開された。
メンバーは国土交通省や小松市などの行政担当者、大学の学識者、水辺活用専門家、民間のクリエイター、デザイナー、アウトドアショップのインフルエンサー、そして我々図書館エディターである。
司会の方の温かみのある進行で、終始和やかな空気だった。


司会 公益財団法人リバーフロント研究所 清水グループ長
温かなお人柄がにじみ出ていた。

小松市内における河川空間の活用が期待されるエリアについては、主として次の4つがあり、メンバーはこの意見交換会の前に約4時間をかけて、現地見学をしたとのことであった。
①小松天満宮周辺エリア
②加賀国府 府南山歴史公園エリア(古府町、佐々木町近辺)
③梯川ボートハウスエリア
④北前船寄港地エリア(安宅の関周辺)

冒頭は、ミズベリング・ディレクターの滝澤先生による、梯川周辺現地調査の発表だった。


写真中央 ミズベリング・ディレクター 滝澤 恭平 先生(博士)
ミズベリングの世界では有名な先生 しかもハンサムな優しい先生だった。

滝澤先生による梯川周辺への直観的感想は、以下の通り。

【①小松天満宮周辺エリア】
・街にも近く、最もポテンシャルがありそう。

【②加賀国府 府南山歴史公園エリア(古府町、佐々木町近辺)】
・街中に面しており、また近くに十分な広さのスペースもあるので、アウトドアメーカーによるテントサイトやバーベキューサイトの運営等がマッチングしそう。
・地元の業者さんというよりは、全国展開している外部大手業者の方が適しているかもしれない。
・どのようにその業者に関心をもってもらうかが課題。

【③梯川ボートハウスエリア】
・建物がとても立派なので、1棟貸しの需要が高そうである。
・パーティやイベントに活用すると盛り上がる。
・また静けさもあり景観も良いため、コワーキングスペースやサードプレイスとしての活用も可能である。
・ただ、活用がイベント頼みになると、取組が一過性になるので、街の人とどのように接続させるかが課題である。

【④北前船寄港地エリア(安宅の関周辺)】
・潜在活用能力は高い。サンセットを楽しむだけではなく、常設バーベキューなどの環境も整えると、市民からの需要が満たせそうである。
・下流付近は、外の文化を取り入れて来た歴史があるので、その延長で、マリーナをイメージした護岸整備を行い、全国のプレジャーボートや船舶を取り込んでいくと良い。

いずれにしても、水辺活用のポイントは、請け負ってくれる事業者さんをどのように探していくか、ということであるようだ。

次に、ミズベリングと共通項が多い「まちづくり」に関して、瀬尾さんから、これまでの取組についての説明があった。


EATLAB エディター 瀬尾 裕樹子さん
10年ほど前から、ミズベリング活動に関わっておられたそうだ。

まちづくり活動においては、いかに地域の方を巻き込んでいくか?というスタンスではなくて、いかに地域の方が自発的に活動してくれるような環境をつくれるのか?というスタンスが大切だということだった。

そして、小松市におけるミズベリング活動のキーマンである浮田技監より説明があった。


小松市技監 浮田 博文さん
長身で爽やかなイケメンで、KOMATSUミズベリング愛は誰よりも深い。

浮田さんは国土交通省から小松市へ出向されている方で、ミズベリングを通じて小松を盛り上げたいという熱い想いを持っておられる。
小松市においては、「内水対策室(土木系)」と「まちデザイン課(都市計画系)」という2つの課がミズベリングを担当している。
本来、河川管理は土木系の範疇になるが、活用の一環で商業施設などとコラボする場合は都市計画系の協力も必要になるため、このような体制になっているそうだ。


浮田さんからの真剣な語り口から、熱い想いが伝わってくる。

全国的にはミズベリングの取組は10年以上展開されており、様々な活動がされているとのことだった。
例えば新潟市の信濃川では、やすらぎ堤という全国初の緩やかな傾斜の堤防があるが、そこは季節に応じて多様な活用がなされている。
民間企業さんの協力のもと、アウトドア活動も展開されており、都市の貴重な水辺空間として市民に浸透しつつあるようだ。


水辺の開放性をうまく活かした屋外イベント
水辺のキャンプは、森のキャンプとは全く違った味わいがありそうだ
出典 国土交通省信濃川下流河川事務所のHP https://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/shinanogawa/sansakumap.html

また金沢市でも犀川近辺でいろんな取組がされており、石川県内においてもミズベリングの考えが動き始めているそうだ。
小松市においては新幹線開業に伴い様々な新しい動きの機運が高まっているので、川からもそういった盛り上がりを実施していきたいということであった。

浮田さんに続き、小松市職員の若手メンバー2名からも、想いのこもった説明があった。


小松市内水対策室 青山 築さん


小松市内水対策室 橋本 陽奈さん

小松市でミズベリングを進めるアプローチについて説明があった。
若者への普及率が高いSNSを積極的に活用したいということであった。
(現在は、Instagramにて「こまつのMIZBE」という名前で投稿を始められた。


出典先 Instagram「こまつのMIZBE」https://www.instagram.com/komatsu.mizbering/
拝見すると、心が安らぐような投稿がたくさんあった。 ぜひ、ご覧頂きたい。

次に、金沢大学 人間社会学域 地域創造学類にて川づくりを研究されている坂本先生から、梯川に対する感想等が述べられた。

例えば、手取川は非常に激しい川であり「動」というイメージである。
それに対して梯川は「静」というイメージであるそうだ。
それゆえ、澄み切った水面に「浮く」ということがキーワードになりそうだとのこと。
また、「方角」、「街の骨格を川の中にデザインする」ことも大切だということだった。


金沢大学 人間社会学域 地域創造学類 坂本 貴啓 先生
とてもお洒落で優しい雰囲気の方 きっと学生からの人気も高い先生だろう。
白山ジオパークの活動にも深く関わっておられる。

また続いて、国土交通省の舛田さんより、本日のお礼と今後の水辺活用に関するアドバイスが伝えられた。
梯川は流れが緩やかなので、supとの相性が良いのではないか?
例えば天満宮周辺を3回巡ると運気が良くなるというイベントを企画するとか、小松市のボート大会に加えてsup大会があると賑わうのではないかという柔軟な示唆がなされた。


国土交通省水管理・国土保全局 舛田 直樹さん
こちらの方も俳優さんのような佇まい 今回の参加者はかっこいい方ばかり
 水辺活動に関わると男前になるのだろうか?

ミズベリングの第一の目的は、水辺の利活用であることは間違いないが、もう一つの重要目的は、行政職員の意識改革だということだった。

意見交換会も終盤に差し掛かり、OUTDOOR STYLE HAKUの松原さんが感想を述べられた。
HAKUさんはイオンモール新小松の近くのアウトドアショップであり、
Instagramのフォロワーは17,000人を超える、人気のお店である。ここでしか買えないアイテムもたくさんあるそうだ。

OUTDOOR STYLE HAKU 松原 聡さん(写真 最左)
優しい声で笑顔が素敵な方


水辺でのsupやキャンプという取り組みは、きっと利用者からかなり高い人気が出るイベントになるだろうし、例えば新幹線の乗客が、その様子をチラッとでも見ることが出来れば、大きな話題にだろうということだった。
また安宅の関にて、夕陽を見ながらのヨガなども需要が高そうだとのことだった。

ここで「どうすれば、小松市内で水辺に興味がある仲間を見つけることができるのか?」という質問がなされ、活発な意見交換がはかられたが、結局のところ、地道に歩いて探していくことしかない、ということに帰着した。

浮田さんからは、一過性にならないような、持続可能なミズベリングの仕組みづくりが大事だという提言がなされ、参加者でその認識を共有した。

また、金沢河川国道事務所の方から、石川県民の地域性が語られた。
新しい取り組みに対して慎重な向き合い方をする傾向にあるので、心にとどめてもらうには、インパクトが強いイベントを実施した方が良いかもしれないとのことであった。
しかし、スポットで終わらないように留意する必要があるとのことでもあった。


金沢河川国道事務所の方々

いろんな意見の中に、「著名人を呼んで大規模なイベントを実施すれば、人は来るかもしれないが、一過性で終わってしまう。そうではなくて、川は地域の生活に密着しているので、地域で取組してほしい。」というものがあった。

最後に、EATLABの新道 雄大さんから、小松市におけるミズベリングの可能性が語られた。
・川の上流から下流まで、それぞれの特性に応じた多様な活動が出来そうである。
・例えば、子供のための遊具を置いても賑わいそうであるし、また天満宮周辺の道路は、1周の長さがイベントに適した距離であり、キッチンカーが並ぶにもちょうどいい。
まちづくりにも繋がる素敵なアイデアが出された。


記念撮影 水面のように輝く皆さんの笑顔がとても素敵!

意見交換会は2時間弱の時間であったが、自分としては「ミズベリング」について、驚くほど多くのことを学ぶことが出来たと思う。
次回の後編では、私自身の考えや、どんな活動ができるのか、書いていきたい。


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