まさお君と息子

『まさお君
今日ブラジルに帰るんじゃないの？』

そう息子に尋ねた
あの日
もう20年以上前の
出来ごとだけど…

ふいに思い出し
あの時の息子の気持ちを思い
涙が出た…

息子より
年下で
両親と一緒にブラジルから
日本に来ていた少年　
まさお君

何故か息子とは
気があったようで
仲良くなり

よく一緒に
釣りにいったりして
遊んでいました

まさお君のお父さんは
近くの工場で働くために
日本に来たようでした

日系ブラジル人のお父さん
お母さんは、ブラジルの人

そのお母さんが
日本に馴染めなくて
精神的に追い詰められ…
おかしな行動をするようになり

ブラジルへの
帰国となったようですが

真実は分かりません…

息子は、仲良しだった
まさお君の帰国が
悲しかったようで…

会いに行かないのかと
聞いても…

『ああ』とだけ答えた

寂しいのは分かるけど

もう二度と
会えないかもしれないのに

そう思ってたら
家のチャイムが鳴り

まさお君が
お別れに
家に来てくれたのでした

二言三言
言葉を交わしてから
まさお君は帰って行きました

見送りに行かなくていいの？

息子は
泣きたいほどの
心境だったことでしょう

大切な友を失うことの
切なさと寂しさ

それを
今思い返したら
泣けてくるのです

心の弱い息子にとって
まさお君は
支えだったかもしれません…

その後
同じ団地に住んでた
ブラジルの方から聞いた
衝撃的なお話し…

まさお君の
お母さんは…
ブラジルに帰ってから

灯油をかぶり
自死したと
教えてくれた…

まさお君
元気で生きてくれてるかな？
　　あの優しい少年が
この空の下で
　　笑って生きていることを
祈りたいです

まさお君にとって
　日本での楽しい
　　思い出は
息子と遊んだこと

そうであって欲しい

息子との思い出を
忘れないでね…