人とは少し違うかもしれない、私の仕事
何から書こうかと考えたときに、まずはやはり仕事について書きたいと思った。私は旅行や音楽、美術、建築なども好きなので今後少しずつそういった話題もここに残していきたいと思っているけれど、私にとって仕事とは人生を楽しむための最も重要な要素の一つといっても過言ではないから、ここから始めることにした。でもそんな私の仕事は、少し想像しづらいものかもしれない。
2022年、私は新卒から9年間勤めた会社を辞めて新しい会社に入った。前の会社はオフィス機器のメーカーで、私は技術職として働いていた。今はゲーム機のメーカーで働いている。仕事の内容はそれぞれ少しずつ異なっているけれど、いずれも”環境に関わる法規制の遵守”に対する仕事だ。
環境に関する法規制・・・と言っても具体的にどういうものか思いつく人はあまりいないと思う。最近はSDGsなどでかなり馴染みが出てきたが、いわゆる「地球の環境を守ろう!」といった話でよく出てくる、省エネ目標やリサイクルの推進や有害化学物質の使用制限などが国ごとに法律化されているのだ。製品を海外で販売する場合、販売先の国の法律に製品が準拠していないと法律違反になってしまうので、一つ一つきちんと確認する必要がある。
そういう仕事っておもしろいの?と思う人は多いと思う。新しく何かを作り出すわけではなく、人が作ったルールに則っているかチェックするだけじゃないか、と。たしかに法規制遵守の仕事やそれを含めた品質保証という仕事の類はやりがいを見つけるのが難しいのかもしれない、と前から思ってきた。できていて当たり前。少しでもできていないことがあった場合は、製品だけでなく会社全体までもがマイナスに評価されてしまう。結構専門的な知識が必要だったり重要だったりするのに、地味で知名度もあまりないような。実際多くの企業では昔は設計部門にいた、という年配の方々の第2、第3の異動先であったりして、「若い人材がいない」という声は品質保証系の部門ではよく聞く。メジャーでも花形でもないのかもしれない。
そんな中、なぜ私が新卒から今までこの仕事を続けられてきたのか?この記事に書くくらいには面白いと思っているのか?というと、法規制対応の仕事は意外と奥が深いからだと思っている。
まずは関係者が意外と多い。法規制の対応は自分たちだけで完結することはほぼないので、メーカーの場合では設計部門や工場、サービス部門、販売部門などとも日常的にやり取りがある。色々な人と知り合え、それぞれの仕事を知ることができることは間接部門ならではの面白さだ感じている。
そして新しい法規制が制定される際のロビイング(ロビー活動)という仕事もある。法律などを作っている政府や国際機関に対して自分たちが不利にならないように働きかける活動である。政治活動の一種であるので堅苦しいイメージとか、逆に人を利用するというようなイメージも当初私のイメージにはあったが、実際はそうでもなくて、相手の立場を考えて信頼関係を築くことが大事で、その点においては他の仕事と共通していると考えている。
さらに、前職で私は国際標準化という仕事も行っていた。これについてはぜひ色々な人に知ってもらいたいので、のちのち記事にしたいと考えている。
法規制対応は法務ではない。しかし色々な国の法律の立て付けであったり政治的な背景を知っている必要があるので、専門家までは行かなくとも法律の知識は必要になる。さらに法律にバカ正直に従うだけではお金ばかりかかってビジネスにならないので、ビジネスと法規制遵守を両立させる(むしろうまく使ってビジネスに役立てる)ための経営的な側面もある。そして何よりも、法規制の内容は化学物質などの理系分野なので理系知識も必要となる。そんな幅広さを面白いと感じているから、続けたいと思えているのだろう。
「どんな仕事をしているの?」と聞かれたときに、「看護師です」とか「教師です」とか「プログラマーです」みたいに一言で答えられて、さらにそれが多くの人にピンときてもらえるような仕事ではないことに悔しさを感じたり悩んだりしたこともあったが、こんな仕事もあるんだ、意外と面白いところもあるんだな、と少しでも思ってもらえたら嬉しいなと思う。