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昭和ライダーエレジー5

ヤマハGT50か?ホンダXE50か?
悩んでる時点で俺は原付バイクで
日本一周を目指すのは無理かも
しれないと思えた日


※このお話は俺が高校生だった頃、1977年
(昭和52年頃)の物語ですが、フィクションの
為、登場する人物、団体等は実在するものと
一切関係ありません。

第五話

誕生日が一番遅かったカズキンも免許を取り
仲間全員がライセンス保持者になった。
そしてヤマハのRD50というバイクを購入。
エンジンスペックはヒデミやマサやんの
MR50と同じで、ロードとトレールの違い。
そういえば俺たちを含め、周りではスズキに
乗ってるヤツは少なかったな。
元々小排気量が得意じゃなかったのかも知れない。それはカワサキにも言えたか……。
中型免許の先輩とかはGT380とかCB360に
乗ってたな。
限定解除をしたら、そりゃあもう憧れの
「750ライダー」CB750か地元関西が誇る
漢カワサキのZⅡの二強の争い。
少し根性のある奴がKAWASAKIマッハに
乗ってたなぁ〜。
何せ止まらない!曲がらない!雨に弱い!
なぜか3気筒の真ん中が死んじゃうし……。
でも手がかかる子ほどカワイイって言うネ。

トモは当初ヤマハのTY50というのを買った。
知ってる人や憶えてる人はもういないんじゃ
ないかな?
トライアル車なんだわ、TYって。
でも50ccの馬力でトライアルなんて無理!
すぐミニトレに買い替えた。

で、俺なんだ。
俺は前年の9月だったんだけど、
2月にカズキンが買った時にもまだ何にするか
悩んでいた。
皆がバイクに乗ってる時に持ってないお前は
どうしてたのかって?
センパイのひとりが念願のZⅡ(俺ら関西では
RSと呼んでたな)を手に入れたので、
パッソルをお下がりしてもらってた。
膝を揃えて乗れる(女性がスカートでも楽に
乗れる)よう作られた。
これが結構売れたんだ。ヤンキー達に……?。
現代のスクーターの原点と思う。
などと説明しながらも迷っている。
無難に皆と同じよう、ミニトレにするか、
タイトルにもなっているホンダXE50か、
はたまたダックスにするか?
ミニトレは2ストロークのリターン5速。
かたやXEは4ストローク、リターン4速。
コスト面で言うと、エンジンオイルを買わないで済むXEなんだけどね。
自分の中で、この後ステップアップして
ZⅡやカタナ(そうだわ、スズキはデカい排気量に定評があって、その血がGSXやハヤブサに
繋がっていくんだろうな。GAGシリーズは
面白かったけど、カタナの250ccは認めん!)
に乗るつもりなのかな………?
乗る気なら原付は通過点、はよ決めよ、俺!
しかし、ある思いもあるしなぁ……。

悩んでる理由のもう一つが、
俺の高校の同級生で中型免許に受かったのが
二人いて、共にCB400通称ヨンフォアを買うので、乗ってた原付を安く譲ってくれると
言うんだ。それがミニトレとXE。
新車で買うほどの財力が無かった俺には
二人の申し出が天の声に聞こえた。
それで俺は二人には正直に話したんだ。
「なぁ、辻󠄀、前田。めちゃめちゃ自分勝手な話やと思うんやけど、まだどっちにするか
ハッキリとは決めかねてんねん。
それで、こっからはお願いなんやけど、
辻󠄀のミニトレを一ヶ月、前田のXEを一ヶ月、
お試しで乗ってから決めるって事で
ええかな?
それほど2台ともええバイクやさかい、簡単に決めるのは苦労するわ、頼む!」
俺は必死で懇願した。
辻󠄀はヨンフォアを手に入れる余裕からか
「俺は全然かまへんけどな」
「俺もええよ!ゆっくり決めたらええやん」
前田も中免保持者の貫禄。

というわけで、持つべきものは友だと
改めて感激した勢いで二人をハグしようと
思ったが、何せここは日本の片田舎。
情報の伝達スピードはあなた方が思っているよりも遥かに早い。
例えば、村の外れで誰それが付き合ってるという話が出ると、反対側ではもう結婚式は
いついつだ!と発展しているほどだから、
そんな中で男同士ハグしている姿を見られた日にゃ………嗚呼〜怖い!

などと言ってる内、辻󠄀のミニトレを引き取りに向かう日が来た。

「辻󠄀ィ〜、引き取りに来たで!」
「お〜スギケン。待っとったで!早速やけど
裏庭に行こか!」
田舎の農家によくあるお城みたいな家で、
何坪あるのか分からないぐらいデカい敷地の
裏庭にガレージがあった。
辻󠄀の後に続いてガレージに入り、そこで見たものに俺は言葉が詰まってしまった。
そこには間違いなくミニトレがあった。
そのミニトレのハンドルたるや………。

驚異のVハン!正にVの字!
                 つづく    

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