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傑作が企画を超えるとき

〈SungerBook-舌鼓13〉


─ 新星、福留光帆との遭遇


「E.T.としての福留光帆」を投稿してから7日過ぎましたが、記事の題材とした二つの配信動画の視聴回数は、

①前回投稿日現在 177万回→
    今回投稿日現在 196万回
②前回投稿日現在 298万回→
    今回投稿日現在 344万回

と、驚くような回数の伸びとなっています。私自身いまだに飽きもせずアクセスしていますし、寄せられているコメントを読むと、この現象は私だけではないことがわかっています。一度観た人は、何回となく観てしまっているようなのです。

爆発的再生回数の不思議

しかし、なぜこれほどまでに観てしまうのでしょう。今回は、この観点からこれらの動画について、分析してみようとしています。対象とする動画はNOBROCK TVより
①アルコ&ピース VS 福留光帆編
②トンツカタン森本 VS 福留光帆編
この二つです。

自分が、過去にこんな経験があったかを振り返ってみると、すぐ浮かんだのはピコ太郎のPPAPです。この奇抜な音楽に合わせたダンスとコメントは、割合飽きるのは早かったように思います。子供じみていてシンプルで、それで何十回までは観ていないような気がします。一気に世界に拡散したのはご存じの通りです。

では、他には何かなかったかなと思うに、ありました。それは音楽です。昔聞いた曲から最近のものまで、それこそ何回も何回も聞いています。昔のものはレコードジャケットのビジュアルだけのスタティックな画面ですが、コンサートでもスタジオのものでも、それこそ動画はお気に入りの歌手の表情やダンスも堪能できるとあって、飽きるまで続きます。何十回と続いて知らぬまに観なくなって
飽きたんだな、と気がつくようなそんな離れ方です。意識的に「飽き」を遅延させるべく、無意識に繰り返すのではなく、大事に大事にクリックするようにもなります。

「推しの舟券持ち歩いています!」

くだんの動画で福留光帆嬢に出会って、この動画に捕まってしまっているわけですが、いつになったら視聴をやめるのだろうと考えるに、これは飽きがくるまで続くのだろうと、思い至っているところです。この動画には、反復視聴を促す不思議な魅力、もっと言えば中毒性があります。

反芻、玩味をもたらすもの

要はおもしろいから引き込まれているわけですが、少し思いをめぐらすと、脳科学者中野信子先生が言われるセロトニンが出ているのかもしれません。つまり私は「しあわせホルモン」をもらっているのかもしれないと気がつけば、腑におちるような気がします。アルコ&ピースやトンツカタン森本がしあわせ論を語っているわけではなく、彼らが福留嬢とで繰り出すお笑いがセロトニンの分泌に作用しているのでは、ということです。そう思ってみれば、自分が何度でも引き込まれてしまうのもわかります。だいすきな歌手の歌う旋律にしびれ、ハッと斬新な振付けに魅了される、そんなことと同じ効果が自分にもたらされているのでしょう。

私は、元AKB二十歳の福留嬢にぞっこん、そんなことではありません。ここは、可愛らしい外見にほだされずに、じっくり観察すべきところかもしれません。

単純な「ドッキリ」にあらず

この動画は佐久間宣行プロデューサーが仕掛人です。
①と②の動画について繰り返すと、
①はアルコ&ピースの平子と酒井に対して福留光帆が登場します。
②はトンツカタンの森本に対して、福留光帆という顔合わせです。

「これ、ニートの答えじゃねえじゃん!」

まず①はゲスト的扱いの福留にも、迎え撃つアルピーにも、企画内容は知らされていない中で、収録前、事前打合せの感じで動画は進行していきます。正確に言うと、アルピーには詳しく説明する建前の筋があり、裏の説明は為されません。つまり、ドッキリという仕掛けです。福留に対しても事前の説明はないようで、彼女に対してもドッキリとして、進行していきます。

この演出を視聴者がおもしろさをわかるには、ドッキリを仕掛けている佐久間P.D.の目線に立つ必要があり、そこはP.D.のコメントが随時入ってきます。つまり、アルピーが仕掛けられていることを知らずに応対していくおかしさを、P.D.と視聴者とで共有していきます。

そもそも平子はP.D. による裏からの大喜利回答をもらって答えるつもりでいるのですが、それが聞こえない状況が作られます。そこがドッキリの核となります。つまり、平子が大喜利のお題に対して良い答えをスムーズに出せないという環境になるわけです。平子の焦りがもろだしになってしまい、そこが笑えます。

やり取りがあって、こまった平子は福留にお題を振るのですが、そこで出てくる福留の答えが、秀逸なのです。平子は思わずニンマリ。これを見ている佐久間は、大笑いします。この笑いは、アルピーには聞こえていません。酒井は何が起きたんだという感じで、キョトンとした表情です。

「さあ大喜利始めます」という感じにはならずに、でも福留へのお題は何回か出され続け、彼女は見事に切り返していきます。この時のレスポンスと回答の驚くような新鮮さ、表情、話しぶり、それ対するアルピーのリアクションが彼女の回答の魅力にやられてしまっています。その呆気にとられている顔つき、さらにそのどちらをも裏方として視聴している佐久間P.D.の大笑い。私ら視聴者は佐久間と立場を共有して堪能していきます。

要は、お笑い芸人としてのアルピーが二ートの二十歳に、大喜利で負かされていく展開が形成されます。最後、佐久間は出てきて、アルピーにも福留にも、ドッキリであることをバラします。

何がドッキリ?

番組の企画としては、佐久間がある程度福留のセンスを聞いていたとしても(そうでなければ企画は作れない)、回答のヒットを確信はしていないと思います。そこを前提に、アルピーがhome5Gを使いだしたら、福留にとってのドッキリになると構成されたのでしょう。もう一つはアルピーにとって、home5Gを準備されていないことがドッキリになります。テキパキと名回答を実現するhome5G(裏方P.D.から耳経由で伝達されるコメント)が届かない、その平子の狼狽も見ものです。

しかし、核心的ドッキリは福留のレスポンスとその回答の質です。これは、佐久間P.D.やアルピーのリアクションに表れています。想定外のできであり、おもしろさだったのです。

「もう、震えましたよ!」

森本は期せずしてピエロ役に

もう一つの森本の回については、福留嬢のアルピーとの回を通じて逸材期待が見込まれ、それを確かめるテストとして企画されます。
このことは、福留には知らされず、森本には元AKBのニートがお相手として事実が知らされます。ニートを上回る大喜利回答を出すことが森本の役割として期待が与えられるわけです。

この回は、佐久間とアルピーの酒井が裏方観戦者として登場し、リアルタイムの反応は福留と森本には知らされずに、大喜利アマとプロとの、二人の応戦を視聴者とともに見物、笑ったり感心したり、ぶっ飛んだりもします。

大喜利のお題が森本から出されるたびに、福留のキレのある回答が出てき、佐久間と酒井は驚き、感心し、大笑いします。一方森本は、福留のレスポンスぶりに圧倒され、「ムリ、何も浮かばない」と脱帽します。

福留とのやりとりが始まる前に、森本は佐久間に対して、「森本だけがおもしろいで終わっちゃうんじゃないの」と呟きます。結果的にはそれは達成されるのですが、お笑いのプロ森本がアマ福留をやり込めるという構図ではなく、その逆転が起きるおもしろさが味わいどころです。私は、第一発目のお題のやりとりで、森本の判断があったと見ています。つまり、彼は自分をピエロにする方向での笑いに切り替えたのではないか、ということです。私はここに芸人森本の勘のよさを感じます。したがって、別の意味で「森本だけがおもしろいで終わっちゃうんじゃないの」になったわけでもあります。

二つの動画について、概略をスケッチしてみましたが、おもしろさの核心部分は視聴して頂くしかありません。一度観てしまったら、きっとトリコになることでしょう。

E.T.だからできる切り返し

前回「E.T.としての福留光帆」を投稿しましたが、彼女のお題への回答は人間技を超えています。そこがExtra Terrestrialたる由縁です。このことが一番のドッキリであり、佐久間宣行の思惑を超えてしまっている部分かと思います。こういうことは、なかなかないことです。

福留の人間離れした魅力を感じて頂くために、二つの動画で出される大喜利のお題を確認してみましょう。

①アルピーの回より
・池の水抜いてみた、みたいなクソ番組のタイトルとは?
・学校にある怖いチョークどんなチョーク?
・このハゲカッコいいな、なぜそう思った?
・こんなサッカーいやだ、どんなサッカー?
・こんな牛乳いやだ、どんな牛乳?
・このハゲカッコいいな、なぜそう思った?

②森本の回より
・このゾンビもてようとしてるな、なぜそう思った?
・バカとブスこそ東大へ行けみたいなこと、言ってみて!
・こんなコンビニいやだ、どんなコンビニ?
・誰もクリックしなかった芸能ニュースのタイトルとは?

この記事で答えは書きませんが、その回答の早さと、意表をつくセンスが絶妙です。そのおもしろさを分析してみると、福留光帆というキャラクターから生じているものが大きいと思います。彼女の知識、感性、年齢、女性、ある種の関西人気質、男性性、言語感覚などがもたらしているように見えます。滝沢カレンや渋谷凪咲とは違う質です。

「情熱はあるけど、勝率はない。」

私が魅力を感じるのは、彼女は自分のおもしろさを十分に自覚していないように見える初々しさがあります。自己記事の自家解説になって恐縮ですが、前回「E.T.としての福留光帆」で言いたかったのはこの部分です。才能ある人がそこにまだ無自覚でいる一時的な状態 、それをE. T. 性として私は見ているのです。Excellent Talentをまだ自覚していない段階、すなわちこれをE.T.(Extra Terrestrial)と呼びたいのです。

これは、小説家など才能ある新人にも見られますが、このキャラからくる才能をどれだけ方法として意識化できるか、そこがその後の大成の鍵になってくるのではないかと思います。キャラ頼りで限界がくる前に気がつけるかということです。彼女が即答で返せるのも
自らの知識、経験知をベースとしているからであり、方法意識はなく無自覚の才能というべきでしょう。

彼女の回答を見るに、結構多彩な才能の見え隠れがあり、それがどれだけのものかは未知数です。フレーズに対句を使い回したり、語彙のチョイスなど、どれだけおじいちゃん、おとうさんの文学的影響があるのか、それも、今後の楽しみです。

演者としての佐久間P. D.  

この動画の構成はドッキリを核としています。裏方としてのP.D.のコメントや演者たちに対する反応まで公開してしまうのは、 そうしないとドッキリのおもしろさがわからないからです。つまり、だまされていることをしらない演者たちの姿を笑うという仕掛けです。

今をときめいているノブロックTV 

佐久間宣行という方は、お笑いのセンスがあるようで、敏感に反応します。よく笑います。実は、視聴者が演者たちの動きと、P. D.
の反応を観ているということは、佐久間の感性に巻き込まれている側面があります。彼の敏感な笑いの反応が、視聴者への解説機能をもってしまうのです。おもしろい!を気づかせるとともに増幅する効果につながります。  
この機能の部分は、かなり意識しているのかもしれません。

これは持論なのですが、私はプロ野球のおもしろさは解説者しだいとさえ思っています。
野村克也の解説によって、どれだけ野球がおもしろくなったか。監督の采配の凄さは、彼の解説なしには知りようもなかったかもしれません。佐久間P.D.の裏方のまま番組内登場によるリアクションは、視聴者に笑いどころを敏感に教えてくれるのです。彼が、ところどころコメントをはさみますが、これもかなり効果的なスパイスになっています。いわゆる狂言まわし役といったところでしょう。

スター誕生に遭遇している!?

この2本の動画を大喜利番組として見ると、他とは違う明確な特徴があります。それはIPPONグランプリの競技性はないし、また
例えば渋谷凪咲を数人の芸人が囲んで大喜利するようなそんな構成とも違います。つまり
 一編の簡潔したストーリーとして作られています。演者登場から始まり、MC役とゲスト役とのやりとりがあり、最後裏方P. D.が出てきてFINと流れが構成されているのです。ここも、何度も繰り返し観てしまう要因となっています。大喜利そのもの以外の、フリートークもですが、周辺とのやりとりも思わぬ、笑いのアクシデントを作っています。

この動画に寄せられるコメントを読んでいると、みんなが福留光帆に魅せられていることがわかります。彼女自身自らの才能を自覚しつつあるところでしょう。そんなタレントを掬い上げた佐久間宣行氏の才能ではあるものの、見いだされた福留光帆嬢を開花させ、今視聴者は新たなスター誕生に立ち会っているのかもしれません。★

関連記事としてご参照ください。

余談
アルピーの回に関して番組中のhome5Gの広告、CMとしての使い方ですが、今やhome5Gがなければ芸人としてやっていけない、ことが暗に表現されています。そんなに5Gが
凄いのかというと、そんなことはないと思っています。4Gではなく5Gゆえに凄いということなら、そのスピードの表現にまで至ってはいません(福留の勝ち)。NTT docomoさんは、その機能というよりイメージを伝えればいいと人気番組をスポンサードしたのでしょう。
本記事の大前提は、演者がP. D. の指示を聴覚経由で入力するということで、そこに5Gが介在する認識です。 しかし、私はアルピーの耳を注視してもそれを明確には確認できていません。
つまり、聴覚経由でない裏方の伝達方法があるかもしれない、と疑ってもいるのです。言ってみればアルピーの平子が、ドッキリにかかった演技をしていた、という見立てです。
しかし、これではhome5Gの機能が不要になることなので、広告としては使われない構成になるでしょう。
実は、どうやって平子に裏から伝達するか、
docomo SHOPで聞いてみましたが、気づきにくいイヤホンにまで話はいくこともなく、台本があるのだろう、の一点張りの応対でした。ここは、私の記事の前提に関わる部分なので、放置できないポイントと思って気にしていたわけです。
記事の投稿にまで踏みきった理解としては、
耳穴に入れるタイプではなく、耳裏に付けるだけで言語が伝わるものがあるのだろう、と考えています。そう思ってみると、平子の首うしろにうっすらコードが見えたような気がしています。骨伝導イヤホン???
(誰かわかる方教えて)

NTT docomoへの提案。home5Gの機能訴求をするには、アルピーではなく、福留光帆さんを採用すべきです。キレッキレッの回答した後、彼女の耳裏の骨伝導イヤーカフをアップで映しだせば、15秒CMのできあがりです。






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