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おじいちゃんの事

SNSを見ているとスターバックスの記事が必ず目に入る。
新しいフラペチーノが出れば必ずニュースになるし売り切れたグッズが転売されていたりして話題には事欠かない。
値段も決して安くは無いので専業主婦の今はもちろんの事、兼業主婦であった時も友人と半年に一回行く程度であった。

だが数年前までは月に一回スタバを楽しんでいた。なぜならおじいちゃんに奢ってもらっていたからである。
(アラフォーの女が祖父ではなくおじいちゃんと呼ぶのは学が無さすぎるとは百も承知だがしばらくおじいちゃん呼びにお付き合い頂きたい。)

おじいちゃんは数年前に亡くなった。ネオン職人でアルコールには弱く、予科練時代を語る事と時代小説が好きだった。私が物心付いた時から財布は持たない裸銭スタイル。お釣りの五百円玉を貯めて私と弟に数千円ずつくれていた。
こちらもお礼にと肩を揉んだりするのだが強要された事は無く、金は出しても口は出さない。を地で行く昭和一桁生まれの寡黙な男だった。

おじいちゃんは身なりこそきちんとしていたが若者文化に傾倒していた訳では無く(ケータイ持っていなかった)日課の散歩で行けるショッピングモールにスタバが入っていた為利用するようになったようだった。
スタバのスタッフさん達は皆優しく、喫茶店での注文文句そのまま「ホット一つ」としか言わなかったであろう昭和一桁生まれにサイズや砂糖の場所まで優しく教えてくれたのだと思う。
半年に一回の友人とのスタバの際、見慣れた後ろ姿に声を掛けるとおじいちゃんだった事もあった。


三十も過ぎた孫に月一で好きな物を頼ませてくれて、ひ孫はまだか等は一切言わずおじいちゃんとしては申し分のない存在だった。
寡黙は言い換えれば何を考えているか分からない。職人気質は女性の求める細やかな気遣いとは無縁。過去には職人としての独立問題が頓挫したりと祖母は大変な苦労をしたらしい。
私自身が妻になりおじいちゃんの夫としての部分には疑問を抱く部分も多い。
おじいちゃん自身も月に一度スタバの為が透けて見える孫娘より、自らと同じ海上自衛隊(予科練は海軍の管轄だったらしい)に進み、訓練時代を楽しげに聞いてくれる孫息子の方が可愛かったに違いない。

時が流れ、何かの弾みで自分のお金でスタバに行く時がある。会計の高さに愕然とし、月に一度の恵まれていた状況を懐かしみながら店内の片隅に見慣れた後ろ姿がないか、どうしても探してしまうのだった。

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