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生て遺す 第4節
状況把握と言っても冬樹のそれは先見の明に近い。
授業中に後ろの浅野さんは後ろの席の佐野君に回す手紙を書いている・2個左隣の北山さんは教科書に落書きしている・1番後ろ窓際の竹内君は下を向いて今にも眠るだろう、そして約5分後には、現在授業を担当する丹野先生が竹内君の居眠りを嗜めるだろう。
冬樹の特技の真髄はこれを全て同時に把握している事である、そして同時に嫌な先見もある。今正に、斜め後ろの席、佐藤君が自分に投げ付ける消しゴムのカスを量産している・・・
冬樹がこの特技を身に付けた経緯簡単だ、他者の感情を読めるのだから自ずと回避行動を取る為に細かな事に目が行く様になる。
冬樹が消しゴムや教科書、鉛筆や大凡机から飛びしたくてウズウズしいる物達を落下途中にキャッチして元の位置に戻した回数は自分と他人を合わせて100回や200回では済ま無い、剣術をしているから動体視力と俊敏性に優れていると両親は推察していたが実は落ちる事を予め知っていた事に他なら無い。
2つの特技を効果的に利用できれば冬樹の学生生活は薔薇色だったが、そもそも会得理由がネガティブすぎる・・・
そんな冬樹の学校生活が引き篭もりに変わって小学5年の2学期頃に突然担任教師から自宅に連絡が来た、「今すぐ学校に来ないなら放課後、自宅に行き俺はお前を怒る事になる」と言った内容だっただろうか・・・
顔面蒼白になり親が仕事で居ない自宅に1人、相談する相手も居ない冬樹は渋々登校する準備を始めた。
第5節に続く