白と黒 最終話
〜空港内〜
俺と先輩は海外へ逃亡を計ろうとする安村を見つけるべく、羽田空港に来ていた…
樹「へぃくしゅんッ!」
祐介「先輩、前から気になってたんですが…そのくしゃみ何とかならないんですか? 」
樹「誰かが俺の噂をしとるんかもしれんな…」
祐介「またまたぁ…先輩の噂だからきっと悪い噂ですねッwww」
樹「否定はせんけど…言うに事欠いて、自信満々に言われるんも癪やなぁ…」
祐介「冗談は置いておいて…ポイントCにそれらしき人影は見当たりません。」
樹「変装してるかも分からんけん、ように見とけよ…奴は戦闘のプロやけんな…見つけても手は出すなよ?」
祐介「分かりました。それよりも…ゆり達の方は大丈夫ですかね?」
樹「一応、アイツらにゃ釘は刺してるんやろ?勝手に突っ走るなって」
祐介「ええ、一応は伝えてます。」
樹「なら、大丈夫や。あくまで俺らは奴を捕まえる事が任務や。こちらも手を打っとる。
意地でも(ゼロ)がアイツを消す前に確保するで!ええな?お前ら」
祐介「はい」
理樹〔分かりました。〕
ゆり〔了解です。〕
太一〔おうッ〕
樹「よっしゃ…ミッションスタートッ」
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〜空港内中央ロビ〜
智樹「渉、奴を見つけたで。どないする?」
渉〔とりあえず泳がせよう。俺らの他にも奴らを狙っとる連中がちらほら居てるしな。〕
智樹「了解。ワシら〔ゼロ〕の他に、噂の銃隊諜報課と…ありゃアメリカの(NSA)にまで目をつけられてんぜ。」
渉〔国家安全保障局まで出て来とるか…ん?何で居るって知ってるんや?〕
智樹「アイツはワシらと同じ何人も人を消して来た殺しの目をしとるわ。」
渉〔ちゅうことは…松原か〕
智樹「何や?気付いとったんか?」
渉〔薄々じゃけど、6課に潜入した時に俺らと同じ匂いがしたけぇ…ちょいと探ってみたんよ。そしたら、やっぱNSAのオシントや…〕
智樹「オシント…CIAのパラミリ並に厄介やなぁ…恐らくやけど奴は元SEALDs出身や」
渉〔俺もそう思う…俺らが簡単に敵う相手じゃないんは確かじゃ。とりあえず、俺らは仕事をきっちり完遂するだけや。〕
智樹「了解」
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〜同空港内〜
柊甫「相変わらずしつこい連中やな。」
元情報6課の高崎、仲村、直枝の姿を数分前に確認したが見覚えのある奴も同時に確認できた
樹と太一だ…奴らは確か
警視庁警備部銃器対策部隊所属だった筈だが…
直枝達と何か関係があるかもしれんな。
しかし…よく見れば日本人は平和ボケした奴らばっかりだな。今この時にも殺されそうな状況下だと言うのに揃いも揃って腑抜けた奴らだ。
柊甫「あれだけ居た仲間も誰一人として私の前から居なくなった…飯山に関しては(ゼロ)もしくは海外の諜報機関の仕業かもしれんな…しかし、松原に裏切られるとは私もまだまだ甘ちゃんかもしれんな…」
現に松原は、6課と私の組織〔ウィザード〕を裏切っている。捜査一課時代から優秀で信頼していたが信用はしてなかった。
その理由は簡単だ、人はいとも簡単に裏切るからだ…物心ついた時から私はいつも1人だった
シューホー・チェン・ヤスムラング
本籍はアフガニスタン民主共和国だ。生まれた時から紛争と戦争の繰り返しだった。5歳で既に少年兵として国内紛争に参加していた。その後、アフガニスタン紛争は独裁政権が崩れ民主政権となった。私は国を追われる身となった。つまり祖国を追われ国際テロリストとして世界中でお尋ね者になった訳だ。
柊甫「そろそろ潮時かもしれんな。ここらでパァっと1発花火を打ち上げとくか。」ポチッ
突如、背後で爆発音が響く…
男子トイレのゴミ箱に仕掛けておいた小型爆弾が爆発したのだ…
「キャーーーーッ」
周囲に悲鳴が轟く。
柊甫「せいぜい楽しませろよ」ニヤリ
その時…
???「動くなッ」
柊甫「やっと来たか。直枝2尉…いや、直枝巡査長と言うべきかな…」
理樹「ポッケの中の物を出してください。少しでも変な動きをすれば撃ちますよ」
柊甫「おぅおぅ怖いねぇ」
理樹「揶揄わないで下さい…本当に撃ちますよ。ポケットの中の物を出して下さい…」
柊甫「君に私が撃てるかな?」
理樹「馬鹿にしてッ…えッ?」
次の瞬間、何が起きたか分からなかった…
撃とうと引き金に指をかけた時には安村は目の前に居なかった。
柊甫「獲物を前に舌舐めずりをするのは3流のする事だ。一流てのはこうするんだッ」
理樹「がはッ…」
柊甫「直枝くん、私と君じゃ踏んできた場数が違うんだよ…分かるか?」
祐介「直枝ッ!今すぐそいつから離れろッ」
ゆり「援護しますッ!」タァンッタァンッ
理樹「り、了解ッ」
僕がピンチに陥ってるのに気がついた、高崎1尉と仲村さんが瞬時に戦闘態勢にはいる。
祐介「安村ッ!銃を降ろせッ」
柊甫「かつての上司を呼び捨てとは…偉くなったもんだな…高崎警部補」
祐介「貴様の生殺与奪は俺が握っているッ」
柊甫「そうだな。だが、君らの生殺与奪は私が握ってるんだよ…これが何か分かるか?」
安村はポッケの中からリモコンのような物を取り出しスイッチを押そうとした。
ゆり「辞めなさいッ!そのリモコンを床に置いて、投降しなさい!」
祐介「眉間を狙えば反射は起きない…」
柊甫「外せば、私と一緒にあの世行きだよ。」
祐介「外さなければ良いんだな…」
柊甫「狙撃の腕があるのに何故、SATからの誘いを断り続ける?高崎警部補」
祐介「うるさいッ お前には関係ないッ」
柊甫「あの事が負い目になってるのかな?」
祐介「黙れッ」
柊甫「そう、カッカするなよ」
その時…
樹〔お前ら、よく持ち堪えた。たった今S班(爆発物処理班)の消毒作業が終了した!全ての爆薬を解除ッ〕ザザッ
祐介「了解ッ ありがとうございます!」
樹〔ゼロ〕のお陰で爆薬を発見して早急に処理する事ができたわ…
お前さんのかつての上司に礼を言うんだな。〕
祐介「分かりました。ふぅ…」
柊甫「ふっ…遂に諦めが着いたか」
祐介「逆だ…たった今、設置された全ての爆薬を解除した。貴様の計画は水の泡だ」
柊甫「そうか…だからと言ってどうという事は無いがな…」スッ
タァンッ タァンッ
祐介「ぐっッ…」
ゆり「高崎1尉ッ」
柊甫「言った筈や…獲物を前にして舌舐めずりをするのは三流のする事だと。」
理樹「なんて事を…あなたは本当に人間かッ!」
祐介「大丈夫だ…それよりお前ら…耳元で叫ぶな…」
ゆり「すいません…」
理樹「しかしッ」
柊甫「致命傷は外している。だが、早く手当てしないと手遅れになるぞ」
理樹「くッ…仲村さん、これで圧迫止血してッ!止血する時は心臓より高い位置で」ビリッ
ゆり「は、はいッ」
僕は仲村さんに服を破って布切れを渡し…安村と向き合う。
理樹「貴方だけは許さない…僕の手で捕まえてやりますよ…」
柊甫「君に俺を捕まえれるかな?」
???「お前だけじゃ無理だ、俺も加勢する」
ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
柊甫「お前は…」
声がした方に振り向くと…
理樹「玄武ッ!」
玄武「待たせたな…理樹」
理樹「玄武ッ…今までどこで何をしてたんだ!?心配したんだよッ!」
久しぶりに会う親友に、僕は質問攻めをする。
玄武「すまない。それは…」
柊甫「松原くん…本当の事を言ってやれよ。本当はアメリカのスパイだってな。」
玄武「…」
理樹「アメリカのスパイ?どういう事!?」
玄武「それについては…コイツを捕らえてから教えてやる。とりあえず…2人でかかるぞッ」
理樹「う、うんッ!」
柊甫「来いッ2人とも…特別セミナー(戦闘訓練)の時間だッ!」
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〜別ポイント〜
太一「何かバトル始まってんけど どうする?」
樹〔直枝と玄武のコンビやろ?なら、心配無いやろ。それよりも ワンちやん(警備犬)使うて他に爆弾置いてないか調べようで〕
太一「せやな、にしても…ようここに爆弾あるって気づいたな。」
樹〔まぁな、アイツの事やけん一筋縄ではいかんやろって勘と、プラスチック製爆弾特有のオキシドールとトルニトログリセンとその他諸々の微かな臭いがしたとだけ。〕
太一「流石は、FBIのブラックリストに載るだけの事はあるな…味方やったら心強いけど…
敵やとそこら辺のテロリストより怖ぇわ。」
樹〔そないな事言うなや、太一かて長距離射撃で自衛隊や米軍をも凌駕する腕前やん。お前さんの標的にはなりたくねぇなぁ…〕
太一「にしても、爆弾解除に協力してくれた渉と小田ちゃんにも礼を言わんといけんな」
樹〔せやな、アイツら(ゼロ)のお陰で早期発見できた言うても過言ではないで。事と備じゃ喧嘩して捜索どころちゃうけんなぁ…ある意味ええ同期を持ったな俺らも。〕
太一「んだんだ、ほいじゃ俺は西側のポイントに移動するわ。」
樹〔了解 俺もこっちの爆弾解除済んだらS班連れてそっち行くわ〕
太一「頼むわ。」
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〜空港内戦闘箇所〜
柊甫「さぁ、来い。2人とも」
理樹「玄武…どうする?」
玄武「俺がアイツと1対1でやり合う、お前は援護してくれ。俺はお前の射撃の腕を信じる」
理樹「分かった。」
玄武「行くぞッ」ダッ
理樹「了解ッ」
玄武の合図と共に、闘いの火蓋が切られた。
僕は一歩身をひいてタイミングを見計らう。
しかし、2人の動きは僕が想像していたよりも遥かに早い…
安村元課長は、百戦錬磨の戦闘員と言った感じだ、動きずらい筈のスーツで軽々と玄武の攻撃を交わし、素早くカウンター攻撃に転じている
理樹「素早いッ…」
一方の玄武も、安村元課長に引けを取らない素早い動きで応戦している。
アメリカ云々と言っていたがどういう事だ…
柊甫「ふっ…まだまだ甘いな。松原、アメリカは所詮そんなもんかね。」
玄武「まだまだですよ…安村さん。あの時以来ですからね」ニヤリ
柊甫「まだまだ余裕がありそうだな。それでこそ、私の好敵手だ。」
その後、約10分間に渡り激しいバトルが続いた…玄武は何度も攻撃に出る。
しかし、安村元課長は体力を消費するどころか涼しげな顔をしている…玄武が劣勢になってきている。
僕は、素早く動く安村元課長の脚と腕に狙いを向け発泡した…
タァンッ タァンッ
柊甫「ぐはッ…ジ・エンドか…楽しかったよ。」
銃弾は脇腹と左胸付近に当たり、安村元課長はその場に倒れた…僕らはすぐさま駆け寄る。
玄武「理樹ッ!」
理樹「了解ッ!」
柊甫「なぜ…私を助ける…」
理樹「それは…」
安村元課長の問いかけに僕は戸惑う…
何故、僕らはこの人を助けるのか…
玄武「それは、アンタが俺たちの元上司だからだッ 敵でも一度は世話になったからだッ!」
玄武の言葉で胸につっかえていた物が取れたような気がした…
柊甫「そうか…良い…部下を持ったものだ…」
理樹「なぜ、このような事を?」
柊甫「さぁね…私にも…分からない…ただ…この日本という国を変えたかっ…た…」
安村元課長は静かに息を引き取った…
安らかにそしてどこか満足したような表情で天にへと召された。
テロリストと僕らの戦いは終わった…
最終的な死傷者の数
死者:75名(民間人の死者0)
✳︎ヤクザ同士の抗争での死者数
重軽傷者:160名(民間人35名)
殉職者:5名(機動隊員及び所轄警察官)
某宗教組織の地下鉄サリン事件以降戦後最大となったテロ行為は終わりを告げた。
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〜事件から数日〜
僕たちは、書類整理に追われていた。
事件が解決したからそれで終わりではなく事件後の事後処理も大事な仕事だ。
カタカタカタカタカタ
6課のフロアにキーボードを打つ音が響く。
理樹「はぁ…」
ゆり「今ので20回目ですよ直枝さん」
理樹「え…数えてたの」
祐介「そりゃこれだけ人が少なきゃ、気になるだろう。どうした?松原の事か?」
理樹「ええ…まぁ…」
ゆり「結局、松原さんは戻ってきませんでしたね。何者だったんでしょう」
理樹「僕にも分からないよ。ただ…」
ゆり・祐介「ただ…?」
2人が興味深そうに僕の顔を覗き込んでくる…
理樹「いえ、何でもありません。」
祐介「気になるじゃねぇか教えてくれよ。」
ゆり「無理強いはダメですよ高崎さん。」
理樹「秘密です」ニコ
祐介「ちぇっ、面白くねぇな」
そう言いつつもそれ以上は詮索してこない。
流石は銃器対策部隊諜報課の2人だ。
実際のところ…あの後、玄武には他言無用でと釘を刺されている。
玄武…彼は
所属は…警視庁 刑事部捜査1課巡査部長 または
防衛省 情報本部 情報6課捜査課 2等陸尉だが
実際は…アメリカ国家安全保障局 (NSA)
ヒロタケ・ヘンリー・マツバラ 大尉
NSA所属の海軍情報士官だ。彼らの主な任務は
「核戦争に備えること」だが、時として国家の安全を揺るがすテロ組織に潜入し情報収集、内部から組織を破壊することもあるらしい。
そして、玄武は
元米海軍特殊コマンドグループ…
(navy SEALDs)所属だった。
理樹「どおりで強い訳か…」ボソッ
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〜数日前〜
玄武「理樹、すまなかった。お前や皆を騙ましてしまって…」
理樹「正直、悲しいってよりも驚きの方が大きいけど…なぜ、こんな事を?」
???「それについては私の方から説明させて頂きます。」
玄武「晶か」
理樹「あなたは…?」
晶「初めまして、直枝さん…松原さんと同じNSAに所属している吉野です。」
理樹「吉野さん…」
晶「松原さんと同じくNSAの情報士官です。表向きは読売あさひ新聞の記者ですが…お陰様で情報収集するには最適な環境でした。」
理樹「あなた方は…一体何が目的なんですか?」
旭「簡単に言うならば安村を捕らえてNSA本部に連行するつもりでした…」
理樹「あの人が…その、NSAに何か追われるような事をしたんですか?」
玄武「重要機密を盗んで世界に公表しようとした。そして、それは世界の核兵器バランスを崩しかねない大層な代物だ。」
理樹「何故そんな事を…」
玄武「これは、俺の憶測だがこれを公表することにより世界の軍事バランスと核兵器バランスを崩壊させて。日本の防衛力を引き上げようと考えてたんだろう…現に、日本の政治家は自分の私利私欲の為に税金を使い国防費は雀の涙程度しかない…それに、嫌気がさしてってところじゃないかな?」
理樹「なるほど…それで世界中でお尋ね者になってまであんな事を」
玄武「まぁな…奴は…あの人は、産まれた時から争いごとの中で生きてきたからな…平和ボケした日本と言う国を目覚めさせようとしたんだろう。あくまで憶測だがな…」
晶「現代の黒船に乗ってきたペリーですね。」
玄武「そうだな。我々はこれで引き上げる。
理樹…世話になったな。」スッ
理樹「う、うん…短い間だったけど世話になった。ありがとう…」グッ
僕たちは固い握手を交わし、強く抱擁した。
晶「松原さん、そろそろ…」
玄武「分かった、先に行っててくれ晶」
晶「分かりました。」
吉野さんが見えなくなると僕は口を開いた。
理樹「ところで唯湖さんはこの事を…やっぱり知らないよね。」
玄武「当たり前だ。身内にもこの事は伝えれない。仕方ない国家の安全保障のためだからな…それよりも〔ゼロ〕から連絡は?」
理樹「無いね…あの人達のことだ上手くやったんじゃないかな。」
玄武「まさか、小田切さんが〔ゼロ〕やったとはあの現場で会うまで分からんかったよ。」
理樹「そうだね」
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〜理樹の回想〜
理樹「これで終わりか…どっと疲れた。」
玄武「俺もだ…ここまで疲れる任務は久しぶりだ。ふぅ…」
理樹「それで…安村の遺体は…」
その時…
2人の男が近づいてきた。
智樹「その件はワシらが引き受けよか。」
玄武「小田切さん!?」
理樹「どうしてここに?」
渉「お前さんらの動きをずっと見よったんよ」
玄武「という事は…あなた方が(ゼロ)…?」
智樹「そう言うことになるな、黙っとってすまんかったな理樹、そして玄武」
渉「まぁ…俺らの任務上仕方ないけぇ。」
2人「そうですか…」
智樹「可愛い教え子の為におじさん達が汚仕事を引き受けよう。こいつの遺体はワシらが回収して上手いことしとく。やから、お前らはここを去るんやで ええな?」
理樹「はい!」
玄武「分かりました。」
智樹「ほなら、元気でな。」
渉「また、いずれな…」
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理樹「小田切課長だからこそ(ゼロ)に向いてたのかもしれないね。」
玄武「そうだな。それじゃ、俺らはもう行くわ」
理樹「もう行っちゃうの?」
玄武「次の仕事があるからな。」
理樹「もう会えないのかな…」
玄武「また、いずれどこかで会えるさ。」スッ
理樹「うん、また会う日まで。」スッ
僕たちは再び強く握手を交わした。
fin…
続く…