音速のドラ猫13
〜三沢基地〜
戦技会も終わり、次女である理沙の誕生から数日が経った…とある日
理樹「ふぅ〜」
葉留佳「おっはよ〜理樹くん」
玄武「おはよッス」
理樹「あ、おはよう玄武、葉留佳さん」
葉留佳「おめでとう!女の子なんだって?」
理樹「そうそう、名前は理沙 目元とかほら沙耶に似てるでしょ?」
僕はスマホの画面を2人に見せた。
玄武「完全な親バカっぷりだな…美人になること請け合いだから俺、今から予約ね」
葉留佳「玄武くん、唯姐に言いつけてやる〜」
玄武「うっ…」
祐介「よ、何やってんだ?」
理樹「高崎1尉、おはようございます。」
祐介「おはよう理樹 女の子なんだって?
おめでとう 誕生日は違うけどウチの子と同い年だな。仲良くしてやってくれ」
理樹「はい!」
豊「理樹、可愛くなること請け合いだから俺も今から予約するぜ!」
理樹「ねぇ、君たちは事前に打ち合わせでもしてるの?ねぇ?」
玄武「さ、さぁ?」
豊「俺は知らねーなぁ」
わざとらしく口笛を吹きながらそっぽを向く豊と玄武…この2人は相変わらず…
樹「無事産まれたんやってね。おめでとう」
理樹「ありがとうございます!班長」
樹「俺は何もしとらんで?礼なら隊長や柊甫に言うたりぃな。あんじょうしてもろたけん」
理樹「はい!ありがとうございました!」
僕はもう一度頭を下げた。
祐介「そういや、先輩」
樹「んにゃ?」
祐介「聞きました?海自の護衛艦で試験運用される話を」
樹「あぁ、いずも型に蒸気カタパルトと着艦装置を付けたから試験的にウチらが乗せられるみたいで、ウチから3機 借り出される話や。」
祐介「そうだったんですか。」
樹「詳しい話は後で聞かされるやろ。」
ガチャ
柊甫「おはよう〜 皆来てる?」
全員「おはようございます。」
柊甫「樹、この資料を皆に配ってくれ」
樹「あいよ。」
班長が全員に1枚の紙を配る。
そこには…先程、班長たちが話していた事が記載されていた。
柊甫「え〜、噂に聞いた奴も居るかもだけど正式な発表が出るまでは口外しないように。
海上自衛隊の護衛艦で航空機の試験運用を行うそこで、我々114飛行隊から3機派遣されることとなった。派遣されるメンバーについては以下の通りだ。」
僕は資料に目を落とした。
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ー護衛艦〔さつま〕航空機運用試験ー
期間:令和○年 1月15日〜1月20日
場所:太平洋B海域
・詳細
第4護衛隊群 第2護衛隊 護衛艦〔さつま〕
指揮官 第2護衛隊司令
海将補 遠藤 司
派遣飛行隊司令
1等空佐 江森 茂
飛行隊長
3等空佐 熊岡 樹
人員
1等空尉 高崎 祐介
2等空尉 音無 結弦
2等空尉 直枝 理樹
2等空尉 緑川 豊
3等空尉 伊吹 風子
蒸気カタパルトの性能試験及び甲板の耐圧試験
通信装置、着艦装置の試験を行う。
海上幕僚長 海将 杉本 誠司
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樹「やっぱ俺かいな…」
祐介「相変わらず、こう言う行事ごとにはよく呼ばれますね先輩w」
結弦「俺も久しぶりに選ばれた」
風子「風子も選ばれてしまいました…」
理樹「僕もか…まぁ5日間だけだし…」
豊「理沙ちゃん産まれたばっかりで不安定な沙耶さんの側に居なくて良いのかよ?」
理樹「仕事だしね…それに、沙耶には「私のために仕事を休まないで」って言われたしね。」
豊「そうか…」
火浦「訓練は年明けの1月になる予定だ。
班長は後で俺のところへ来るように。話は以上だ。各自訓練に移ってくれ。」
全員「了解ッ」
樹「俺が?」
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〜隊長室〜
コンコン
火浦「入りたまえ。」
ガチャ
樹「班長、熊岡3佐失礼します。」
柊甫「来たか、樹」
樹「話とは何ですかな?」
火浦「君を呼んだのは他でもない、例の航空機運用試験の件についてだ。」
樹「と、言いますと?」
火浦「あそこでは言えなかったが、7割方決定の方向に話が進んでいる。」
樹「話が見えんのですが…」
火浦「運用試験とは名ばかりで後々の護衛艦空母化計画の第一段階だよ。その初代飛行隊長に
君が選ばれたのさ。」
樹「俺がですか!?」
火浦「そうだ。辞令については運用試験が終わり次第発令されるだろう。準備しておけ。」
樹「しかし、人員はどうなる?俺だけ単機で参加って事は無いやろ?」
柊甫「まぁね」
火浦「人員についてはこちらで選定する。話は以上だ戻りたまえ。」
樹「了解、失礼します。」
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〜官舎〜
樹「ふぅ…参ったな。」
女の子「どうしたの?お父さん?」
樹「お、みゆきか…何でもないで」
みゆき「お父さん…何か疲れてる。」
ガチャ
佳奈多「あ、みゆき。ここに居たの?お父さんの邪魔しちゃ駄目よ?」
樹「大丈夫やで佳奈多」
この子は俺たちの本当の子供ではない。彼女は
俺の古い友人の娘で…彼女が幼い頃に両親とは死別しておりそれ以降は俺達夫婦が引き取って育てている。今年で小学6年生だ。
みゆき「私に何か出来ることがあったらいつでも言ってね。」
ガチャ
樹「おう、ありがとう。」
佳奈多「何かあったみたいね。」
樹「みゆきか?虐められてるのか?」
佳奈多「違うわよ、樹くんの事よ」
樹「俺?そんなに分かりやすい?」
佳奈多「分かるわよ。貴方、すぐに顔に出るんだもの。それで、何があったの?」
樹「まだ決定では無いんじゃけど…空母航空隊の初代隊長に選ばれるかもしれん。」
佳奈多「それって…」
樹「佳奈多も噂で聞いたやろ?ウチの隊が護衛艦で運用試験やるって。」
佳奈多「ええ、1月中旬からだったわね。」
樹「それが終わり次第、本格的に護衛艦での運用が行われる。そこの隊長になるかもしれんって話がやな…かもしれんちゃうな…ほぼ確定みたいなもんやな…あの言い方は」
佳奈多「そう…」
樹「心配?」
佳奈多「そりゃそうでしょ…」
樹「本家からの妨害もいつ起こるか分からん。俺が居らん間に起こるんがいっちゃん調子悪いことやき…」
佳奈多「そうね…それに、最近本家の方でも黒い服を着た連中が出入りしてるらしいの」
樹「また、厄介なお客か…早めに手を打った方が良さそうやな。分かった、俺の方も話付けとくわ。」
佳奈多「いつも、ごめんね。私のせいで…」
樹「そないな事言いなや。それを承知した上で結婚したんやけん。今更、「はい、さよなら」とか言われへんやろ。やから気にするな」
佳奈多「うん、ありがとう。」
樹「さ、しゃんしゃん床につこうで。」
佳奈多「そうね。おやすみなさい。」
ガチャ
樹「うん、おやすみ。さて…」
俺はスマホでとある人物に電話をかけた。
樹「俺やけど夜遅くにすまん…実はな……」
15分くらい話しただろうか…?
樹「それで頼むわ。うん、ごめんな。
お前にしか頼めんのよ…同僚のよしみで頼むわ…ほな、失礼します。」pi
先手は打った、後は相手がどう出てくるか…
黒い服の連中…俺には身に覚えがあった。
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〜官舎〔直枝家〕〜
理沙が産まれて2週間が経った。沙耶も理沙も
無事退院し家族4人で団欒としている。
沙紀「パパ〜」
理樹「ん?どうしたの?沙紀」
沙紀「見て見て〜」
咲が一枚の紙を僕に見せてくれた。
そこには、僕達家族4人でご飯を食べている絵が描かれていた。
理樹「……」
沙紀「どーしたの?パパ、泣いてるの?」
僕の頬に涙が伝う感触があった。
沙耶「沙紀 パパはね嬉しくて泣いてるのよ。だから、いっぱいいっぱい喜ばせてあげてね?」
沙紀「うん!」
理沙「あっぶぅ…」
直枝家は今日も平和な1日です。
続く…