音速のドラ猫19

 

〜三沢基地〜

時刻は午後3時を少し回った頃だろうか…

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

基地の上空を3機のF-14DJがフライパスする
先頭に班長、右翼に結弦先輩、左翼に理樹だ。


玄武「お、帰って来たな。」

葉留佳「本当ですネ〜」

朋也「エプロンで出迎えてやるか。」

沙都子「そうですわね!」

柊甫「お、帰ってきたか。」

千景「樹くん、私を見たら驚くんじゃないかしら?ねぇ、柊甫くん」

柊甫「そうだね。まさか君がここに居るとは思わ無いだろうからね。」

葉留佳「あれれ?郡班長は熊岡3佐ともお知り合いだったんですか?」

千景「ええ、同期よ。あと、私はもう班長じゃないわよ。井ノ原さん」

葉留佳「やはは…そうでしたネ 昔の癖でつい」

千景「私がここに居るって知ったらどんな顔するかしらね」

玄武「千景…愛してるぞ。とか?」

千景「殴られたいの?松原2尉」スッ

拳を軽く上げる郡3佐…

玄武「すんません…」

柊甫「まぁまぁw」

千景「まぁ、いいわ。今後は気をつけることね」

玄武「はい…」

珍しく玄武くんが女性相手に萎縮してますネ…


キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

3佐達の機体は整備員により駐機場へ誘導され
エンジンカット(エンジン停止)される。

樹「ふぃ〜着いた着いた」

祐介「疲れましたね〜」

風子「やっと地上です…」

理樹「久しぶりの三沢だ〜」

葉留佳「お帰りなさいですヨ〜」

玄武「お帰り〜」

各機のキャノピーが開き、機体から降りてくる
全員、顔は笑ってるものの疲れている様子だ。

柊甫「お帰り、樹 運用試験任務ご苦労様。」

千景「お疲れ様。樹くん」

樹「おう。結果は上々…って、なんでここに、千景が居るん!?」

葉留佳「あ、予想通りの反応だ。」

玄武「だな。」

柊甫「言うと思ったわw」

千景「あら?聞いてないのかしら?今度、この隊の副隊長として赴任してきたのよ。」

樹「は、え?はぇ?」

柊甫「まぁ、そうなるよなぁ…」

樹は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる
状況がいまいち飲み込めてないようだ。
ちょうどその時だった…

火浦「その件については俺から説明しよう。」

樹「お疲れ様です!熊岡3佐他5名 洋上運用試験任務より只今戻りましたッ」ビシッ

飛行隊長である火浦2佐が隊舎から出てきた。

火浦「うむ、洋上運用試験任務ご苦労だった
ゲガ等は無いか?ミーシャ」ビシッ

樹「ハッ、ありません!」

火浦「詳しい話は俺の部屋でしようか。副隊長、郡3佐 君たちも来てくれ。」

柊甫「了解」

千景「了解しました。」

火浦「熊岡3佐、君も装備を下ろしたら俺の部屋に来てくれ。」

樹「分かりました。」

火浦「他の者は各自の仕事に戻ってくれ。
以上、解散ッ」

全員「了解ッ」

更衣室へ行く途中、僕は近くに居た葉留佳さんに声をかけた。

理樹「ねぇ、葉留佳さん」

葉留佳「およよ、どうしたの?理樹くん」

理樹「さっき副隊長の隣にいたのって誰?」

葉留佳「あぁ〜理樹くん達はお初にお目にかかるんでしたネ」

玄武「あの人は今度、うちの隊に副隊長として赴任してきた 郡 千景3等空佐だ。」

理樹「あれ?でも、安村2左が副隊長じゃ…」

葉留佳「実はね…火浦2左が来月で本省勤務になるらしいんですヨ。」

玄武「それで、安村2左が隊長、郡3佐が副隊長になるってわけさ」

理樹「なるほど。ん?熊岡3佐は?」

玄武「正式にゃまだ発表されてないが、今回の運用試験の結果次第で本格的に艦艇での運用が始まるらしい。それで、その派遣飛行隊長として熊岡3佐が選ばれたって訳」

理樹「そうだったんだ…」

玄武「ま、確定情報では無いから他言無用でな。恐らく8割確定だろうけど。」

理樹「分かった。」

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〜隊長室〜

火浦「改めて、任務ご苦労だった。ま、3人とも突っ立ってないで掛けてくれ。」

3人「失礼します。」

火浦「まず、状況の飲み込めてない熊岡3佐のために軽く状況を説明しよう。」

樹「お願いします。」

火浦「うむ、俺はこの隊での勤務は今月いっぱいまでとなった。来月からは女将(本省)での勤務となる。それに伴い、安村2左が隊長、本来なら君が副隊長になる筈なんだが君には別の任務が付与される予定だ。」

樹「例の派遣航空隊長の話ですか?」

火浦「そうだ。それで副隊長を新たに新規で呼ぶとなると機種転換訓練を受けさせなければならない…だからRIO限定ではあるが元F-4乗りの郡3佐を急遽、岐阜基地の飛行開発実験団
から呼びよせた。」

樹「なるほど…しかし、私が派遣飛行隊長の辞令が下るまではしばらくの間が空きますが?」

火浦「その間だけ、君に副隊長を任せるよ。郡3佐はここに来てまだ日が浅い、しばらくは君の居た配置である飛行班長を任せる。」

樹「分かりました。」

千景「了解です。」

火浦「話は以上だ。戻りたまえ」

3人「了解ッ 失礼します!」

ガチャ

〜廊下〜

樹「えらい急な話やけど。隊長は女将のどこの配置へ行く予定なん?」

柊甫「さあな、俺たちも聞かされてない。」

千景「私もよ。急に火浦さんに呼ばれて岐阜から転属になったわ。」

樹「なんやろなぁ全てが急すぎるんよなぁ」

柊甫「ま、深く考えてもしゃあない。与えられた仕事を俺達は最高のパフォーマンスで結果を出すだけや。違うか?」

樹「せやな」

千景「そうね。ところで樹くん」

樹「ん?」

千景「みゆきちゃんは元気にしてる?」

樹「元気にしとるで。今年の春から中学生やって。早いよなぁ…」

千景「ふふ、すっかりおじさんね」

柊甫「おっさんが板に付いてきたな。」

樹「るせぇ」

千景「佳奈多さんとは子供作らないの?」

樹「ん?居てるよ、お腹の中に4ヶ月 女の子なんよ。」

千景「おめでたいわね」

柊甫「やる事やってるのね…(////)」

樹「ありがとう千景、なんでお前が赤くなるんだよ柊甫」

柊甫「てへ⭐︎ペロ」

千景「キャラが崩壊してるわね…」

樹「確か三沢病院の精神科は…」

柊甫「真面目に受け取るな」

隊長室から出た俺達は娯楽室に来ていた。

〜娯楽室〜

柊甫「ところで…〔さつま〕で僚一に会ったんだって?元気にしてた?アイツ」ピッ

樹「ああ、相変わらずの生真面目君だった。」

千景「彼は確か警戒飛行隊だったわね?」プシュ

樹「うん、E-2Cの機長さんやってん。」

柊甫「同じ三沢やのに会う事無いけんなぁ…」

千景「そうね。」

樹「さて、俺も愛する嫁と娘のいるマイホーム(官舎)に帰るかねぇ。って車が無いんやった…柊甫、送ってくれ」

柊甫「無理だな。俺は今日、当直だ。」

樹「んじゃ…」

千景「私も無理よ」

樹「まだ何も言ってないやん…」

その時だった…

玄武「先輩〜」

葉留佳「樹く〜ん」

玄武と葉留佳が俺を呼びに来た。

樹「んにゃ?何事やお前ら」

葉留佳「お姉ちゃんとみゆきちゃんが迎えに来て待たせてるって…この朴念仁ッ!」

玄武「あんな美人な奥さんを外で待たせててええんですか!?お持ち帰りしちゃいますよ〜」

柊甫「おいおい酷い言われようやな…」

千景「朴念仁w」

樹「佳奈多が迎えに来てくれたんか…ありがたい。ってかお前ら明日覚えとけよ…」

葉留佳と玄武を見て目を細める樹
途端に危険を察した2人は…

2人「お疲れ様でしたッ」

別れの挨拶をしつつ樹の後を尾けていた…

樹「お疲れ様…って、なんで付いて来てんの?」

玄武「まぁまぁ…」

葉留佳「良いじゃ無いですか!私のお姉ちゃんなんだしッ!」

樹「ま、ええか…ほんじゃ先帰るわ。」

柊甫「おう。気をつけてな」

千景「ええ、さよなら。」

駐車場へ行くと、愛車のWRXの横に佳奈多とみゆきが立っていた。

みゆき「お父さん!お帰りなさい」

佳奈多「お帰りなさい。樹くん…なんで葉留佳と松原くんが居るの?」

樹「何か知らんけどついて来たんや…まさか家まで付いてくるつもりかいな?」

玄武「ギクッ…」

葉留佳「はるちんはもうやめましょうって言いました〜」

玄武「あ、葉留佳!せこいぞッ」

佳奈多「はぁ〜相変わらずね貴方達」

溜息を漏らす佳奈多、困り顔の佳奈多を見るのも久しぶりなような気がした。

樹「んで、どうすんの?」




         続く…

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