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群衆とは何か〜ブロードウェイミュージカル ニュージーズ〜

東京・日生劇場
2024/10/09~10/29

待ちに待ったニュージーズ!!!初日はもう歌が頭に残って残って、翌日も鳴り響いていた。今もオフィスに1人になると歌ってる。

東京公演も残すところ4日間。
お堅いニュースを書く女なんて見た事ないぜ!!ってジャック酷っっ!!って思ってたけど、
その前にキャサリンが言った「ボロを着たクズの不良少年たち」「5セント玉ひとつも持っていない不良少年」に憤る仲間の分ジャックはカウンターを入れたんだなと気付けるようになったので、感想をまとめようと思う。

ジャックは軽口を叩くおツムのキレる兄ちゃん、
正義感が強くて仲間想い、
そして人びとが感じてはいるけど表現出来ない気持ちを代弁することが出来る、つまりは超健康な尾崎豊だとしよう。

物語のポイントは、サンタフェのメロディーに乗せて歌われる内容から読み取れる。

・サンタフェ(プロローグ)

人は憧れるニューヨーク
俺は出たくて仕方ない


耕し、薪を割り、と語られる牧歌的な生活

サンタフェ そこでは 人はみな争わず
常に等しく扱われる

生きる価値ある人生 この手で掴もう

舞台版ジャックが憧れる「サンタフェ」はここに良く表れている
ジャックは器用に新聞を売りさばき、他のニュージーズ達の倍を売る。だけど、ニューヨークを出たくて仕方ない。ジャックが求めるものは、人が人として扱われる、人間らしい暮らし。
ジャックは今のニューヨークでの暮らしについて、生きる価値を感じられないでいる。

・サンタフェ(屋上)

ストライキで警官と衝突し、クラッチーが連行される。
いつもクラッチーと一緒にいた、ペントハウスまで逃げ戻ってきての1曲。

みんな闘い血まみれ
キャプテンジャックのせいで
目を瞑り、立ち去りたかった!

衝突シーンで、駆け寄るデイヴィを制止し、
仲間たちに闘いの号令を出したジャック。
そのせいで仲間たちは傷ついたと。

遠くに行かせて
誰も知らないところへ
今日のことを忘れさせてくれる

俺は立ち去る
逃げるのはもうやめて 嫌な奴らのいないところへ

夢は叶うサンタフェで

ここで生きて死んでいくのか
一息つかせて欲しい

押し付けられた生き方を
未来のない人生を

受け入れろというのか
まだ17なんだ 人のために傷ついて

生きるのが辛いなら 居場所を変えてみよう
つまらぬ見出しの新聞から遠く離れて

このね、新聞の見出しっていうのがね、
つまらない見出しを売り歩く日々の事だし、
資本家の思いどおりの世界の事なんだよね
そこから離れたいと。

サンタフェ お前を 夢に見続けたまま
一生終えるしかないのか

今ならまだ若い やり直せるだろう

新しい人生
止めても無駄だ 諦めない
愛する サンタフェ

確かなものが欲しい 絵など描かなくていい
今日こそお前に会いに行く
全てを託そう サンタフェ

キャプテンジャックから一人の少年に戻る時間。
ジャックは逃げたい、逃げる必要のないところまで。それは何から?

17歳の少年の抗いと挫折、焦燥、運命を諦めきれないサンタフェ。

絵など描かなくていい、か……。絵が上手いジャックだけど、美術学校に行ったり本物の芸術家になったりすることは「俺のやりたいことじゃない」。絵は確かなものじゃないから?

で、次にジャックが出る場面では空想のサンタフェ描いてるから可愛いよね〜〜ジャックケリーちゃん可愛い〜〜

メッダに言われる、「逃げるのでは無く、ただ行きたい場所にいくのだと言って」と。
ジャックは違いがある?と問い返すが、
逃げているのであれば自分のいるべき場所なんて一生見つからない、とメッダは答える。
そう、それじゃあ貴方の求める「サンタフェ」は見つからないよと。

・感化院からの手紙

感化院に収容されたクラッチー。
夜な夜なジャックに手紙を書きます。

昨日は役たたずでごめん

ひとつお願いがある
屋上で言ってたよね、家族は助け合うと
仲間に伝えて、互いに守りあえと

以上。友達の、親友の、兄弟のクラッチー

クラッチーの役たたずでごめん、が切なすぎる。

そう、クラッチーとジャックは「兄弟」なんだよ。デイヴィとレスも兄弟だし、ジャックとクラッチーも「兄弟」。

互いに支え合うんだ!ってことに関してはジャックよりクラッチーの方がよく知っていて、
これ以降の二幕はジャックは周りに助けられながら、ストライキを成功へと導く。

・フィナーレ

ピュリツァーとジャックの交渉が成立し、ストが明けた街で。

まぶたを閉じれば 夢は見れるさ
幻で出来た世界を

ついに目を開けると 見慣れた景色
それでいい 君がいれば

みんなはさ、ジャックが「若者よ、西部へ行け!」のメッセージに憧れて、アメリカンドリームを掴むためにサンタフェを目指していると思っているけど、
ジャックは人間が人間らしく生きられる場所が欲しいだけ

そんなささやかな願いを、
何故サンタフェに行きたいのか、
説明すれば誰もが理解してくれるだろう夢を、
ジャックは誰にも明かさずに自らで掴み取り、
ニューヨークで暮らしていくんだ

ジャックがスト破りの仲間を説得する時に使う「貧乏は罪じゃない」が、どうしても心にのしかかる。

大昇が「ミュージカル」の取材で、この夏にHi美で行ったニューヨークの感想を「資本主義社会を肌で感じた」と言っていてそれは正しいと思ったな。

金と金の殴り合い、持つものと持たざる者の闘い。市場による再分配システム、一見本人の努力と能力により公平かつ何より効率的なシステムに見えるが、そのシステムが持つ最大の矛盾、子どもという存在。

資本主義社会の根本にはプロテスタントの精神があると古典では言われていて、それは徹底した「個」が成立するからであり、劇中でもピュリツァーは「個の利益を追求しないものは愚かだ」と言っている。でもさ、ジャック達をみて社会って「個」だと思うか?

奴らがベル鳴らしたら従うのか//No!!←敢えてNO!と言わせる手法

年寄りは泣き寝入りしろ!!←この歌詞好き

ジャックの集団の士気の高め方に説得力があって、そこがお見事だった。組合結成の場面の盛り上がり、みんなとふざけ合う等身大のジャックから、徐々に高まるジャックの扇動、それに伴う高揚感。

タイトルにした群衆については全く書いてないけど、でも群舞の中心に大昇がいて、大昇から放射状に振りが広がっていく様をみていたら、このタイトルになりました
ピュリツァーが交渉よりも団結を恐れていたのが印象的だったな。

ぶっちゃけ私は自担が出ないミュージカルはほぼ観ないので、スキルについては無知すぎる。
が、大昇の歌はステージママの顔がチラつかないし、トレーニングやお金の香りがしないし、音って振動で波なんだなと思い出させてくれるから大好き。

振り付けで言うと、
Carrying on Bannerでジャック先頭に三角形に並んだ時の、手でチャチャチャッてしたあとのお辞儀が好き。

顔をね、少し上に向けた時、照明の光が綺麗にはいって、2階席までその目の輝きが見えるの。
キレイな白目が真心を伝えるんだ。

大昇がこれまで経験してきた役が生きていると思った。大昇は雑誌の取材でこの春にやった「トンカツロック」のことをよく語っていて、役の深堀りが楽しかったんだろうなと思うし、演出家の意図を汲み取るのも楽しかったのかなと思うし、その役が舞台上にいるということはどういうことかまでアプローチ出来たんだと思う。大人との会話が大好きだろうから、まじ横内さんありがとうございました。
初主演だった「ELF the musical」については稽古が苦しかったと語っていて、その理由を目指したい姿はあるのに「どうしたらいいか分からなかった」と表現していた。高校最後の年でコロナ禍で、また彼のプロデューサーを失って1年という頃で、そんな彼に正解を与えず考えさせ続けた三木先生にも感謝である。
三木先生が授けた「歌うな、踊るな。」という教えは、大昇の中で生き続けていて、トンカツロックでの芝居の経験でひとつ昇華されたのだと思う。

大昇の歌の上手さには、根底に芝居がある。
頭で思い描いたイメージを自分の身体を通じてどう表現するか、大谷翔平みたいなもんだ。

その中でやっぱり原点になってると私が思うのが、ドリボのチャンプの一番弟子。あの役のアプローチとダンスが私は大好きだった。(Get it!のダンスまで大好きだから、私)堂本光一ドリボ時代は、いまも大昇が作り上げたあの役が生きていると思う。
ELFもバディ闇堕ちソングがべらぼうに上手かったし、やっぱ大昇をチャンプに当てはめたプロデューサー、まじ大昇のプロデューサー。

雑誌の取材で大昇が言ってた、
そんなサンタフェって言うならとりあえず行ってみるという選択もあるのに、何で行かないんだろう?
いやそんな簡単に行けないだろ普通とか思いつつ、まあ大昇なら行くか〜とも思った。
そんな大昇の答えは見つかっただろうか。

丁寧だと好評なブロックごとの三方以上礼。
で口を開けば「本日は、ありがとうございました!」しか言わないカテコは、ELFの時と変わってなくてホッコリする。(ELFのときはひたすらバンドメンバーを紹介してた)たまに出る仕掛け付きのおもちゃみたいなところホントにかわいい。

22歳!!いまも未来も何でもできるやん!!!
大昇が自由でいられるステージにいて欲しいとはおもうけど、大昇に関しては大昇自身が思うことが正解だと思う。

あと映画版のブルックリンのニュージーズ、スポットが織山過ぎる。

〜〜〜余談

大昇のメロメロシーンについて書かないのは、
盛り上がる場面でせり上がる舞台装置とディズニーに失礼かなと思って書く。

なんかさ〜キャサリンがお姉ちゃんなのに、
ジャックの肩幅がキャサリンの2倍あるから、
本当にメロメロだった
キャサリン、張り切るタイプだからホント可愛い。なんかこの張り切り!こそ花娘なのかなと思った。

一目惚れして、頭いい子って好きさ〜って、
ジャックはキャサリンの似顔絵を描き置いて、
キャサリンも自分の姿が彼にどう見えているのかがハマった感じがしたな。そもそも絵で地位を得ることはやりたいことじゃないのに絵が上手いのがめちゃ良い。

信じられるものを たった一日でも
永遠かも知れない それでいい いいのよ
明日俺が消えても 愛は残る
信じられるものがある 二人の間には

え〜ジャック明日消えちゃわないでよ〜!泣と思いつつ、なんちゅーメロメロシーンなんだ!!と、最後にうぃーーんって、からくり時計のように開いていく2人の手がおもろい。

星風まどかちゃん、1度だけ宝塚の舞台を見たことがあって、というのもWOWOWで放送してた宝塚版の「花より男子」がめちゃおもろくて、道明寺役がカッコよすぎて調べて、花組公演を兵庫まで観に行った。(よく見ずにチケット買ったら本拠地だった。)
だからなんかやっぱり大昇担って柚香光に惹かれるよねとか思ったし(私は演技で惹かれた)、私は初めて見た時に聖乃あすか……!となって、オタクの推しを見つけるスピードと私の趣味のブレなさ(毒っけのない子が大好き)に感動した。ので、ニュージーズの群舞から推しを見つけ出す皆さんの気持ちもよく分かる。本当に完全に余談でした。

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