「賢者の贈り物」


1

今から120年前のアメリカという国に、若い夫婦がいました。

二人はとても貧しく、毎日必死に働いて暮らしていました。

それでも二人は一緒に居られることが幸せで、妻のデラは毎日夫のジムが帰ってくると、ぎゅっと抱きしめるのでした。

2
デラとジムには二つの宝物がありました。

一つはジムの金時計で、もう一つはデラの美しい髪の毛です。

デラは自分の自慢の髪の毛を大切にしていました。

というのも、髪の毛の美しさは女性の美しさの一つとして捉えられていたため、美しい髪とは美しい女性を意味します。

そのため貧しいという状況にありながらも、街の誰からも「美しい」と認めて貰える髪の毛は、デラに自信を与えてくれました。

デラにとっては苦しい生活のなかでも、自分を支えてくれる存在だったのです。

一方、ジムが宝物にしている金時計は、労働者にとっては憧れの品物であり、その家族にとってはこれから裕福になっていくという希望の象徴でした。

そのため金時計も、ジムに自信を与えてくれ、ジムは金時計をとても大切に扱っていました。

3
クリスマスの前夜、デラは困っていました。

ジムにプレゼントを買うためのお金がないのです。

デラが買おうとしたのはジムの金時計につける金の鎖でした。

ジムが大切にしている宝物はデラにとっても宝物で、彼が喜ぶ姿を見たかったのです。

そこで、デラはプレゼントを買うために、自分の髪の毛を売ることにしました。

鏡の前で自分の髪の毛が切られていく間、デラは沢山の事を思い出していました。

ジムに出会った時の事、彼とデートした日、結婚前日に両親と過ごした最後の日、皆がデラの髪の毛を褒めてくれていました。

髪の毛が切り取られたら後、デラは鏡に映る自分よりも切り取られた髪の毛の方をみていました。

3
その夜、仕事から帰ってきたジムは。デラの髪をみて止まってしまいました。

ジムはただ、困惑してデラの顔を見るだけです。

「髪の毛は売っちゃったの」

デラはジムに心配させないよう、明るく振舞いました。

ジムはデラの短くなった髪をしばらく撫で続けました。
そしてポケットから包みを取り出しこう言いました。

「短い髪型のデラも綺麗だよ。さあ、僕のプレゼントを開けてみて」
デラが開けた包みの中には櫛が入っていました。

デラの髪色に合う、小さな宝石の付いた綺麗な櫛でした。

デラは嬉しさと悲しさで、涙がこぼれてしまいました。

折角ジムが買ってくれたプレゼントも、今では意味がありません。

それでも自分の宝物の為にジムがプレゼントを準備してくれた事が、嬉しくて仕方ありませんでした。

デラはしばらく泣いた後、ジムへのプレゼントである金の鎖を取り出しました。

「気に入って貰えると良いのだけれど」

それを見たジムは、にっこりと微笑みながら言いました。

「ごめんデラ。実は櫛を買うために金時計は売ってしまったんだ。」

4
二人はお互いの為を思って行動をし、自分の大切な物を失ってしまいました。

自分の大切な物を売ってまで買ったものも、相手の宝物が無くなってしまったので、意味のないものになってしまいました。

しかし、二人は大切なものを受け取りました。

宝物は無くなってしまいましたが、二人の愛はそれまで以上に確かな物へとなりました。

Q、お互いのプレゼントは、使う当てのない無駄な物へとなってしまいましたが、それでももっと大切な物が贈られました。
 それは何でしょうか?


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親御さんへ

哲学対話は「正しい」という基準が存在しません。

自由な発想を元に自分で考えていくことが醍醐味です。

しかし、自分の考えを全て言葉に出来る人や、最初の回答だけで考えが深まる事は稀です。

たいていの場合、大人であっても自分の考えの半分も説明出来なかったとか、人から質問される事でより自分の考えが確立されていきます。

これらは人から質問されることと、「聞こう」と待ってくれる人の存在により、その当人が自分自身の内面に向けて問い直すという行為によって深まって行きます。

以下の七つの質問は、探求を促進し、深い対話を生み出すためのツールとして活用されます。


  1. W (What do you mean?) - 意味を問う:

    • 言葉の意味を明確にするための質問です。

    • 例: 「それってどういう意味?」

  2. R (Reason) - 理由を聞く:

    • その人の意見や行動の背後にある理由を尋ねる質問です。

    • 例: 「その意見になった理由は何?」

  3. A (Assumption) - 前提:

    • その人が意見を持つ際に、どのような前提に基づいて行きついた結論なのかを明らかにするための質問です。

    • 例: 「どうしてそう思ったの?」

  4. I (Inference) - 推論:

    • 仮定や情報から結論を導く能力を促す質問です。

    • 例: 「もしも××だとするとどうなると思う?」

  5. T (True) - 信憑性:

    • ある主張や意見が本当かどうかを検証する質問です。

    • 例: 「アナタはそれは本当だと思う?」

  6. E (Example, Evidence) - 例、根拠:

    • 意見を裏付ける具体的な例や根拠を求める質問です。

    • 例: 「どうしてそう言えるのか理由を教えて」

  7. C (Counter Example) - 反例:

    • 与えられた意見に対して反対の立場を示す質問です。

    • 例: 「××の場合はどうなると思う?」

これらの質問は、子どもたちが自分の考えを深め、他人と共感的な対話をするための貴重なツールとなっています


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