寝物語 名犬ラッシー

1
ラッシーはメスのコリー犬
彼女は村一番の優秀で美しい犬で、誰もがラッシーみたいに賢くて美しい犬を欲しがっていました。
そのラッシーは毎日16時に12歳の少年ジョーを学校まで迎えに行くのが日課でした。

このころジョーの家は貧乏でした。
不況のせいで父親に仕事が見つからず、働く事が出来なかったのです。

こまったジョーの両親は、ラッシーをお金持ちの侯爵に売ってしまいました。
そして侯爵はラッシーをドックショーに出すため、600kmも離れた遠い国に連れて行ってしまいました。

ラッシーと仲良しだったジョーはとても悲しみました。
彼にとってラッシーは、ただの犬ではなく家族だったからです。

2
一方、ラッシーはドックショーに向けての訓練中に抜け出してしまいました。

知らない場所に連れてこられ、知らない人に訓練されるようになって忘れていましたが、16時になったらジョーを迎えに行くという、いつもの日課を思い出したからです。

600km離れたラッシーの家へと、ラッシーはジョーの元へと帰るために歩き出しました。

自分で水場となる川を見つけたり、動物を狩って飢えをしのぎました。

自分が狩の対象になることも沢山ありました。

行く先々でラッシーの美しさに見ほれた人が、ラッシーを捕まえて売り飛ばそうとするからです。

ラッシーはその全てを潜り抜けて来ましたが、一匹での旅は困難で苦痛の連続でした。

森や岩場でトゲや尖った石を踏み怪我をしたり、狩る獲物が少ないためにやせ細っていきました。

特に捕まえようとした人間たちに追いかけまわされたせいで、ラッシーは疲れ果ててしまいました。

いつのまにか、美しかったラッシーは、ボロボロに汚れた瘦せ細った犬になってしまいました。

だけど、人間たちにも良い人はいました。

傷ついたラッシーを手当して看病してくれた老夫婦。
一緒に旅をしてくれた犬好きの行商人。

彼らはラッシーの気持ちを理解してくれました。

みな、ラッシーと家族になろうと引き留めようとしましたが、ラッシーが旅を続けようとすれば別れを惜しみながらも気持ちよく見送ってくれました。

3
ついにラッシーはジョーの住む村へと帰ってきました。
肺炎にかかり、痩せこけてあばら骨が浮き出たみすぼらしい姿で。

最初は村の人は誰もその犬がラッシーだと気づきませんでした。

ふさふさだった毛並みはゴワゴワになり、逞しい筋肉もげっそりと痩せこけ、ラッシーを知る人ほど余りの変化に違う犬だと思ったのです。

それでもジョーだけはその犬がラッシーだと気づきました。

ジョーを見る目が、「遊ぼう」と呼びかけるあの頃のままだったのかも知れません。

ジョーと家族はラッシーが帰って来たことを喜びました。

しかし、侯爵は喜びませんでした。

侯爵もラッシーが逃げた当初は何日も探してたのですが、折角帰ってきたラッシーを見ても、喜ぶことはありませんでした。

本来ラッシーは今の飼い主である侯爵の家で飼われることになる所ですが、ジョーの両親は侯爵の了承を得て、またラッシーの飼い主に戻る事が出来ました。

それ以来、ラッシーは家族の一員としてずっと一緒に暮らしていきました。

Q1、侯爵は、なぜ探していたラッシーが帰ってきたのに喜ばなかったのでしょうか?
Q2、ラッシーが売られてジョーは悲しみましたが、両親はどう思っていたでしょうか?
Q3、両親もジョーと同じくラッシーが居なくなった事を悲しんでいたとしたら、なぜラッシーを売ってしまったのでしょうか
 

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