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【レポ】美術館に行ったよ

 久しぶりに美術館に行った。すごく久しぶりに、と書いた方が正しいかもしれない。

 最後に美術館へ足を運んだのがいつだったか思い出せない。せっかく都会に住んでいて、気軽に通える距離に多種多様な美術館が揃っていたんだから、大学生の間にもっとそういった施設へ出かけておけばよかったと思う。
 もちろん今からでも遅くはないが、出不精なうえに体力もないので、休日に出かけようという気が中々起こらない。貴重な休みにわざわざ人混みへ繰り出すなんて愚かだとさえ感じる。刺さないでください。

 今回私が美術館に行くことができたのは、旅先だったからだ。友人と訪れていた箱根旅行の折、大涌谷へ向かうケーブルカーにまさに乗ろうとした瞬間に、天候不良でケーブルカー運休のアナウンスがあり、予定を変更して美術館へ行くことになった。グネグネした山道を登っていかねばならず、運転を務めてくれた友人が神経を細らせる中、無免許の私は後部座席で歓声をあげていた。ありがとうございます。
 文字通り紆余曲折を経て辿り着いた美術館は外観も内装もとても綺麗で好感触だった。到着したのは15時頃だったけど、昼食がまだだったので、展示を覗く前に施設内のカフェで軽食をとった。美術館らしいオシャなカフェだった。
 企画展はフィリップ・パレ―ノというフランスの作家の展示をやっていた。ヘリウムガスの入った魚の風船をぽよんぽよんした。その他では「印象派からリヒターまで」というコレクション展が特に面白かった。久しぶりに絵画を鑑賞して気づいたが、私はどちらかというと写実的な造形の人間のいる絵が好きだったらしい。モリゾとかルノワールの作品が気に入った。
 こういうところにくると、「どのように鑑賞するのが正しいのか」という邪念(?)が湧いてきてしまうのだが、なぜか今回は、比較的素直な心で作品を眺めることができた。
 当たり前なんだけど、アナログの絵は立体的で面白い(もちろん滑らかな作品もあるだろうが)。ギリギリまで額縁に近寄って、絵の具のペタペタした風合いを楽しんだ。色で表された明暗以外に、分厚く盛り上がっていたり塗り重ねられていたりするタッチに微妙な影ができていて、デジタルイラストでは表現できないコントラストが生まれていたりする。この帽子のレースのパキッとした白の感じは絵の具だからこそだろうな、とか考えながら見るのが楽しかった。印象派の作品は、離れて見ると「ああ~」となる気がする(語彙の乏しさ)。質感を味わった後は、視力の許す限り距離をとって絵全体を眺めた。リヒターの作品を見ながら、あれはひとはけ塗るごとに一歩下がって全体を確認しているのだろうか、と制作の様子を想像してしまった。それともああいう人たちは、さながらイラストソフトのナビゲーターウィンドウのような作品を鳥瞰する能力があって(空間把握力?)、いちいち距離をとることなく描いているのかしらん。
 ハマスホイという作家の作品が一番好きだった。窓辺で本を読む女性の絵で、「アタシもこんな読書時間持ちて~ッ」と思わされた。彩度低めのモノクロっぽい色合いなのだが、窓から差し込む日の光が部屋の中に「なんともいえない温かみのある薄暗さ」を体現していて、こんな光を……描いてみたいンゴねえ……と大それたことを考えたりもした。光って……おもしれーや……(印象派の作品を初めて観た人?)
 帰り際にショップでポストカードとブックカバーを買った。ポストカードは手紙を書く時に使いたいと思う。後日、帰りのグリーン車の中でお互いの印象に残った絵について語り合い、とても楽しかった。同行した友人たちは皆美術作品に造詣が深く、興味深い話を聞くことができた。私ももっと美術鑑賞ぢからを高めたいな。ひっさびさの美術館、とてもいい思い出になった。また行こう。

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