【散文】How's your weekend?
世間話が苦手だ。狭い交友範囲の中で直球の会話ばかりしているせいで、付き合いの浅い人と話さなくちゃいけない場面で苦労する。
先日、SNSで知り合った方と対面でお話しする機会があった。テキスト上で何度か言葉を交わしたことはあったが、実際に会うのはその日が初めてだった。はじめまして~から始まる無難なやり取りが続いた後、その人は私に「お仕事大変そうですね」と言った。
私は返事に窮した。仕事が大変、すなわち業務量が多くて忙しいかと問われると決してそんなことはなく、非常に楽な仕事である。なので、相手のいう「仕事が大変」が「業務量が多く忙しい」とイコールなのであれば、「いいえ」と答えるべきだろう。
しかし、もっと包括的な意味での「大変」だとすれば話は変わってくる。入社1年目にして社内ニートみてえな部署に配属され、月の大半を読書に費やし、同僚は性犯罪者予備軍の派遣のジジイと、コンプライアンス研修を受け忘れたお姉さん、19度に設定しているのに全く涼しさを感じられない事務所の冷房など、職場に対する不満を列挙していくと、なるほど私の仕事は「大変」かもしれない。が、こんな事情をその日出会ったばかりの他人にぶっちゃけることはできない。そのくらいの分別はある。
結局、「お仕事大変そうですね」という台詞は挨拶と一緒なのだ。語義の通りに受け取ってはならないイディオムのようなものなのだ。私は繊細なたちなので、こうした挨拶以外の意味のない言葉も額面通りに受け止め、内心で一生懸命吟味し、真実を伝えようとしてしまう。
残念ながら、相手が求めているのは真実ではなく、中身のない形式的な返答であることが多い。
そもそも仕事は今年になってできた私の新しいコンプレックスなので、たとえ挨拶代わりの軽いジャブだとしても他人に気軽に触れてほしくない。つか仕事の話題振られて困る理由で最もデカいのがそれかも。私に仕事の話しないでください。好きな果物ベストテンの話してください。以上。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?