1人追いかけ再生工場⑨ 『性アホ説』
仕事に出かけようと車の鍵を探すが見つからない。
昨日いつもの場所に置いたはずなのに。
一緒に住む彼女に「車の鍵知ってる?」と聞いても「知らないよ」としか返ってこない。
小一時間探したが結局見つからず、出社は諦めて在宅ワークにすることにした。
自室のデスクで会社のPCを立ち上げていると、下着も着けずおれのぶかぶかのTシャツを着た彼女が後ろから抱きついてきて耳元で囁く。
「今日は家にいるのね。嬉しい」
「いや、休みじゃなくて仕事だよ?これから会議があるからごめん」
「会議だってカメラをオフにしてたら、何してても分からないでしょ?」
そう言って彼女は首元にキスをし、デスクの下に潜り込もうとする。
「実はね、車の鍵隠したの私なの」
なんとなく予想はしていた。
「おいおい、なんでそんなことするんだよ?ずっと鍵探してたの見てただろ?」
「だって、今日は一緒にいたかったんだもん」
なんて可愛いやつ。
「アホだなぁ。でも、好き」
そう言って彼女のおでこをツンとする。
気が付くとニヤニヤしながらヨダレを垂らしていた。
在宅ワークでつまらない研修を受けているうちに寝てしまっていたようだ。
振り返っても後ろから抱きついてくれる彼女はいない。もちろんデスクの下にもいない。
そうだった。そもそもおれに彼女なんていないんだった。
また妄想に浸ってしまったようだ。
とりあえず今日仕事が終わったら、とびきりぶっ飛んだシチュエーションの企画物AVを借りに行こう。
そうしよう。
気が付くと冷たい床の上にいた。
部屋はがらんとして余計なものがない。
男が1人、壁にもたれかけながらこちらを見ている。
「なぁ、あんた何やったんだ?」
男は声を掛けてきた。小太りな見た目と違って妙にいい匂いがする気がした。いや、これはオーラというやつか。
「おれは特殊詐欺で荒稼ぎしてたんだが、調子に乗りすぎてタイで捕まっちまった」
聞いてもいないのに自分のことを話し出した男。
でも不思議なもので、この男なら何でも話したい気持ちになっていた。
何よりこの状況に気持ちが追いついていなくて、とにかく不安だった。誰かに心の内をぶちまけたい。
おれは話しかけてきた男に告げた。
「銭湯で女湯に入っちゃいまして。服脱いで残り靴下だけのところで捕まりました」
「あちゃー、なんでそんなアホなことを?」
「いやぁ、ほんとそうですよね。自分でも分からないんですけど、昨日見たAVが透明人間になって女湯に入る話だったんで、無性にやってみたくなって」
「男はみんなアホだからなぁ。まあしゃあないよな。でもあんたとびきりアホだな」
「えへへ、生まれながらに皆アホなら、『性アホ説』に則って無罪にならないですかね?」
「なるわけないだろ。なんのはなしですか」
ちょっと最近まじめに書きすぎたのでバランス調整入りました。ある意味振り切ってごめんなさい。期待通りの方がいたらありがとうございます。
今日の変態さんは一線超えてしまった模様です。
尚偉大な工場長の作品および、齋藤製作所さんの先行品を置いておきます。
はい、今日のはいわゆるオマージュかもしれません。パクリではありません🥹
『性アホ説』というワードの出元が彼なのでイチオシ記事を紹介して終わります。
「最近アルロン酸が巷で流行って来てるらしいですわよ奥さん」「あらやだ早く買わないと。それはもうバズロン酸ね」「お風呂入れたら温まりそうね。なんのはなしですか」
サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー