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下書き再生工場跡地で服を脱ぐ族長

これは以下の話の続編です。


工場跡地で見た少女は何だったのか。
まるであの少女に導かれたかのようだった。
家に帰ってからも目の裏に焼き付いて離れない。

何故彼女は1人で作業していたのだろう?
何故下着姿だったんだろうか。

疑問は尽きなかったが、疲れていたのだろう。
その日は気付くとソファで寝てしまっていた。



🟰🟰🟰


翌朝、カーテンの向こうから強い日差しを感じ、私は目を覚ました。

熱いコーヒーを入れ、魚肉ソーセージ、通称ギョニソを頬張る。私はこのコーヒーアンドギョニソ、通称コニソが好きだ。

コニソを2分で平らげ私は靴下を履いた。

「しばらく戻らないかもしれない。」

誰もいないリビングで真面目な顔で1人つぶやき、私は家を出た。


🟰🟰🟰


向かった先は大きな建物だった。
まるでアジアテイストと、アフリカ文化と、トルコ、中国、タイ、インドネシア、あ、このへんは全部アジアか、あとメキシコあたりをうまく融合させたような建物だった。

ピンポーン

意外と現代風のチャイムを鳴らすと、中から声がする。

「オシは?」


「オセルウチニオセ」


「どうぞ」


絶対にインターホン越しに見えているはずなのに、毎回この合言葉をやらされるのにも慣れた。

ドアを開け、通路を通る。左右の壁には複雑な幾何学模様のレリーフが施されている。

横を通るだけで熱い熱気と湿度を感じるジャングル。
雄大な滝が流れる渓谷。
乾いた砂が吹き付けてくる砂漠。
様々な部屋を通り抜け、一番奥の部屋に到着する。


そこは森だった。
天井も何も無い。

正確には森の中に玉座だけが置かれており、一人の女性がこちらを向いて座っている。
女性は上半身裸で首からメジャーをかけている。
メジャーはきれいに両乳首のライン上に位置している。
お陰で乳輪の八割がうまく隠れていた。
つまり2割ははみ出ている。

そして雨だ。
女性の周りだけ雨が降っている。
また雨のせいで湿っているからだろう。
椅子の周りには無数のキノコが生えている。

女性の傍らには背中に羽をつけた天使の格好をした侍女が傘を広げている。

侍女自身は濡れていて可哀想だと思ったが、思いの外満足気な顔をしているので見なかったことにした。


「今日はどうしたのです?族長よ。」

玉座の女性が口を開いた。
私も答える。


「私今日から修行に出ることにしました。そこで旅立ちの挨拶を。」


「そんなことはヴィジョンで見て知っています。どうして服を着ているのか聞いているのよ。」

女性が艶めかしく下唇を噛んで言う。
ヴィジョンと。


「あ、これは工場の制服なのです。あと外出る時は着た方がいいですよね?」


「はあ。ほんとそうゆうとこあるよね。まあいいけどさ。これ、編んであげたから持っていきなさい。」


女性は美しく燃えるような紅のマニキュアで飾った親指と人差し指とでカラフルな靴下を摘んで渡してくれた。


「これは我が族の戦士の証。存分に暴れてきなさい。」



🟰🟰🟰


雨の部屋を後にして私は工場跡地に来ていた。

もう今回は迷わない。
例の少女がいた奥の作業室まで一直線に突き進む。

かくしてやはり例の少女は一人作業していた。
横には積み上がった作品の数々。そろそろ20になろうか。


「これ、全部ひとりでやったの?」


「あ、あなたまた来たのね。
来てほしい、なんて思ってなかったんだからね!
でも、もし私と最後までやりきったら、ご、ご褒美あげるね。」


ご褒美。
ごくりと唾を飲み込み思わず少女を見つめる。
やはり下着姿に制服の上着だけでは寒いのかふるえている。


私は履いていたズボンも脱いで少女に差し出し、戦士の証であるカラフル靴下一丁になった。


そんな私と私が先程まで着ていた服を汚物を見るような目で一瞬見たあと、少女はまたもくもくと作業に戻るのだった。


私も何事もなかったように一人で作業にとりかかり、1つ目の作品を作り上げた。



そしてそんな様子を壁の影から工場長が密かに見ていることを2人は知らない。







今日の勝手に紹介記事はたこ先生です。
河合隼雄先生の企画もまもなくスタートということで楽しみです。

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