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カナブンブンブンパニック

カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、セミ。


生命があちらこちらでキラキラと輝く季節がやって来た。

8月ともなれば早朝と夕方以降、虫取り網片手に昆虫がいるスポットを子供と周るのが日課になる。


つい先日も緑色に輝く小さなカナブンを見つけた。








目の前の女性の後頭部に。



ここは雑木林でも公園でもない。
近所のスーパーの店内だ。



レジに並んだ時、視界の端に何か動くものが見えた。
ん?なんだ?と前の女性の頭を見て、一瞬どきりとする。


カナブンだ。



こういう時、どうすればいいのだろうか。

カナブンがここは餌場ではないことを悟って自然に飛び立つのを待つべきか。

それとも、頭に虫が付いてますよ、とストレートに言うべきか。

だがしかし、相手がパニックになっては申し訳ない。

できるだけ穏便に済ませたい。


ここはいっちょ軽快なトークで気を逸らせて手品のような早技でカナブンを捕獲するか。


いや、そもそも初対面で話すことなんてない。
いきなり後ろから声をかけられる方がパニック案件だ。


他にも服にクリーニングのタグが付いていたり、スカートの裾がパンツに入っていてパンツ丸出しだったり、女性の恥ずかしい場面にたまたま直面することがある。
こういう時も、どう声をかけるべきか非常に悩む。

もし私が目黒蓮並のイケメンだったなら。

爽やかに、そしてスマートに伝える事で相手は感謝してくれるだろうか。


それともイケメンに知られたことが1番恥ずかしい。恥ずかしいからやめてけろ。責任とって結婚してけろ。となるだろうか。


いや待って。

それ以前に私は目黒蓮ではなかった。

どちらかというと大杉漣だった。

とにかく大杉漣ばりの甘く低い声で伝えればいいだろうか。


「お嬢さん、素敵な髪飾りですね」


いやいやいや、きもいきもいキモイって。


こりゃ、ほんと何て言えばいいのか。
誰か教えて!!




1人悶々と考えていると、目の前の女性に動きが。

何か感知したのだろう。後頭部に手を伸ばした。


あっと思ったその瞬間、小さく「ひぃ」と叫んで手をブンブンする。


カナブンは、というと、より一層髪の毛の奥に潜り込む。



その光景を目の前で見ながら、私はこの期に及んでなんて声をかけるか悩んでいる。

すると前の女性が後ろを振り返り目が合った。



こんなことは生まれて初めてだった。



見知らぬ人なのに、声も発しないのに気持ちが伝わる。



???「ねえ、私の頭に何かついてる?」



これがアムロとララァの邂逅か。
私達、ニュータイプだったのね。


アムロ漣「付いてるよ、お嬢さん。カナブンが」



ララ子「え。」



アムロ漣「ほら、髪の毛に潜ったよ」



ララ子「見てないではよとれやボケ



こんな会話をエアで交わした後でアムロ漣こと私は無言で手を伸ばしララ子の頭からカナブンをむしり取った。



事前にテレパシーで心に触れ合ったからだろうか。

ララ子はパニックになることもなく、私の手におさまった小さな生き物を見て事態を理解したのだった。




「もう間違っちゃダメよ〜」

カナブンを外に放ちながら考える。
結局どのタイミングで声をかけるのが正解だったのだろうか。



ララ子「カナブンとってくれてありがとう。ありがとう。りがとぅ。とぅ。とぅ。」


あまりの暑さのせいか、微かに脳内でララ子の声がリフレインした気がした。






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あと、続いてます。

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