見出し画像

毎週ショートショートnote 『武器屋の餌付け』

おれは武器屋だ。

三井さんという酔狂な金物収集家がいるのだが、つい先日、面白いものが手に入ったと大きな鎌を持ってきた。

どうやら前の持ち主がこの大鎌を置いて行方をくらましたらしい。そこで、曰くのあるものが好きな三井さんの手元にやってきたというのだ。

ところが三井さん、

「わしはこんな無粋なもんを家に置いておくのはいやじゃ。お前の店にゆずってやろう。ただし条件がある。どうもこの鎌は生きているらしい。月に1度、満月の夜に腹いっぱい喰わしてやるのだ。さもないとお前が喰われてしまう」

こっちは頼んでもないのに、やっかいなものを押し付けられてしまった。

確かに満月の夜になると大鎌が震えだし、次の瞬間には自分の首が切られる像が脳裏に浮かぶ。

大鎌に導かれて外に出ると、目の前には月に照らされ、夜道をとぼとぼと歩く男2人。

後ろから忍び寄り、寝ぐせがどうのこうのと言うその男たちを大鎌は美味そうに喰った。


大鎌の喰う様だけはいつまでも慣れない。





(410字)


たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。

表のお題と対の作品です。
よろしければこちらもご覧ください。



いいなと思ったら応援しよう!

えむのマイトン@路地裏で遊ぼう
サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー