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下書き再生工場 ショートショート『ほくろ毛』

私は除毛剤メーカー『JOMO.com』の広報部で働いている。

最近じゃあ男性もムダ毛処理するのが当たり前で、ツルッツルのとぅるっとぅるが好まれる。
その裏で除毛剤の世界シェア8割を占める我が社が密かに動いていることを誰も知らないだろう。

まあそれはいい。


毎年この時期になると、うちの会社の宣伝ポスターの公募が行われる。

選ばれた作品が雑誌や駅の吊り広告に使われ、我が社の顔となるのだ。

そんな超重要な最終選定会議で、今まさに喧々諤々の議論が行われている。


そして決まった作品がこれだ!



全身のムダ毛を駆逐することがわが社の使命。


そんな想いと狂気をストレートに表したこちらの作品に決定した。



そう、決定したのだ。


決定したのになぜ会議が終わらないのか?

それは「実際にもっともいらない毛ってなんだろうね?」という部長の無邪気な一言のせいだ。


毛について語り出すと止まらないのがうちの社員の悲しいさがだ。


今その頂上てっぺんを決めるべく部内が真っ二つに分かれている。


『乳毛派』

生えてきては抜かれる運命。
それなのに健気にまた生えてくる。

ああ、キミは何を守ろうというのだ。
その華奢な細い体で。

いざ乳首に危機が訪れた時、本当に守りきれるというのだろうか。

乳毛派代表 ゴン乳さんのお言葉


『ほくろ毛派』

いや、ほんまになんの為にいるのかわからんやん。
ほくろあるところに必ず生えるならまだわかるけど。生えてないほくろがほとんどやん。

割と主張しがちなぶっとい姿も鼻につくねんて。


抜いたら痛そうなところもキライやわ。

ほくろ毛派代表 黒子のバス毛さんのお言葉



議論は平行線のまま会議は14時間に及んでいる。



いや毛の話なのは確かだが、両者の言い分はまっとうすぎて全く決まらない。
どちらの毛がいらないか、というよりどちらもいらないとしか思えない。



そろそろ終電がなくなる!となった頃、均衡をやぶるべく部長が重い口を開いた。



「もう、こんな不毛な議論はやめよう。なんつって。」



「お前が言うなよ」

明日部長の頭に最強の除毛剤をぶっかけよう。

ようやく部内の気持ちが一つにまとまった。






本田すのうさんの下書き再生工場企画に参加です。


続々と皆が救ってほしい下書きが集まってますね。

再生したい下書きは9月10日まで。

再生記事は9月20日まで。

となっています。
まずはすのうさんの記事をご覧ください。

面白いと思ったら是非ご参加を!


#下書き再生工場
#なんのはなしですか
#賑やかし帯

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