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毎週ショートショートnote 『月夜の寝ぐせ』

この辺りの地主である三井家からの帰り道。 白い息を吐きながら使用人の羽島が話しかけてきた。

「旦那さま、今宵は冷えますなぁ」

「そうだなぁ。三井の爺さん自慢の金の茶器を見ている間に、すっかり夜になってしまった。早く帰って熱い風呂に入りたい」

「雪でも降りそうですね。そういやこんな寒い満月の夜の妙な噂、、、があるようですね」

「なんだその噂と言うのは?」

あやかしが出るんですって。月明かりに照らされた寝ぐせのついたあやかしだそうです。その姿を見た者は帰ってこないらしいですよ」

「ずいぶんまぬけなあやかしだな。しかも見た者が帰らないなら、どこからそんな噂話が」

「あぁ、確かに。さすが旦那さま、ここが違いますね」

調子よく羽島が自分の頭をコツンとやったそのとき、背後に人影がぬるりと現れた。

月明かりに照らされたその人影は、噂通り寝ぐせがついている。

あわてて振り返ると、


「やや、寝ぐせではなくて大鎌ではないか!」


ひらり一閃


ぼたぼたと2人は夜道に崩れ落ちた。




(ルビ抜き410字)


今週もたらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。


裏お題も書きました。こちらもご覧ください。



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