毎週ショートショートnote 『釜揚げ師走』
「あんた お金ないんか」
世間はクリスマス。
おれはちょうど職を失い、腹が減りすぎて入ったうどん屋で390円が払えず困っていた。
「皿洗ってくれたらいいよ。メリークリスマスや」
優しいおやじさんに助けられた。
あれから1年。
どういうわけか、おやじさんの元でうどん打ちの修行をしている。
優しくも厳しい指導でなんとか1人でうどんを作れるようになった。
今日は修行の成果をおやじさんにみてもらう日だ。
出すのはあの日食べた『釜揚げうどん』
気合いを入れて店に出ると、
そこにおやじさんはいなかった。
店にはやつれた表情のおかみさんが1人。
「あんたが人一倍がんばってるのん、あの人ほんまに嬉しそうやったよ。クリスマスに息子ができたって喜んでたわ。
せやけどな、今朝 幸せな顔で旅立たはった。
ずっと病気やってん。
あの人の伝言や。『ようがんばった。食べんでもわかる、合格や。店を頼んだ』って」
おやじさん。ありがとう。
おれ、がんばるから。
ちゃんと見ててな!
(410字)
今週もたらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。
年末だし、こんな話もたまにはいいですよね。
さらにせっかくなので灯火さんの企画にも乗っかります。
灯火さん、初めまして。
ご近所noterさんが参加されていて気になっていました。
よろしくお納めください。
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サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー